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SAP概要(第三回)- SAPマスタの考え方
3-1. 主要なマスタの関連図
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3-2. 品目マスタ
品目マスタとは
原料、製品、商品などの品目に関する情報を定義するマスタ。
品目マスタを設定するときの考慮事項
各業務で使用する情報を管理するため、各部門が連携して設定する必要がある。
調達、生産、在庫、販売する全ての品目に関する情報を一元管理する。
重複データを回避するために、品目に関連する設定情報が1つのデータベースに統合されている。
使用例
(1)購買における購買発注処理
(2)在庫管理における入出庫転記と実地棚卸
(3)請求書転記における請求書照合
(4)受注における受注処理・出荷処理
(5)生産管理における生産計画と品目所要量計画、製造指図処理
(6)品質管理における検査計画と検査依頼処理
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品目マスタのビュー
品目マスタは、品目コードで設定する内容と、品目コードと各組織で設定する内容があり、ビューと呼ばれるタブにより構成される。
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品目タイプ
SAPで品目を登録する際に用途別に品目タイプを使い分ける必要がある。
・品目タイプ:品目の用途(原料、半製品、製品、商品など)を表す。
品目タイプにより、品目コードで使用する下記が制御される。業務要件に応じて品目タイプの追加が可能。
・品目コードの番号範囲
・品目コードで設定するビュー
・品目を在庫管理するか、金額管理するかの制御
・使用可能な評価クラス(仕訳を制御する)
代表的な業務要件で使用される品目タイプ
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品目タイプによるビューの違い
製品:販売するために、販売ビューを拡張していること。製造するためにMRP・作業計画ビューを拡張していること
半製品:製造するためにMRP・作業計画ビューを拡張していること
原材料:購買するために、購買ビューを拡張していること
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品目階層
SAPでは品目コードをグループ化するコードとして、「品目グループ」と「品目階層」の2種類ある。
※SAP上、「品目グループ」「品目階層」はマスタではなく、カスタマイズ項目となる。
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3-3. ビジネスパートナマスタ
ビジネスパートナマスタ概要
SAP S/4HANAでは、仕入先と得意先のマスタデータはビジネスパートナ(以下、BPと呼称)マスタを使用して管理される。BPにロールを紐づけることで、どのような役割を担っているかの情報を管理することができる。
1BPに対して、複数のBPロールを割り当てることも可能である。
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ビジネスパートナマスタの構成
BPマスタと販売管理・購買管理などの業務との紐づけは、ロールの概念によって実現される。
これにより、様々な業務に関連するマスタデータを適切に管理したり、関連する機能(受注先など)でBPを使用することができる。
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入力画面とBPロールの対応
BPマスタの属性項目は複数の入力画面に分かれて管理されており、各画面ごとにキー項目が異なる。選択したBPロールによって、入力できる属性項目が決まっており、表示される入力画面で制御されている。
例えば、
BPロール「サプライヤ」登録できる画面 :「一般データ」と「購買データ」
BPロール「仕入先(財務管理)」の登録できる画面:「一般データ」と「会計データ」
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3-4. 購買管理(MM)関連マスタ
購買領域で使用する主なマスタ
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購買情報マスタ
品目・仕入先・プラントの組合せで、価格・リードタイム・最低発注量など購買に関わる各種条件を管理。
また、期間別価格条件、購買数量に基づく価格条件(スケール単価)を設定可能。
同様の目的を果たすマスタとして、購買契約マスタがある。
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供給元一覧
供給元一覧は、該当のプラントにおいて、供給元を決定するためのマスタ。
自動発注等の要件が存在する場合、登録が必要となる。
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供給量割当
供給量割当は、外部調達の仕入先の割当や、内製の製造バージョン別製造量割合などの制御が可能。
ロットまとめ方式の設定により、所要に対する生産/調達量を供給量割当の配分で計画することができる。
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条件マスタ
条件マスタは、仕入先との間で結ばれた価格や値引き、追加料金などの取り決め条件を登録する。
購買情報のキー項目よりも詳細または異なるキー項目で登録が必要な場合に条件マスタを使用する。
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3-5. 販売管理(SD)関連マスタ
販売領域で使用する主なマスタ
すべてのマスタを必須的に使うのではなく、必要なものだけを使うことにななる。
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条件マスタ
基本販売価格、値引き、運賃や税に対する追加料金を登録するマスタ。
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得意先品目情報レコード
