ESGについて
2021年の流行語大賞候補としては、SDGs、ジェンダー平等といった言葉もノミネートされました。企業もこのような社会課題に無関心ではいられない状況にあります。ESG投資といって環境、社会、ガバナンスに配慮している企業に対して投資をすることが主流となってきているからです。逆に環境に負荷を与える事業を行っていると捉えられた会社は資金調達ができない状況となり、英国では石炭火力に関連する会社数が半減したという報道もありました。本日はESG投資についてです。本記事は(社)株主と会社と社会の和 山崎直実氏の「ESG投資の正しい理解」の講義を参考にしています。
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■ 1.ESGとSDGs
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ESG投資とは、「財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)要素も考慮した投資のこと」です。(経済産業省ESG投資(METI/経済産業省)より)
ESG投資の説明される際、よく「持続可能性(サステナビリティ)」というキーワードが出てきますが、ESG投資の「持続可能性」とは何の持続可能性のことを指すのでしょうか。ESG投資でいう持続可能性は、「企業」の持続可能性です。上記と同じ経済産業省のHPでは、ESG投資について「年金基金など大きな資産を超長期で運用する 機関投資家を中心に、企業経営のサステナビリティを評価するという概念が普及し、気候変動などを念頭においた長期的なリスクマネジメントや、企業の新たな収益創出の機会(オポチュニティ)を評価するベンチマークとして、国連持続可能な開発目標(SDGs)と合わせて注目されています。」と記載されています。機関投資家、特に年金基金などは長期的な観点で運用をするため、投資した企業が持続的に成長し続ける、つまり企業が生き残るかどうかが最大の関心事です。
一方でSDGs(SDGs:Sustainable Development Goals)の持続可能(Sustainable)は何が持続可能なのでしょうか。これは地球上の人類全体の生活の持続可能性を意味しています。近年コロナウィルスのような感染症に加え、気候変動による災害や生態系に変化、紛争など、これまでとは異なる規模での問題が表面化しており、このまま無策でいくと、人類が安定してこの世界で暮らし続けることが困難になる状況が見込まれています。このような危機感から国連より定められた全世界の目標がSDGsです。
人類の生活全体が対象となるため、かなり幅広い分野において目標が定められています。当然企業活動も人類の安定した生活が持続しない限りは続くことができませんので、SDGsに定められた目標につい企業も具体的なアクションを実施していくこととなります。
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■ 2.ESGとCSRの違い
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ESGともう一つに多様な概念にCSRというものがあります。これは、CSR (Corporate Social Responsibility)とは、「企業の社会的責任」を訳されます。これは、環境や社会課題のために企業が実施することになります。
一方で、ESGは企業が自分自身の持続可能性を図るために、環境や社会課題に対してどのような取り組みをしているかという投資家目線で環境や社会を捉えるものです。つまり、環境や社会を持続させるための活動ではなく、企業が存続し続けるために行う活動ということになります。
具体的な施策では当然重なることも多いかと思いますが、あくまでも企業が生き残るための活動でなければ投資家にとって魅力的ではありません。
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■ 3.ESG投資の種類と運用金額
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ESG投資(サステナブル投資)と一言にいっても様々な種類があります。主なものに以下のようなものがあります。
・業種内で相対的にESG関連の取り組みが進んだ企業を抽出する方法
・環境技術の研究など特定のテーマに関連した銘柄への投資
・国際規範に基づくスクリーニング ・環境、社会などESG課題について投資先企業と対話を行い、企業に直接働き かける(議決権を行使する)
・既存の財務分析や投資意思決定に非財務要因(ESG指標)を組み込む方法
またこれ以外に、例えば特定の業種を排除する(ネガティブスクリーニング)という方法もあります。こちらは歴史が古く、1920年ぐらいから宗教的、倫理的な理由から、「たばこ、アルコール、ギャンブル関連企業には投資しない」 ということから始まっています。
当然のことながらESG投資の運用資産は増加しています。日本では機関投資家の運用資産における比率は、2016年は3.4%だったものが24.3%となっています。ちなみにESG投資を積極的に進めているヨーロッパでは2016年の時点で52.6%とすでに投資のメインとなっています。2020年は41.6%となっていて、一見減少しているように見えますが、これは乱立するESG投資に対して一定の定義を設けたことにより、「ESGもどき」が排除された結果ということで1歩も2歩も先をいっている感じです。
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■ 4.日本におけるESGの制度化の動き
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日本でも遅ればせながらESGの制度化に関する動きが出てきています。 2021年 6月に、東京証券取引所は「コーポレートガバナンス・コード(CGコード)」を改訂し、CGコードにサステナビリティに関する様々な規定が加わりました。特にサステナビリティに対する開示についても具体的に規定され、特にプライム市場を選択した上場会社は気候変動に関する情報について、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures) 等に基づいて開示の質と量の充実を進めていく必要があります。(補充原則3-①)
TCFDとは企業が気候関連財務情報を開示する際の提言とガイダンスであり、その中では例えば「気候関連のリスクと機会がもたらす当該組織の事業、戦略、財務計画への現在及び潜在的な影響」を開示することが提言されています。企業が気候変動にできること(CSR視点)ではなく、気候関連のリスクと機会が企業の与える影響及びそれに対応する戦略、計画(ESG 視点)での開示をしていくことが必要になります。もちろん開示の前提となる活動を充実させていくことはもちろんのことです。実態面、開示面ともにESG投資をより一層意識していく必要がありそうです。(作成日:2021年12月23日)
■執筆者:株式会社ビズサプリ 代表取締役 辻 さちえ
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