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未来に新たな価値をつくる4つの政策を図解でまとめました

先日、新たな取り組みである「政策図解」を始めたnoteを公開しました。

追記:
ついに「政策図解」が本になりました。これまでnoteで書いた記事を大幅加筆して生まれました。社会のしくみがみえてくる、50の政策を図解した本です。よければぜひご覧ください!

公開後に多くの方に見ていただき、本記事の公開時点で500以上のスキをいただきました。政策をシンプルに表現することに対して、思った以上にニーズがあることを実感しました。

今回は、教育、起業家育成、規制改革、環境にまつわる「未来に新たな価値をつくる」ような4つの政策を図解し、紹介したいと思います。

前回からすこし見た目を調整し、新たなフォーマットになっています。基本的なルールは変わっていません。

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基本的な見方や、なぜ政策図解をはじめたのかなどの背景については、前回の記事を参照ください。

以下、図解です。


未来の教室

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未来の教室とは、さまざまな子どもたちが、未来を創る当事者(チェンジ・メイカー)になるための新しい教育環境を作る政策のこと。

これまでの教育は、先生から一律の内容を一斉に行うものであり、効率を重視していた。ただ、この教育方法では、不登校になった生徒のケアができなかったり、才能がなかなか発揮できないなどの問題があった。

しかし、テクノロジーの急速な発展により、教育(Education)と技術(Technology)を組み合わせれば、生徒の個性を学習ログから把握したり、その生徒の興味や学習レベルに適切なコンテンツや学び方を提供できるようになった。つまり、生徒それぞれに合った多様な学習方法を提供できるのだ。民間企業と連携することで、そうした新しい技術を取り入れつつ、すでに実証実験が行われている。

例えば、生徒に1人1台のPCを配布し、従来の教科書とはまた違ったオンラインコンテンツを提供したり、学習の効率をよくすることなどを行う。また、覚えるだけでなく、学んだことを活かしたワークを取り入れるなどの取り組みがなされている。ここでは、ただ物事を「知る」だけではなく、知った内容を元に何かを「創る」という学習が目指されている。

今後は、実証実験を元に、さまざまな自治体や学校に普及できるよう、EdTechを体感できるイベントを行う。

始動Next Innovator

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目の前の社会課題を解決したい、そのために挑戦したい、でもどうしたらいいかわからない…という人を強力にサポートしてくれるプログラム。それが「始動Next Innovator(以下、始動)」だ。

日本中から社会課題解決に挑戦したい人を募り、事業コンセプトをまとめた書類と、ビジョンや熱意を表す動画の2つをもって審査。そこで合格した人を対象とする。ちなみに、2018年の参加者の年齢を見ると、最年少は21歳、最高齢は58歳。学生や研究者、事業経験をもつ起業家など、さまざまな人を対象に募集をしているとのこと。

国内の様々な起業家が講演やワークショップを提供したり、何度か行われる事業についてのプレゼンのフィードバックをしてくれる。また、そこで選抜された人は、起業の環境が整っているシリコンバレーに行って、現地のベンチャーキャピタルや、起業家などから講義を聴いたり、事業について話をしてアドバイスをもらったり、必要なら一緒に事業をやらないかと話をすることもできる。

こうしたプログラムを通して、最終発表会まで事業コンセプトをどんどんブラッシュアップしていきつつ、知識やスキル、経験をつんで起業家として必要な素質を高めていくことができる。

このプログラムの終了後のアンケートで、「『始動』に参加した結果、何らかの形で事業化しましたか?」との質問に対し、未回答者を分母に含めて事業化率(「事業化した・既に事業化していた」「事業化する予定」の合計)を算出すると、2019 年2月末時点の総事業化率は 37%であった。内訳は、第1期の事業化率が 24%、第2期が同 27%、3期が同 31%、第4期が同 63%。時間が経つにつれて、事業化率が高まっていることが見て取れる。

上記のような手厚いプログラム内容だけでなく、無料で参加ができるのも特徴の1つだ。参加が必須のプログラムがあり、そこで日程が合う必要があるなどの条件はあるが、そこさえ満たしてしまえば応募できる。