得意先品目情報レコードとは、得意先 x 品目で 得意先固有の品目情報を持たせたマスタ。
得意先固有の品目情報をマスタに設定しておくと、受注・出荷・請求の伝票データを登録する際に、毎回得意先固有情報を手入力する手間が省ける。
例えば、
自社:品目「BIZ0001(レトルトチキンカレーEX)」と呼んでいるが、
得意先:「ABC-0141(A社:レトルトカレー)」と呼んでいる場合
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得意先品目情報レコードで設定する項目で、品目マスタにも同じ設定項目を持つものがある。この場合、品目マスタの設定値よりも、得意先品目情報レコードの設定値の方が優先される。
3-6. 生産管理(PP)関連マスタ
SAPで使用するPP関連マスタ
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生産関連マスタと他領域のマスタとの依存関係
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生産管理(PP)マスタの登録順
製造指図を登録する際、製造バージョンを指定していると関連する作業手順/BOMなどもコピーされる。
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生産管理(PP)マスタと製造指図の紐づき
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生産BOM(BOM)
生産品を製造するのに必要な構成品目、数量、構成品目の引き落とし保管場所を定義する。
※構成品目や数量が異なる場合、複数のBOM(代替BOM/BOM用途)を登録することが可能。
※数量単位がPC以外も入れる事が可能。
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作業区マスタ
作業場所や製造機器を表す。品目(作業手順に設定)に割り当てることで製造原価部門で発生した製造費用を、製造指図/品目ごとに捉えることができる。
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PP における作業区の機能
生産計画では、作業区のデータは次の作業に使用される:
・作業区能力の計算
・作業区での原価計算
・作業/指図の日程計画
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作業手順(Routing)マスタ
品目を生産する際の作業区、作業で使用する原料(構成品目)等を定義する。
基本数量に対して、何時間作業するのか、そしてどの作業区で作業をするのか、というのを明細レベルで設定する。会社によって、品目を作るのに、1明細のみ設定するところもあれば、作業を分割して、それぞれ作業時間を計上したい場合は、複数明細設定するところもある。
作業手順マスタには、事前に作業区マスタを設定しておく必要がある。(作業をどの作業区で実施するかを指定するため)
作業手順マスタの設定は、以下3つの機能に影響を与える。
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作業手順マスタの構造
作業手順は「ヘッダ(Header)」、「順序(Sequence)」、「作業(Operation)」の三段構造になっている。
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製造バージョン
製品を製造する際、どの作業手順と品目BOMを使用するかを設定する。
同一品目コードに対して有効期間やロットサイズ範囲の異なる複数の製造バージョンを持つことができる。
製造工程やBOMが異なる場合などに複数設定可能。
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設計変更管理(Engineering Change Management)マスタ
設計変更管理マスタは生産基本データ(例えば品目、BOM、作業手順、および文書など)の様々な変更局面を管理するのに利用するSAPロジスティクスの共通機能。
変更番号を取得し、その番号を使用して生産基本データを変更することにより、生産基本データに対する変更作業の一元管理が行えるようになる。
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変更管理のメリット
変更管理番号の利用により、将来日付(有効日付ベース)でマスタを有効にすることが可能
生産管理部門が、生産分析のために、過去にどのようなBOM・作業手順だったかを参照可能。
経理部門が過去の標準原価と現在の標準原価を比較する元ネタとして、過去のBOM・作業手順を参照可能
変更履歴の確認が可能(CC07)
設計変更の影響範囲
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3-7. 財務/管理会計(FI/CO)関連マスタ
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財務会計(FI)関連マスタ
SAP FIマスタは、財務会計におけるデータの基盤であり、企業の財務状況を正確に把握するために不可欠な情報を管理する。
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FIマスタについては、「SAP詳細 - FI財務会計」シリーズで詳しく紹介する予定。
管理会計(CO)関連マスタ
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S/4HANAでは原価要素も勘定コードに統合
S/4HANAから勘定コードとして扱う範囲が広がり、以前は原価要素として別マスタとして登録していたものも勘定コードマスタとして登録する形に統合された。
一次原価要素に関しては、S/4HANA以前も勘定コードと同じコードでセットで登録する形だったが、二次原価要素に関しては完全に別マスタでしたが勘定コードとして登録することになったので、大きな変更となる。
COマスタについては、「SAP詳細 - CO管理会計」シリーズで詳しく紹介する予定。