地域おこし協力隊の図解
地域おこし協力隊を図解してみました。
この図解は「政策図解」という形式で書かれています。政策図解は、1枚で政策の基本的な情報をモデル化するものです。
追記:
ついに「政策図解」が本になりました。これまでnoteで書いた記事を大幅加筆して生まれました。社会のしくみがみえてくる、50の政策を図解した本です。よければぜひご覧ください!
「地域おこし」と聞くと、なにを想像するでしょうか。
一般的には、人口減少などの「課題」を解決するために地域の魅力を再発信したり、新たな名物を打ち出したりすることが思い浮かびます。
ですが、今回紹介するのはそれとは違った視点で地域おこしに取り組んでいる事例です。
それではどうぞ。
地域おこし協力隊
過疎地域等に移住し、地域活動に取り組みながら定住を目指すもの
東京への一極集中が進む日本において、地方は人口減少・少子高齢化・過疎によるコミュニティの希薄化・担い手不足による産業の衰退など、様々な課題を抱えている。「課題先進地」とも言われるそうした地域に、新たに人を送り込むのは非常に難しいように思える。
けれど、普通なら「地域に課題が多いから人が来ない」と考えるところを、「地域に課題が多いからこそ人が来る」と覆すことに取り組んでいる政策がある。それが地域おこし協力隊制度だ。
地域おこし協力隊制度は、都市地域から過疎地域などに移住した隊員が、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PRといった地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの活動を行う。隊員はその地域の自治体から1〜3年間程度、活動の実施を任せられ、報酬を受け取る仕組みになっている。
なぜこのような政策が必要だったのか?
背景には、地方消滅に対する危機感があった。
「このまま推移すると、多くの地域は将来消滅するおそれがある」「若年女性人口が 2040 年に5割以上減少する市町村は896(全体の49.8%)」(※1)
ーー 日本の将来像に大きな衝撃を与える報告書が2014年に発表された。
それまでも地方の人口減少について指摘するレポートはあったが、「消滅」という言葉を使うことでより強く警鐘が鳴らされたのである。
こうした議論もあり、同年、政府は地方創生に政府一体となって取り組むために「まち・ひと・しごと創生本部」を設立し、目指す姿を示す「長期ビジョン」と5か年の政策目標・施策を示す「総合戦略」を策定した。日本における地方創生政策が本格的にスタートしたのはこのタイミングだと言える。
(厳密には地域おこし協力隊自体は2009年から総務省によって制度化されていたが、2014年の総合戦略にて農林水産省の類似政策「田舎で働き隊」と統合し、より強力に推進していくことになった)
当該政策は新たな視点やスキルをもつ熱意ある隊員を地域外から呼び込むことで、地域の魅力向上や、ひいてはその地域に関心をもつ人をさらに増やしていくことを目指している。
また、隊員がその地域に愛着をもって任期終了後に住み続けることも期待されている。実際に、令和2年度末に総務省が実施した調査では、それまでに任期が終了した隊員約6,500人のうち、約6割の隊員が任期終了後にも同じ地域に定住したことが明らかになった。(※2)
令和2年度現在、隊員数は約5,500人、受け入れ自治体数は1,065団体まで拡大したが、政府はさらに令和6年度までに隊員を8,000人に増やす目標を掲げている。(※3)
また、前述した任期終了後に地域に定住する割合をさらに高めるため、魅力的な就職先が地域内に少ないという課題認識をもっている。そのため、起業・事業承継の経費補助やビジネスアワードの開催などの起業支援にも注力している。
「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込み、「まち」に活力を取り戻す ーー 当初イメージされていた好循環が、隊員たちの頑張りによって各地で実現しつつあるように見える。隊員8,000人という大きな目標に向けて拡大し続けられるのか、さらに隊員以外も含めて都市部から人が来る大きな流れを生み出せるのか。今後もぜひ注目してみてほしい。
また、地域に課題が多いからこそ、その解決に取り組む魅力的な人が多く集まるし、ビジネスチャンスも多くあるだろう。あなたが住む場所を変えたり、仕事を新たに始めたりする際には、地域にも目を向けて見てはどうだろうか?
▼参照した記事
※1 日本創生会議「ストップ少子化・地方元気戦略」http://www.policycouncil.jp/pdf/prop03/prop03.pdf
※2総務省「令和2年度における地域おこし協力隊の活動状況等について」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000740043.pdf
※3総務省「地域おこし協力隊の拡充(6年後に8千人)」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000555575.pdf
説明は以上です。
今回の記事以外にも、様々な事例を図解で紹介しています。「政策図解シリーズ」というマガジンでこれまでの政策図解の記事がまとめられているので、よければ見てみてください。フォローもしていただけると嬉しいです。
https://note.com/bizgram/m/mb0dcc005d7c0
以下、今回の記事のクレジットです。
図解&原稿:光武佳寿美
レビュー:沖山誠、近藤哲朗
最後までお読みいただきありがとうございました!