アントレプレナーとコミュニティ|パネルディスカッション|#1
Bizjapanの1年間を締めくくるBizjapan End of Year Partyが12月13日に行われました!代表による挨拶と活動報告に続いて、4人の登壇者の方によるパネルディスカッションが開催されました。Bizjapanが新しい挑戦をするためのコミュニティとして移り変わってきた中で、私たちが提供するべき価値について、素晴らしいパネリストの方に議論していただきました。
以下では登壇者のご紹介と、その熱い内容を最初から最後まで全文公開します!
(本記事は前半/後半に分かれております。)
登壇者紹介
各務茂夫
東京大学産学協創推進本部
教授・イノベーション推進部長
ボストンコンサルティンググループを経て、コーポレートディレクションの設立に創業パートナーとして参画。
学位取得後には、世界最大のエグゼクティブサーチ会社の一つ、ハイドリック&ストラグル社パートナーにて日本企業のコーポレートガバナンス改革に従事。
2004年から東京大学産学連携本部(現産学協創推進本部)で教授・事業化推進部長に就任され、2013年からは現職で大学発ベンチャーや学生発ベンチャーの支援や人材育成教育に取り組んでいる。
Bizjapanの立ち上げから運営まで大変お世話になっており、今年度には各務様が主催する東大での通年講座「東京大学アントレプレナー道場」にBizjapanから3名、本年8月に東京大学の正規講義体験ゼミナール「東京大学アントレプレナーシップサマーブートキャンプ」にも3名が参加した。
齊藤想聖
株式会社リバネス
戦略開発事業部部長
慶應義塾大学大学院薬学研究科を修了後、「科学技術の社会実装」を掲げる株式会社リバネスにサイエンスブリッジコミュニケーターとして参画。
現在ではリアルテック領域の事業シーズを発掘・育成する「TECH PLANTER」の総合プロデューサーや、様々な起業家コミュニティでの支援育成に携わっている。
Bizjapanでは、プロジェクト立ち上げ前メンタリングに当たる「リバネスゼミ」の開講、プロジェクトピッチへのフィードバックなど、今年度の弊団体におけるプロジェクト創出に際してお世話になりました。
加藤翼
株式会社ロフトワーク
コミュニティデザイナー
早稲田大学を卒業後、EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社にて海外プロジェクトで業務改革に従事される傍ら、通信制美大で空間デザインを専攻され、2017年からはデザインの力で社会に新しい価値を提供するクリエイティブ・カンパニー「株式会社ロフトワーク」でコミュニティデザイナーとして活躍。
現在は「未来をつくる実験区」をコンセプトとする施設「100BANCH」や渋谷の未来共創拠点「Shibuya QWS」でコミュニティマネージャーを務める。
林志洋
EDGEof
プロジェクト・マネージャー
在学中の2011年にBizjapanを立ち上げ、東京大学公共政策大学院を卒業。
A.T.カーニーを経て、2017年渋谷にオープンしたイノベーションコミュニティー「EDGEof」の立ち上げに参画。
アントレプレナーとは情熱を持って課題を解決する人
林:今日お越しいただいた3名のパネリストの方には共通点があって、私やBizjapanもそうなんですが、みなさんそれぞれの形で新しいものが社会へ生み出されるためのエコシステム作りであったり、人材育成のような領域に携わっておられます。その中で、どういった人を育てようとしているのか、エコシステムとしてどういったものを提供したらいいのか、そういったフィロソフィーについて考えていきたいです。
加藤:100BANCHを聞いたことがある人いますか? 100BANCHっていう施設はパナソニック創業100周年の際にできた渋谷にある施設で、35歳未満の若者を支援しています。立ち上げ当初考えていたのは、次の松下幸之助のような人、100年先の未来を作っていける人をいかに作るかということです。
このような人を僕らは「活動をする人」という定義で呼んでいます。その背景にはハンナアーレントの人間の条件があって、人間の生産活動は3つ(労働、仕事、活動)にカテゴライズされています。労働は日々生きていくためにお金を得ることで、仕事は社会構造を回していくための役割を持っている生産活動。そしてその先に、本当に自分がやりたいことをやるための生産活動として活動があります。100BANCHでは活動する人を応援し、そこに集まって自分の内発的なものから未来を創っていきます。
各務:去年6月にDropboxの創業者ドリュー・ヒューストンとたまたま対談をしました。彼は2013年のMITの卒業式のスピーチで、「一人一人の価値は、自分が普段最も会っている5人の平均値である」と言いました。自分を高めるためには素晴らしいと思う人に会いにいく、どんなに遠くでも会いにいくことが重要だと思います。ここに集まるということはみなさんの平均値は高いんでしょうがそれでもさらに高めるためには、例えば海外に出向いたりなどを通して刺激を自ら求め、その刺激をさらにエネルギーにして、自分が社会にある問題解決の当事者でありたいと思えるようになる。このような社会課題に出会えるまでには時間がかかることもあります。
