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補欠監査役制度について

多くの上場会社では、株主総会に向けて会社役員の選任決議案に向け動き出しています。その中で「補欠監査役」選任という見慣れない議案が上がっています。 今回は「補欠監査役」について説明していきます。

1.補欠監査役選任制度の趣旨

「補欠監査役制度制度」は平成15年から認められることとなった制度で、監査役の数が次期の株主総会までの間に死亡等の理由により欠けることになる場合に備え、あらかじめ株主総会で補欠の監査役を選任しておき、監査役の死亡等により定員数を欠いた時は、あらかじめ選任されている「補欠監査役」が「監査役」に就任できることができるというものです。

いわゆる大会社では社外監査役を監査役会の半数以上選任しなければなりません。このような中で社外監査役が任期中に死亡、辞任等をすることにより社外監査役の定員数が欠くことになった場合は、臨時株主総会を開催して後任者を選任するか、裁判所に仮監査役の選任を請求する必要がありました。

しかし、上場会社等にといっては臨時株主総会の開催は多額の手間と費用を要することとなります。 そのため、社外監査役の半数確保が容易になり、かつ会社の負担軽減を図るために社外監査役の補欠を予め選任できるようになりました。

2.補欠監査役の選任手続

では、補欠監査役の選任を行うために必要な手続きはどのようなものでしょう か。

◆1.定款に「補欠監査役を選任することができる。」旨を規定する必要があります。したがって、定款変更のための株主総会特別決議が必要です。

◆2.「補欠監査役」は、監査役が欠けたときは「監査役」に就任することになりますので、補欠監査役候補者として株主総会議案とするには、監査役の選任議案と同様に監査役会の同意が必要です。

◆3.補欠監査役の選任のための取締役会決議と株主総会招集通知に添付する参考書類に補欠監査役に関する事項を記載しなければなりません。

◆4.株主総会で補欠監査役選任を議決する要件(定足数)は、監査役を選任する場合と同様であり、また、議決した場合には補欠監査役の氏名及び補欠監査役である旨を株主総会議事録に明記しなければなりません。

3.補欠監査役の立場・身分

「補欠監査役」は、監査役に就任するまでは会社の機関を構成するものではないため、特別の立場、身分を有するものではありません。したがって、他の会社の監査役や取締役に就任していたとしても何ら差控えありません。 しかし、監査役の定員数が欠けたときは監査役に就任することを承諾しているので委任契約の予約に準じた地位にあると考えられます。

「補欠監査役」は「監査役」に就任するまでは監査役業務を行う訳ではありませんが、待機することになります。そのような待機中の補欠監査役に報酬や手当等を支払うか否かは会社と補欠監査役との合意事項になるようです。ただし、待機中ではありますが、一定限度で拘束する結果となるため合理的な範囲内で報酬や手当を支給している会社が多いようです。

「補欠監査役」は会社の機関でないため、監査役会や取締役会に出席する権限はありません。同様に監査役監査業務への立会や往査への同行についても権限がありません。しかし、「補欠監査役」は将来監査役に就任する可能性がありますので、監査役や取締役全員の承諾があれば、監査役会や取締役会への出席、監査役監査業務への立会や往査への同行も認められます。その場合、「補欠監査役」に守秘義務を課す必要があるほか、「補欠監査役」が関与したことで特別の不祥事が生じた場合には、承諾した監査役や取締役が監督責任を負うこととなります。

以上のように、補欠監査役制度は一種の保険のような制度ですが、検討してみてはどうでしょうか。(作成日:2017年4月19日)

■執筆者:株式会社ビズサプリ パートナー 庄村 裕

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