【ボクシングコラム2023-vol.4】2022年国内リング“裏”年間表彰
昨日、盛大に催された『2022年年間表彰式』。日本選手のレベルがぐんぐんと上がり、いまや世界チャンピオンがひしめく「ボクシング大国」となり、かつては日本、東洋太平洋チャンピオンからも選ばれていた各賞も、世界チャンピオンがほぼ独占する時代となった。
世界チャンピオンを除く、他のカテゴリーの選手も評価しよう。なんなら、地区ごとに──というわけで、『ボクシング・マガジン』で『本誌選定各地区年間表彰』という企画を始めた。2013年4月号、つまり2012年分からだ。
しかし、皮肉というかなんというか。記念すべき10回目(2022年3月号)を最後に、同誌はその後休刊となってしまった。
その企画を引き継ぐなんておこがましい。だって、全試合を見ているわけじゃないんだから。あれはつぶさに試合を追いかけてくれた各地区のライター諸氏がいたからこそ為せたもので、とてもじゃないが私一人なんかではできない。でも、せっかく見てきた選手、試合をこのままみすみす埋もれさせてしまうのはもったいない。
……というわけで、形式は少し変えながら、ちょっと似たような企画として個人的に選んでみました。マガジン誌ではなかった賞も増設(なくしたものもあります)してやりたい放題。同誌の主旨はそのまま継いで、「世界チャンピオン(経験者含む)、世界タイトルマッチは選考外」。“本家”年間表彰選出者も基本的に対象外。あと、「もうすでにここに選ぶような選手じゃない選手」も除いていますし、去年同誌で選んだ選手も極力外していますので怒らないでね。
素晴らしい試合、パフォーマンスを披露してくれた選手たちはもちろんのこと、彼ら彼女らを支えてくれているすべての方に感謝──
『2022年国内リング“裏“年間表彰』
※2022年に国内で行われ、私が見た試合のみ対象
【男子】
☆最優秀選手賞☆
OPBF&WBOアジアパシフィック・ライト級チャンピオン
吉野修一郎(三迫)
SHUICHIRO YOSHINO
異論がある人は、むしろこっちが訊きたい。堂々とアメリカに乗り込んでほしい。
WBOアジアパシフィック・スーパーフェザー級チャンピオン
力石政法(緑)
MASANORI RIKIISHI
兄・矢吹正道曰く、「自分のテクニックは全部政法のパクリです(笑)」。吉野同様、文句なしに世界へ向かっていただきたい。
☆高性能賞☆
日本ライト級チャンピオン
宇津木 秀(ワタナベ)
SHU UTSUKI
テンポ、緩急を体得し、技に強さも身に着けた。
IBF世界ライトフライ級14位
花田歩夢(神拳阪神→フリー)
AYUMU HANADA
土俵際からも冷静に立て直すことができる勝負強さ。ひと言「強い!」
☆技能賞☆
WBA世界フライ級1位
ユーリ阿久井政悟(倉敷守安)
SEIGO YURI AKUI
シンプルな攻撃だが、その質を高めるとこうなるという好例。雰囲気、空気を読む達人になりつつある。「Be,Water!」
日本スーパーバンタム級17位
池側 純(角海老宝石)
JUN IKEGAWA
決定力を身に着けたら、とんでもない存在になる。
☆敢闘賞☆
OPBFバンタム級チャンピオン
千葉 開(横浜光)
KAI CHIBA
長年の迷いが吹っ切れて、殻を破った感。
日本フェザー級7位
前田稔輝(グリーンツダ)
JINKI MAEDA
敗れはしたものの、潜在能力の高さ、ハートの強さを存分に発揮。
日本ウェルター級3位
小畑武尊(ダッシュ東保)
TAKERU KOBATA
王座統一戦は戦術を誤ったが、思考能力の高さはピカ一。
☆再生賞☆
OPBFフライ級チャンピオン
桑原 拓(大橋)
TAKU KUWAHARA
立ち上がり、這い上がる強さの根底には「勇気」がある。
日本ライト級1位
仲里周磨(ボクシングクラブオキナワ)
SHUMA NAKAZATO
「上手いけど勝ち切れない」という壁をようやく突き破った感。
☆躍進賞☆
日本フライ級7位
永田丈晶(協栄)
JOSUKE NAGATA
プロになって、正統なボクシングに磨きがかかった異色のパターン。アウェーでも強い。
WBOアジアパシフィック・ミニマム級チャンピオン
小林豪己(真正)
GOKI KOBAYASHI
一気にベルトを巻いた正に躍進。日本選手との絡みを見たい。
