オンライン申請の仕組みづくりからモバイルワークに必要なアプリ作成まで〜自治体のkintone活用事例まとめ〜
空き家対策や待機児童対策、鳥獣被害対策など、少子高齢化やライフスタイルの多様化によって、自治体に求められる課題が増加・多様化してきています。
自治体のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の必要性も叫ばれる中、コーディングを必要とせず、ノンプログラマーでもシステム開発ができるノーコードツールを活用する自治体が増えてきています。
今回はそんなノーコードツールの中でも、サイボウズ株式会社が提供する「kintone」の自治体の活用事例についてご紹介します。
本記事でご紹介する事例は、kintone公式サイトの活用事例ページ(下記リンク先)から抜粋しています。
■島根県益田市(約4.7万人)の事例
・これまでの課題
益田市20地区それぞれに配置している地域魅力化応援隊員からの月1回の業務報告は、紙やメールに添付されたExcelなど、報告する手段やフォーマットがバラバラで、1か月のタイムラグがあるなど古くなった情報が報告されることがあった。
・kintone導入後
kintoneを活用し、スマートフォン等で文字や写真を使って随時簡易的な報告をしてもらうなど、できるだけ鮮度の高い情報を入力してもらうようにした。報告書作成の手間が軽減できるようになり、応援隊員同士のやり取りもkintone上で行うなど、コミュニケーションも活発になっている。
■東京都品川区(約38万人)の事例
・これまでの課題
従来からさまざまな形で中小企業の助成金申請を受け付けていたが、以前は紙による申請のみで、オンライン上で申請可能な環境は整備していなかった。
・kintone導入後
運用を始めてから助成金申請の98%ほどがオンラインを経由。最低でも1か月ほどかかっていたものが、今では2週間ほどの期間で交付決定できるようになった
■静岡県焼津市(約14万人)の事例
・これまでの課題
ふるさと納税への参加企業が市役所に行う申請は、以前は紙による申請用紙をベースに行われており、市役所ではその情報をMicrosoft Excelに転記して管理してきた。1つのExcelシートで管理するため複数人で同時に作業ができず、件数増加でファイル自体が重くなり、入力作業自体に多くの時間がかかるようになっていった。
・kintone導入後
お礼品の情報を管理する「お礼品データベース」と呼ばれるアプリを作成し、参加企業からの申請に基づいてお礼品の情報を管理。管理された情報をもとに、ボタン1つでふるさと納税サイト登録に必要なフォーマットでデータ出力を行える環境を整備した。
■長野県阿智村(約6000人)の事例
・これまでの課題
標高1,000m近くある環境を活かしながら、トウモロコシなど高原野菜を多く栽培している阿智村は、サルを主とした農作物に対する鳥獣被害が近年増えており、その対策に苦慮。
当初は目撃情報や被害状況を大きな地図にメモするなど紙ベースで情報集約を進め、その後はExcelなどを駆使して情報を整理していた。
・kintone導入後
現場で鳥獣の目撃情報などを入力する際には、鳥獣の種類や被害状況の内容などをLINE Botに一問一答形式で回答。位置情報や画像情報もbotの指示通りに進めていくだけで簡単に情報登録できるようにした。情報はkintoneにレコードとして記録され、ポータル上で鳥獣の種類別の統計が簡単に可視化できるように。
■岩手県一関市(約12万人)の事例
・これまでの課題
選挙事務の学生スタッフを募集する際に、これまで通り書面の申込書の持ち込みや郵送だと、なかなか応募が集まらないという現状があった。kintone導入前の選挙事務スタッフ募集時の応募数は、数名程度。
・kintone導入後
kintoneとフォームクリエイターというwebフォーム作成サービスと連携することで、トータルで31人程度の応募があり、そのうち27人はWeb上からの申し込みがあった。
さらにこの仕組みを庁内アンケートにも活用。これまではGoogle formで管理していたが、2017年以降、セキュリティ強化のために自治体ネットワーク内でのGoogleやYahooが提供するサービスの利用が制限され、別の手段を検討していた。
■愛知県(約760万人)の事例
・これまでの課題
新型コロナウイルス感染症に関して、飲食店への感染防止対策協力金を給付する際、申請者から郵送で送ってもらった必要書類を市町村で分担して審査し、市町村が銀行口座に協力金を支払う流れだった。情報はExcelを中心に管理。
当初は申請を県と市町村で分担していたが、県内全ての申請を県の事務局で受け付ける体制へ切り替わる際、従来のExcel管理では対応が難しいと判断。事務局での審査、相談窓口やコールセンターなど、複数のセクションで円滑に情報共有できる仕組みが必要だった。
・kintone導入後
給付金の申請をした事業者の情報が管理された台帳アプリを中心に審査状況のステータスを管理。コールセンターへの架電履歴や窓口での対応状況を記録するアプリなどとも連携している。審査状況は、kintone連携サービスの「kViewer」を用いて、事業者ごとのマイページで公開。
本庁の関係者や審査スタッフ、相談窓口スタッフ、コールセンターのオペレーター含め、500名ほどがkintoneを活用して情報共有を行っている。
■大阪府堺市(約84万人)の事例
・これまでの課題
庁外で業務を行うモバイルワークを導入したいと考えている各課の担当者を中心にワークショップを開催し、モデルケースとなる業務をいくつかピックアップしたところ、モバイルワーク化するために必要な機能がそれぞれ異なっていた。
個別のシステム導入では初期費用が膨らみ、さらにシステム改修のたびに費用が発生・運用もバラバラになってしまうことが懸念されていた。
・kintone導入後
モバイルワーク導入に意欲的な一部の課を対象に、kintoneを利用したモバイルワークの検証をした。各課のメンバーと、kintoneの開発パートナーである大塚商会とで要望を洗い出し、その場でアプリ開発を行う「訪問開発サービス」を利用してアプリ作成を進めた。
現状は、健康福祉総務課や生活援護管理課、建築課、スポーツ施設課など15課に在籍するおよそ100名がkintoneを活用、アプリ数は100を超えている。