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SAP概要(第一回)- SAPとは

SAPシリーズの構成について

1. SAPとは


1-1. SAP会社概要

   SAPとは、ドイツ中西部のヴァルドルフに本社を置く、ヨーロッパ最大級のソフトウェア開発会社の名称で、社名は、システム分析とプログラム開発の意味を持つ「Systemanalyse und Programmentwicklung」からとられています。
   1972年に創業以来、全世界の多くの企業に製品を供給し、企業に即したシステムをパッケージとして導入してきました。20年後の1992年には日本法人であるSAPジャパンが設立されています。
   SAP社が開発し、提供する「ERP」パッケージ製品「SAP ERP」や「SAP システム」がERP製品の代表格として世界中の企業で利用されています。

出典:SAP revenue worldwide by segment 2009-2023 | Statista

1-2. 主な企業買収

2023年以前は、クラウドサービスや先進技術の強化、業種別ソリューション拡充を目的とした大型買収を積極的に行ってきた。以下に主要な買収事例を戦略的意義とともに整理する。
Sybase(2010年、58億ドル)
 事業領域:データベース・モバイル技術
 戦略的意義:
  モバイルファースト戦略の基盤(Sybase ASE、SQL Anywhere)
  リアルタイムデータ分析技術をSAP HANAに統合
SuccessFactors(2011年、34億ドル)
 事業領域:HRクラウド(HCM)
 戦略的意義:
  クラウドHCM市場での教祖力確立
  従業員エンゲージメント分析機能をSAP HCMに統合
Ariba(2012年、43億ドル)
 事業領域:調達クラウドプラットフォーム
 戦略的意義:
  サプライヤーネットワーク(500万社以上)を獲得
  サプライチェーンデジタル化の基盤構築
Hybris(2013年、非公開)
 事業領域:オムニチャネルコマース(ECプラットフォーム)
 戦略的意義:
  B2B/B2C向け顧客エンゲージメント強化
  SAP CRM(C/4HANA)の中核魏実として活用
Concur Technologies(2014年、83億ドル)
 事業領域:経費精算・出張管理クラウド
 戦略的意義:
  旅行/経費管理のデジタル化を推進
  S/4HANAとの連携で「Finance & Spend Management」を強化
Fieldglass(2014年、10億ドル)
 事業領域:非正規労働力管理(VMS)
 戦略的意義:
  ギグエコノミー時代の労働力最適化を支援
Qualtrics(2018年、80億ドル)
 事業領域:非正規労働力管理(VMS)
 戦略的意義:
  顧客・従業員・製品の「体験データ」をSAPの業務データと連携(Operational Data + Experience Data)
  クラウド収益基盤の拡大
   ※2013年にシルバーレイクなどに過半数株式を売却(SAPは18%保有)
CallidusCloud(2018年、24億ドル)
 事業領域:営業効率化(CPQ:見積管理)
 戦略的意義:
  リベート管理やインセンティブ設計機能をSAP Sales Cloudに統合
Signavio(2021年、12億ドル)
 事業領域:ビジネスプロセス分析(BPA)
 戦略的意義:
  プロセスマイニング技術でSAP S/4HANA移行を支援
Taulia(2022年、非公開)

