アンラーニング ~ピンとこない?~
法人向けにDX支援を行う仕事をしている関係で、関連書籍を読む機会が多くあります。その中で「アンラーニング」について触れられていることが多々あります。アンラーニングについて思うところを書いてみます。先に、念のためアンラーニングとは何かについて説明します(すでにご存知の方は飛ばしてください)。
アンラーニングとは
リスキリングを進める上で、アンラーニング(unlearning)の重要性は非常に高いとされています。アンラーニングとは、これまでの経験や習慣、固定観念を一度手放し、「学び直す」ことを指します。リスキリングにおいてこれが重要な理由は以下の通りです。
固定観念の打破
新しいスキルを学ぶためには、古い考え方や方法論にとらわれない柔軟な思考が必要です。過去の成功体験や「これが正しい」という固定観念が強いと、新しいスキルや考え方を受け入れにくくなります。アンラーニングを通じて過去のやり方を見直し、新しい情報を受け入れやすいマインドセットを形成することが求められます。変化への対応力向上
技術の進化やビジネス環境の変化が速い現代では、従来の方法に固執することはリスクを伴います。アンラーニングを促進することで、変化に柔軟に適応できる力を養い、リスキリングをスムーズに行うことが可能です。新しいスキルの習得を加速
既存の知識やスキルが新しいスキルと対立する場合、アンラーニングを行わないと学習が阻害されることがあります。たとえば、旧来の開発手法に慣れた人がアジャイル開発を学ぶ際、従来の手法をそのまま適用しようとすると失敗します。まずは古い習慣を手放し、新しい方法を受け入れるための土壌を整える必要があります。心の柔軟性の確保
アンラーニングは心理的な柔軟性を高めます。新しいことを学ぶには、失敗を恐れず試行錯誤する姿勢が大切です。過去の方法や失敗経験にこだわらず、柔軟な思考を持つことがリスキリングの成功の鍵となります。
アンラーニングは単に過去を否定するのではなく、過去の経験を再評価し、必要に応じて手放すことで未来の成長を加速させるプロセスです。リスキリングを効果的に進めるためには、アンラーニングを意識的に取り入れ、新しいスキルの習得を阻害しない環境を整えることが不可欠です。
アンラーニングの理解と疑問
アンラーニングの重要性は理解できますが、日本人にとっては少し馴染みのない言葉です。あえてこのような用語を使わなくてもいいのではないかと感じることもあります。
スポーツを例にすると、ラグビーのルールで競技していたのに、いつの間にかルールがサッカーに変わったような状況です。サッカーではゴールキーパー以外、手でボールを触ることはできません。そのため、ラグビーで学んだ「手を使ってボールを扱う」習慣をいったん忘れる必要があります。しかし、ラグビーで培った相手のタックルを避ける技術やチームプレーへの献身性は、サッカーでも活かせます。
このように考えると、言葉の本質は、せっかく身につけたことを「忘れる」のではなく、新しいルールに対応したやり方を身につけることであるように思います。少なくとも日本人にとっては、アンラーニングという言葉はかえって分かりづらく、無理に使う必要はないのではないかと感じます。
DX推進とアンラーニング
DXを推進する組織では、これまで活用しきれていなかったデジタル技術を活用して組織変革を図っています。これは、競争のルールが変わった中で、過去の成功事例のない新たな競争に挑むことに他なりません。
しかし、せっかく身につけたスキルを忘れるのはもったいないですし、都合よく忘れられるものでもありません。
新しい概念を導入するために、あえて新しい用語を使って「格好良く」「賢そうに」見せるのは、コンサルやIT業界ではよく見かける手法です。しかし、カタカナ用語が増えすぎると、一般のビジネスパーソンとの距離が広がり、かえって逆効果ではないかと感じています。
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