また、始動はアラムナイコミュニティが非常に強固である。アラムナイコミュニティとは、始動のプログラムに過去に参加した卒業生同士のつながりのこと。2015年のプログラム開始から5年経ち、数百人の卒業生が出ており、プログラム実施年度に関わらず業界・世代を超えた繋がりが生まれている。自分が解決したい課題や、実現したい事業がある人にとっては、とても魅力的なプログラムではないだろうか。

サンドボックス制度

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サンドボックス制度とは、企業が、地域や期間を限定して規制を緩和し、実証実験が試験的に行える制度のこと。新しい技術やサービスを事業化する前段階に行う。そうして、政府に対して規制の緩和を求めることができるのが大きな利点だ。

昨今、AIやドローン、自動運転など、新しい革新的な技術が次々と生まれている。しかし、今の法律の多くは、そうした技術が想定されていない時代に作られたものなので、企業が新しい技術を活用して事業にしたいと考えても、古い規制が足かせになってしまう。現行の法律や規制で想定していない技術がどんどん出てきているがので、それを企業が事業に活用できるようにするためだ。

規制している方も、新しい技術についての知見がなく、データももちろんないので、緩和の判断が難しい。

規制を緩和するには判断するためのデータが必要だが、そもそも既存の規制がそもそも新しい技術を使わせてくれないので、データが集まらず、このままだと企業が新しい技術をなかなか活用できないというジレンマに陥ってしまう。

そこで、企業が実証実験の計画を作成し、それを政府が認定して、その地域において技術やサービスを試しながら知見をためて、どう規制を全国的に緩和していくかを判断するというやり方を始めたのがこの制度だ。これにより、実証を迅速に可能にしつつ、規制の緩和が根拠を持ってできる。

具体的な流れとしては、企業がやりたい実証の事業化計画を所管省庁へ届け、そこで認定を受けると、実証実験が行え、その成果を定期的に所管省庁に報告する。こうして、全国的に規制全体をどう見直していくべきかを政府が判断する。

また、認定を受けた実証実験については内閣府や各省庁で内容も見ることができる。

レジ袋有料化

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環境問題は、もうまったなしだ。たとえば、気候変動の問題はよく耳にする人も多いだろう。なにも対策をしないと地球の気温は2100年までに4度上昇し、生態系に大きな打撃を与えて作物が育ちにくくなったり、台風などの災害の被害が甚大になったりと、危機的な問題として話題になっている。

しかし、気候変動以外にも目を向けるべき様々な環境問題がある。たとえば、プラスチックごみ問題はその1つだ。プラスチックも同様、国際的に環境への悪影響が問題視されている。具体的には、海にプラスチックの買い物袋などのごみが捨てられ生態系に悪影響を与えるなどの問題だ。

日本でも、その環境問題に対応するべく2020年7月1日からレジ袋の有料化が始まった。「レジ袋」と呼ばれるプラスチック製買物袋を有料で販売することを義務づけ、これまで無料だったレジ袋が、2〜5円で販売されるようになった。

ただし、すべての買い物袋を有料にしなければいけないというわけではなく、環境に優しい材料でできている買い物袋(海で分解されるプラスチック製買い物袋など)は、有料の対象にならない。

対象となるのは、コンビニなどの小売業者はもちろん、製造業者がどこかショッピングモールなどで商品を販売するなど、本業ではなく小売業をやっている事業者も含まれる。

この「レジ袋有料化」が目的としているのは、ただレジ袋の削減だけではない。人々のライフスタイルを見直してもらうきっかけを提供すること。

日本国内のレジ袋消費量は、年間300億枚だ。マイバッグなどの他の選択肢を考えることもきっかけに、環境全般を考えてもらうことを狙っている。レジ袋の有料化に対しては、環境問題を解決するためのインパクトが小さいのではないか?というような懐疑的な声もあるが、だからといってレジ袋有料化の意味がないわけではない。取り組みやすいところから、有料化や禁止をしていくことも大事だと思われる。