常に当事者でありオーナーシップを持つことがアントレプレナーの最も根源的な要素です。ビジネスの世界でもアカデミアの世界でも、みんなその共通項があります。大学の教育においても、決して会社を作ること自体ではなく、自ら問題を探し出し自分なりのオーナーシップを持ち、既存のものと比べて自分がやろうとしてることはどう違うんだろうかと問う。こういった高邁なビジョンとマキャベリズムを持ってやることが必要です。
齊藤:「アントレプレナーがどういう人か」はリバネス的な表現では「研究者である」と一言で言えます。研究者がどういう人かと言えば、各務先生がおっしゃる通り、自ら課題を設定し、その課題に対して情熱を持って科学技術で解決する人です。みなさんの研究者のイメージはもしかすると、何かにものすごく熱中してラボからずっと出てこない人かもしれませんが、そう言う人たちは共通して何かの課題や問い、ピュアサイエンスを突き詰めて、それらを社会課題の解決につなげたいという風に考えている。リバネスはそのような人と一緒に課題を解決していく会社です。だから、アントレプレナーは研究者です。
それぞれ異なる機会の提供
林:3人に共通するアントレプレナーの像は、問いから始まるか内発的なビジョンから始まるかは人それぞれだとして、課題を解きたいとかこういうものを作りたいとか達成したいものに対して、どうやったら辿り着けるのか方法を考えてパッションを持って実行する、という印象ですね。次は、みなさんがそういう人をサポートする上で気をつけていることを伺いたいです。
各務:私は大学で教員をやっていて、北村(Bizjapan現代表)や二瓶(本記事執筆者)が参加したアントレプレナーシップ・サマーブートキャンプなど、授業などを通して学生に学問だけでなく様々な違った経験を知ってもらおうとしています。8月にはインドのスタートアップにインターン枠をお願いして、ベンガルでは7社が東大生を受け入れてくれました。一辺倒に考えるのではなく、インドだったりイスラエルだったりミュンヘンだったりに行こうとするべきですね、私はAIESECの代表理事もしているので(笑)。あとは本を読む。自分の経験値を上げるために人に会う。これらの体験を大学という教育機関の中で学生に与えようとしています。
林:出会いの機会を与えるってことですね。日本だけでなくグローバルに。
齊藤:課題が見えてない人に対してどうするか、を考えています。大企業にはこういう人がたくさんいます。例えば、東南アジアに行くとインドでは空気が悪いです。ベンチャー企業いっぱいいて、でかい空気洗浄機作ってます。日本ではパナソニックなど競合他社がいっぱいいて売れないけど、インドではそれを使ってどういう風に循環型社会で課題が解決できるかっていうテクノロジーを蓄えている人がいます。日本のをそのまま持っていってもフィルターがかかってコストがかかる。ではコストを抑えるためにはどうしたらいいのか、インド工科大学とかMITの教授が現在進行形で取り組んでいます。
そういう場所に行くと「大企業のあの技術や資材が使えるかもしれない」と、現場で見た生の課題を吸収して持ち帰り、技術開発を海外に売ったりできます。人から聞くのはもちろん大事ですが、現場に行きましょう。現場では困っている人が絶対いる。現場を見ると自ずとパッションが宿る。そして日本に持ち帰り、上司を説得する(笑)。
林:原体験といえば、私もシンガポールへ行ったのがきっかけでこの団体を作ろうと思いました。日本は恵まれてる環境だなと思いました。
加藤:現場のニーズの話が出てきましたが、僕らはクリエイティブなので、プロトタイプを繰り返すっていうのが大事です。それができる環境をいかに作るか、も。100BANCHではVRのバンジージャンプを作ったプロジェクトがあり、こないだ池袋で発表会がありました。人間が宙に浮いてくるんと一回転する世界初の機構です。先生はエンジニアではなく、もともとラジオDJをやっていた人で、バンジージャンプがめちゃくちゃ好きで、曰く日本人はみんなバンジージャンプをすれば自己肯定感が上がって自殺も減り、みんなハッピーになれる!みたいな(笑)。
最初は100BANCHにバンジージャンプ台作りたいと言われて、それはさすがにリスクが…となったんですけど、VRでもできるかもしれないという雑談から、じゃあ作ってみましょうとなり、慶応の研究室に行ってエンジニアを連れてきて、浮遊感や風の当たり方を加えるためにぶら下がり健康機を試したり木製のプロトタイプを作ったりして、最終的に吊り上げ型の機構になり、これらを3ヶ月間でぐるぐるとPDCAを回しました。実際にユーザーさんに体験してもらい、そのPDCAをどれだけ早く回転させるかというのは、イノベーションを起こす上でとても大事だと思います。
林:今すごいうまく繋がってきて、最初は課題を感じていないところに対して色々なものを現場で見ながら自分が解決したいものに出会う、そんな機会を多く作るという齊藤さん。そこから、自分の環境を変えてゴールができたら、そこに向かうためにコミュニティや会う機会を作ってインスピレーションを得るという各務さん。そして、「実際にやってみよう」というときにプロトタイプをいかに早く回すか、たくさんの人が挑戦・実験をしやすい場所を作っている加藤さん。この流れはBizjapanとしても意識していきたいですね(笑)。
本記事は後半へ続きます。