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やりたいことをやってから死ぬ ~コッポラ監督の「メガロポリス」に思うこと

今回はフランシス・フォード・コッポラ監督の新作映画「メガロポリス」を取り上げます。


フランシス・フォード・コッポラ監督

映画好きでないとコッポラついてよく知らないかもしれないので、簡単に業績を紹介します。

フランシス・フォード・コッポラ(1939年生まれ)は、アメリカの映画監督・脚本家・プロデューサーであり、ニュー・ハリウッドを代表する巨匠の一人。1960年代からキャリアをスタートし、1972年に『ゴッドファーザー』を発表。マフィアの家族の壮大な物語は批評的・商業的に大成功を収め、アカデミー賞作品賞を受賞。続編『ゴッドファーザー PART II』(1974年)も高評価を得て、史上初めて前作と共にアカデミー作品賞を受賞したシリーズとなった。

1979年には『地獄の黙示録』を発表。ベトナム戦争を題材にしたこの作品は、制作の困難を極めたが、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞し、戦争映画の金字塔となった。

1980年代には『アウトサイダー』(1983年)や『コットンクラブ』(1984年)を手がけるが、商業的な失敗も重なり、経済的に苦境に立たされる。1990年代には『ドラキュラ』(1992年)で再び成功を収めたが、大作志向から離れ、ワイン製造や自主映画制作へとシフトした。


フランシス・フォード・コッポラの作品は、主要な映画ランキングで高い評価を受けています。英国映画協会(BFI)が10年ごとに発表する「映画監督が選ぶ史上最高の映画ベスト100」の2022年版では、『ゴッドファーザー』(1972年)が第3位、『地獄の黙示録』(1979年)が第18位にランクインしています。

また、同協会の「映画評論家が選ぶ史上最高の映画ベスト100」でも、『ゴッドファーザー』が第12位に選ばれています。

私自身としては、いままでに約2,000本の映画を観てきて、『ゴッドファーザー PART II』が人生で第2位、『ゴッドファーザー』が第3位に位置します。

つまり、コッポラは、それほどすごい監督なのです。

商業的には大コケした「メガロポリス」

老境を迎えたコッポラが2024年に製作した映画が「メガロポリス」です。

この映画は、廃墟と化したアメリカの再建を試みる天才建築家と、市長の娘との恋愛模様を描くSF作品です。アダム・ドライバーやジャンカルロ・エスポジート、ナタリー・エマニュエルなどの人気俳優が出演しています。

コッポラ監督はこの映画の製作にあたり、自身のワイナリーを売却して1億2,000万ドルもの費用を自費で捻出しました。彼はこの映画を「これまでのキャリアで築いた大部分を賭けて挑むような野心作」と表現しています。

「メガロポリス」はカンヌ映画祭で上映され、賛否両論を呼びました。少なくとも一般には受け入れられないと予想され、映画配給会社の決定が難航した作品です。

何とか全米での公開にはこぎつけましたが、公開直後の全米ボックスオフィスランキングでは興行収入400万ドルにとどまり、大コケという表現がぴったりの結果になっています。

歴史に残る名作の中には、公開当初は全く評価されなかったものもあります。「ブレードランナー」、「ショーシャンクの空に」、「2001年宇宙の旅」、「ファイト・クラブ」はその例です。コッポラ作品の『地獄の黙示録』も、公開時は制作の混乱や難解なストーリーから評価が割れたものの、後に戦争映画の傑作とされ、カルト的人気を獲得しました。

やりたいことをやりきる

私もまだ「メガロポリス」を観ていないのですが、作品を作ったコッポラの想いに焦点を当ててみます。

カンヌ映画祭の公式会見でコッポラは、以下に示す通り後悔はないと語っています。

「お金は重要ではない」、「普通、人は死ぬ前に『あれをやっておけばよかった。これをやっておけばよかった』と思うものだろうが、わたしが死ぬ時は『わたしは娘(ソフィア・コッポラ)がオスカーを獲るのを見た。わたしはワインを作った。わたしは自分が作りたいと思った映画を全て作った』と自分がやったことを考えるのに忙しすぎて、死んだことにも気づかないだろうよ」

当たり前のことですが、カネは墓の中まで持っていけません。娘のソフィアは映画監督として成功しており、息子のロマンも素晴らしい映画の製作や脚本を手がかています。つまり、家族に資産を遺す必要はなさそうです。

ならば、他人の評価など気にせずに、やりたいことをやりきって死ぬのが、幸せのありかたではないかと思います。

もちろんワイナリーを売って映画を作るスケールの大きさは真似できないのですが、考え方については見習って、悔いのない人生を送りたいと思います。


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