・・・

ここまでで政策図解は以上です。

あとがき

今回の4つの事例を図解してみて感じたことは、政策についての情報を集めることは非常に時間がかかるということでした。

政策図解のフォーマットに沿って、政策の手段と目的は何かを検索して、HPなどに行き着いたとしても、その政策が必要になった背景や政策の意図などが十分に述べられているようなものは少なく、公的な文書や、その政策に関わった組織が出している報告書などの長文を読みながら解読する必要がありました。

また、複数の組織や省庁が関わっている事例になると、それぞれの組織がそもそも何なのか、その役割は何なのか、といったことを調べる必要がありました。

上記の作業を経て、せっかく良い政策があっても、情報へのアクセスが難しいんだなということを痛感しました。本来、その政策が知られているべき人にも、もしかしたらちゃんと情報が届いてないんじゃないか。だとしたら、政策図解で少しでも解消できるといいな、と改めて強く思いました。

フォーマットの改善について

冒頭にも書きましたが、前回の図解から少しフォーマットを調整した点があります。その主なポイントについて補足しておきます。

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1. アクセントカラーを入れる(背景色・タイトル帯など)
これまでは基本的にモノクロでしたが、アクセントカラーを規定しました。もともと白い背景だったものに、うすめの色を入れています。そうすることで各マスが際立ち、情報の視認性が高まるということと、無味乾燥な感じが減り、より親しみやすさを生む狙いです。背景色を入れたことで、これまでは補足を入れる吹き出しに枠に線がありましたが、線をなくして情報量を減らしました。

2. 政策の段の「政策」「目的」「手段」の文字をより目立たせる
政策図解は、3つの段から成り立っており、真ん中の段は「政策の段」として、政策そのものを説明するエリアになっています。中央が「政策」、左がその政策のい主な「手段」、右がその政策の主な「目的」を表すものでしたが、これまではグレーの文字で小さめに手段と目的と書いていたため、少し視認性がわるい状態でした。

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これを、このように大きく表示して、より手段と目的の位置付けを明示的にしました。

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3. 矢印上のマークをなくす
これは全体の図解のルールに関係することなんですが、これまで矢印の上に、お金のマークを入れたりしていました。

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「¥」マークです。もともとこのマークは、ビジネスモデル図解のときに使っていたものであり、名残りでもありました(※政策図解はビジネスモデル図解を応用してつくったフォーマットです)。

政策の場合、矢印の上にいろいろな意味が含まれていたり、そもそもビジネスモデルのように経済合理性をみるものではないこともあり、「お金」のマークは表示させない方が適切なのではないかと思いました。

ビジネスモデル図解では、お金以外に「モノ」や「情報」のアイコンもありましたが、それらも同じく表示させないようにします。その方がよりシンプルだと思うからです。

また、今回、アクセントカラーとしてブルー系の色を取り入れましたが、こういった色を入れることができたのも、マークの有無が関係していました。

というのも、ビジネスモデル図解のときはお金やモノや情報のアイコンにそれぞれ色があったので、アクセントカラーが規定しづらかったんですが、今回はその矢印上のマークが不要そうなので、逆にアクセントカラーを入れやすくなった、ということです。

これからも、政策図解がよりわかりやすいものになるよう少しずつ改善していきたいと思います。

プロジェクトメンバー募集

最後に、政策図解を一緒につくるメンバーを募集します。現在、政策図解を本にまとめる出版プロジェクトが進行しており、主にそのプロジェクトに関わるメンバーです。

メンバーになると、政策図解を一緒にリサーチしたり、つくられた図解をレビューしたり、こうして記事にまとめたり、打ち合わせに参加する、というようなことが発生します。基本的にふだんのコミュニケーションにはslackを使います。

どんな方に応募いただくか次第ではありますが、たとえば

・アドバイザー:政策に知見があり、レビューする人
・リサーチャー:政策を調べて、最終的に図解にまとめる人

のように役割を分けることもあるかもしれません。詳しい応募についての内容はフォームをご覧ください。ご応募お待ちしています!

以上です。

最後までお読みいただきありがとうございます。サポートは「図解総研」の活動費として使わせていただきます!