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マイノリティ・リポートの世界が現実に

2025年1月10日付のオンライン新聞記事で

「自転車盗のリスクが高い」と出たのは駅などもない「まさか」の住宅地ど真ん中…AI犯罪予測が的中

「まさかこんな場所で」「AIが間違っているのでは」犯罪発生の可能性が高いとAIが予測した場所をパソコンで確認する警察官(横浜市中区の伊勢佐木署で)
 2023年冬、神奈川県の湘南地区にある警察署。AI(人工知能)を活用した神奈川県警の犯罪予測システムがはじき出したデータに、署員らは首をかしげた。
 「自転車盗のリスクが高い」と示された場所は、駅や商業施設もない住宅地のど真ん中。通常であればリスクが低いと考え、警戒対象とはしにくい。ところが数日後、AIの予測通り、自転車盗が発生した。

出所:読売新聞オンライン(https://www.yomiuri.co.jp/national/20250105-OYT1T50011/)

という記事が掲載されました。

スティーブン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演で2002年に製作されたSF映画「マイノリティ・レポート」の世界が現実になった、と感じました。

映画の舞台は2054年。予知能力者を利用して凶悪犯罪を予知する画期的なシステムが開発され、ワシントンDCでは犯罪予防局が犯人を事前に逮捕することで、犯罪件数は激減していました。そんなある日、犯罪予防局の凄腕捜査官ジョン・アンダートン(トム・クルーズが演じる)は、自分が36時間後に殺人事件を起こすと予知されたことを知ります。これが物語の設定です。

SF映画らしく、映画に登場するコンピュータのユーザインターフェースは利用者の手の動きを読み取る方式になっており、自動車が空を駆け回っていて未来らしさが溢れていたと当時は感じたものです。

現実は映画の舞台よりずっと早く、2024年の時点で予知能力者ではなくAIが犯罪を予知する状況が、まだ完全ではないですが訪れています。

映画を作成した2002年時点で現在のAIの進化を予想していれば、予知能力者ではなくAIが予見したという設定になっていたのではないでしょうか。

少なくともAIについては、ハリウッドの映画製作者たちよりも進化が速かったことになります。

現在、AI犯罪予測システムの事例は海外にもあります。

プレディクティブ・ポリシング(予測的警察活動):アメリカやイギリスなどで導入されているAIシステムが、犯罪が発生しやすい場所や時間を予測し、警察のパトロールを効率化するプロジェクト。

リスク評価ツール:裁判での判決や保釈の際に、再犯リスクを評価するためにAIが活用されている例。

AIの進化の速度に不安を募らせる人がたくさんいることは不思議ではないと感じます。
「AIの父」と呼ばれ、直近のノーベル物理学賞を受賞したヒントン博士がAIに対する懸念を表明しており、現実的な危機であると思います。

AIと倫理にまつわる議論としては、
プライバシー侵害:AIが犯罪予測に使われる際、監視カメラや個人データの利用が増える可能性があり、プライバシーの問題が懸念される。
バイアス問題:AIが犯罪予測を行う際、データの偏りにより特定の人種や地域が不当にターゲットになるリスク。
が、現実の問題となっています。

AIのリスクは気になりますが、一方で、医療ミスや交通事故の削減に大きく寄与し始めており、動向を注視する必要があるものの、流れを止めるのは難しそうです。危機が極めて大きな問題にあり、国家間で対立するよりも強調するほうが理にかなっている状況になれば、各国が協調して規制に乗り出す可能性がありますが、楽観的予想は難しいように思います。



同じくハリウッドが制作した映画「ターミネーター」は1984年製作ですが、AIが暴走して人類と敵対し核戦争を起こして、多くの人間が死滅してしまうという未来を描いています。

AIが暴走するディストピアはこれ以前にも何度も描かれており、同じ年代の男性にしか分からないであろうマイナーな作品としては「新造人間キャシャーン」があります。これは1973年から74年にかけて放映されたアニメであり、人間のために働くはずのロボットが暴走して人間と戦争を起こすというものです。

ただ、昨今の政治状況、特に選挙に関するSNSの利用などを見ていると、AIが人間と対立するのではなく、分断した人間同士がAIを武器として静かに対立するということの方が現実にありそうです。


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