 事業領域:サプライヤーファイナンス
 戦略的意義:
  サプライチェーン金融のデジタル化を加速

2023年以降、SAPはクラウドビジネスの拡大とAI技術の強化を目的とした戦略的買収を積極的に進めている。いかに、主要な大型買収事例とその背景、戦略的意義を整理する。
LeanIX(2023年、20億ドル)
 事業領域:エンタープライズアーキテクチャ管理(EA)
 戦略的意義:
  企業のITシステム全体の可視化と最適化を支援
  S/4HANA移行プロジェクトの効率化を促進
  クラウドネイティブなEAツールで競争力を強化
WalkMe(2023年、15億ドル)
 事業領域:デジタルアダプションプラットフォーム(DAP)
 戦略的意義:
  ユーザー向けのオンボーディング・トレーニングを自動化
  SAPソリューションのユーザビリティ向上
Celonis(2023年、15億ドル)
 事業領域:プロセスマイニングと実行管理
 戦略的意義:
  ビジネスプロセスのボトルネックをリアルタイムで特定
  S/4HANAとの連携で「インテリジェントエンタープライズ」を推進
  プロセス自動化(RPA)との統合で効率化を加速
Datasphere(2023年、非公開)
 事業領域:データ統合と分析プラットフォーム
 戦略的意義:
  マルチクラウド環境でのデータ統合を簡素化
  SAP HANAとの連携でリアルタイム分析を強化
  業種別データモデルを提供し、迅速な意思決定を支援
Taulia(2023年、完全子会社化)
 事業領域:サプライチェーンファイナンス
 戦略的意義:
  サプライヤー向けの早期支払いソリューションを強化
  SAP S/4HANAとの統合で資金調達効率を向上
  ESG関連のサプライチェーン透明性を確保

今後の買収予測
 1)AI/生成AIスタートアップ
  候補:OpenAIやHugging Faceとの連携するスタートアップ
  焦点:生成AIを活用したビジネスプロセス自動化(例:ドキュメント生成、コールセンタ支援)
 2)サスティナビリティ関連企業
  候補:環境データ分析プラットフォームを提供する企業
  焦点:カーボンフットプリント管理やサーキュラーエコノミー支援 3)業種ベッツソリューション
  候補:行化特化型のSaaS企業
  焦点:医療/公共/教育分野での専門性強化

1-3. SAPの製品群

SAP製品群:全貌

SAP製品群:全貌

SAP製品群:ERP

SAP製品群:ERP

SAP製品群:ERP‐パッケージの種類
 SAP ERP Central Component (ECC)
 ECCやSAP ERPとも呼ばれる、SAP社の主力製品
  ・導入開始から20年以上利用されている
  ・大企業向けのITシステム
  ・リアルタイムでのデータ処理
  ・整合性のとれたシステム機能
 SAP S/4HAN、S/4HANA Cloud
 2015年から導入がスタートしたECCの次期主力製品
  ・テーブルの見直し、SAP HANAによる高性能なデータ処理
  ・ECCと同様で中堅~大企業向けのITシステム
  ・オンプレミス、クラウドでの提供
 SAP Business ByDesign
 ECCの機能を縮小し、使い勝手を重視したERPパッケージ
  ・中小企業~中堅企業向け
  ・運用負担の少ない製品
  ・柔軟な適合性を持ったシステム
 SAP Business One
 最小1ライセンスから導入できる、企業成長に合わせ拡張できるERP
  ・スタートアップ企業~中小企業向け
  ・2層ERPに対応
  ・多言語多通貨に対応

1-4. SAP ERPの歴史

SAP ERPの生立ち

SAP ERPの生立ち

SAP ERPの現在

SAP ERPの現在

SAP ERPのネーミング

SAP ERPのネーミング

1-5. SAP ERPのモジュール関連図

1-6. SAP S/4HANAのリリース計画

S/4HANA 1709、1809、1909については、2025年までの延長補修オプションが提供される。
オンプレミスの場合
 ・SAP S/4HANA Enterprise Management SLUのDBを除く保守ベースに対して+4%の保守料率/保守料金を追加することで延長保守を選択可能
 ・延長保守オプションは必須ではない。加入しない場合は、保守サービス範囲に制約のあるカスタマイズ・スペシフィック・メンテナンスで継続して運用
クラウド(Rise with SAP、およびその他のSAP S/4HANAクラウド製品)の場合
 ・追加料金なしで自動で延長保守が可能

2022年10月にSAP社から発表されたSAP S/4HANA 2023のリリース計画に伴う新たな方針から抜粋

1-7. SAP ERPの販売戦略

クラウドの利用形態とSAP S/4HANA、SAPの販売戦略

日本市場向け戦略(RISE with SAP)
 ・新規顧客へSAP S/4HANA Cloud (Public Edition) を第一の選択肢として提案
 ・SAP S/4HANA Cloud (Public Edition) 事業推進体制の拡充
 ・SAP S/4HANA Cloud (Public Edition) に特化したパートナーエコシステムの拡大・強化

(完)


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