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ふじこ
2018年10月17日 14:46
玄関の傘立てに置き忘れているあれに、私はだいたいの見当をつけていた。 数週間前、母の客として来ていたあの男のひと。白髪や無数の浅い皺、それらに年齢を感じさせるものの、こちらに向いた時の表情は、子供のそれのように純粋なものだった。母は私に、挨拶しなさい、といって、私はただ頭だけを下げたけれど、男のひとは「どうもすみません。勝手にあがってしまって」といって、席を立とうとまでした。母は少しうろたえて