☆最新鋭賞☆
今永虎雅(大橋)
TAIGA IMANAGA
すでにチャンピオン級。
鈴木稔弘(志成)
TOSHIHIRO SUZUKI
対戦相手に恵まれないが、今年は再注目株のひとり。
☆新鋭賞☆
高見亨介(帝拳)
KYOSUKE TAKAMI
どのパンチも鮮やかにカウンターできる異才の持ち主。
日本フェザー級6位
堤 駿斗(志成)
HAYATO TSUTSUMI
デビュー2戦、タフな相手に苦労したが、戦力の高さは折り紙付き。
岩本星弥(JB SPORTS)
SEIYA IWAMOTO
プロ叩き上げの希望の星。昔懐かしい「強さ」を備える好選手。
日本バンタム級15位
松本海聖(VADY)
KAISEI MATSUMOTO
新人王戦の中で群を抜いたレベルを披露。今年最注目のひとり。
☆KO賞☆
日本ミニマム級2位
高田勇仁(ライオンズ)
YUNI TAKADA
「いいものを持っている」と認められながら勝ち切れなかった過去を脱し、すっかり倒すツボを心得た。
日本ライトフライ級13位
坂間叶夢(ワールドスポーツ)
KANAMU SAKAMA
一撃でもコンビネーションでも倒せるプロスペクト。
☆最高試合賞☆
64.5kg契約6回戦(7月9日・エスフォルタアリーナ八王子)
△佐々木尽(八王子中屋)
△関根幸太朗(ワタナベ)
引分1-0(56対56、57対55、56対56)
互いにダウンを奪い合う大熱戦の末の引き分け。将来、決着戦をぜひ見たいものだが、体格が違いすぎるかな……。
56.5kg契約8回戦(8月14日・エディオンアリーナ大阪第1競技場)
〇福永宇宙(黒潮)
●山下賢哉(JB SPORTS)
判定3-0(77対74、76対75、76対75)
熱しやすい山下が冷静に戦ったことで、互いの技術、体力、精神力が真っ向からぶつかることに成功した。
☆ナイスマッチメイク賞☆
56.5kg契約6回戦(12月3日・後楽園ホール)
山口臣馬(帝拳)vs.平野和憲(KG大和)
判定は山口がはっきりと制したものの、互いに6回戦とは思えないハイレベルなボクシングを展開。平野は連敗中だが良い選手だ。
スーパーフェザー級8回戦(12月31日・大田区総合体育館)
渡邊海(ライオンズ)vs.中井龍(角海老宝石)
実質、渡邊のワンパンチで決まったが、カードとしては素晴らしい組み合わせ。
☆渋味賞☆
日本スーパーフライ級13位
廣本彩刀(角海老宝石)
AYATO HIROMOTO
目立たない存在に甘んじてるが、実に上手い選手。
池上 渉(DANGAN郡山)
WATARU IKEGAMI
廣本に敗れたが、彼を「渋い」と言わずして何と言おう。
日本フライ級10位
浅海勝太(ハラダ)
SHOTA ASAMI
10勝11敗と負け越してはいるが、よ~く見ていると、ホント渋~い技を使ってるんだよなぁ。
☆復帰祈願選手☆
日本フライ級8位
飯村樹輝弥(角海老宝石)
JUKIYA IIMURA
富岡浩介(REBOOT.IBA)
KOSUKE TOMIOKA
日本フェザー級19位
木村蓮太朗(駿河男児)
RENTARO KIMURA
日本スーパーバンタム級14位
津川龍也(ミツキ)
RYUYA TSUGAWA
【女子】
☆最優秀選手賞☆
WBO世界スーパーフライ級チャンピオン
晝田瑞希(三迫)
MIZUKI HIRUTA
イギリス、アメリカ……。あの大舞台をマジで目指していただきたい。
☆技能賞☆
WBA世界ライトフライ級9位
天海ツナミ(山木)
TSUNAMI TENKAI
男女関係なく、国内屈指のテクニシャン。
☆敢闘賞☆
WBO世界アトム級チャンピオン
黒木優子(YuKOフィットネス)
YUKO KUROKI
サウスポー攻略の定石を逆手に、冷静な頭脳に基づく戦いを体現。
【最優秀外国選手】
☆男子☆
エスネス・ドミンゴ(フィリピン)
Esneth Domingo
飯村樹輝弥、富岡浩介(REBOOT.IBA)を連続KO。
☆女子☆
WBOアジアパシフィック・スーパーバンタム級チャンピオン
イェスゲン・オュンツェツェグ (モンゴル)
Yesugen Oyuntsetseg
12月、藤原茜(ワタナベ)相手に見せたテクニックは、男子も必見。
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