「徹底研究!!GAFA」に寄稿した内容を無料公開してみた
ビジネス図解研究所(通称:ビズケン)のさっしーです。
ムック本「徹底研究!!GAFA」に、GAFAのサービスのビジネスモデル比較について寄稿しました。実は今回ビズケン主宰のチャーリーさんは監修のみで、ビズケンのメンバーが中心となって書き上げています。
そして、書籍「ビジネスモデル2.0図鑑」を全文公開したように、今回ビズケンが書いた部分を無料公開することにしました。せっかくメンバーが協力してつくった内容なので、より多くの人に読んでいただきたいという気持ちです。無料公開を快諾いただいた洋泉社さん、ありがとうございます。
「徹底研究!!GAFA」には僕たち以外にも様々な方が寄稿しており、GAFAについて多角的に知ることのできる一冊になっています。内容を読んで興味を持った方は、ぜひお買い求めください。
GAFAのサービスのビジネスモデル比較
GAFAの市場支配力が大きいということは、多くのユーザーに選ばれているということでもある。いま注力しているサービスから、GAFAのビジネスモデルを読み解く。
近藤哲朗(チャーリー)&ビジネス図解研究所
インターネットビジネスの4巨人GAFA各社の売上構成を比較してみると、企業全体の特徴が見えてくる。
Appleは、パーソナル・コンピューターのメーカーとしてスタートしたときから一貫してハードウェア中心のメーカーであり続け、今もiPhoneを初めとするデバイスの売り上げが主体である。
Amazonはオンライン書店から出発し、生鮮食料を含むありとあらゆる種類の製品を取り扱う世界最大級のEC小売業者だ。
Googleは検索をはじめとしたウェブ上でのサービスを提供しながら、広告をビジネスとして確立し、ほとんどの収入を広告から得ている。
Facebookは世界最大のユーザーを抱えるSNSだが、Googleが取得しにくい学歴や人間関係のデータを得ることで、こちらも広告からの収入を主体としている。
GAFAはそれぞれユーザーの体験価値を上げ、顧客ベースの維持拡大を図るため、将来に向けた布石を打っている。そうした意欲的な事業を取り上げることで、各社の方向性が見えてくるのではないかと考え、ビジネスモデル図解を試みた。
Google Homeに見るGoogleのビジネスモデル
売上の9割はGoogleの広告事業
「世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすること」を理念に掲げたGoogleは、1998年にインターネット上で検索サービスを提供する会社としてスタートした。
ユーザーが検索したワードに応じた広告を出すというビジネスモデルによって、現在では世界最大の広告業者となった。2015年には親会社としてAlphabetを設立し、Googleは子会社となった。
GoogleはGoogle検索やGmail、YouTubeなどの事業を担当しており、自動運転やヘルスケア、宇宙事業などは別の子会社が担当と事業を切り分けている。ただ、Alphabetの売上の9割は依然としてGoogleから上がってくる広告事業が占めている。
Googleは自らコンテンツを作らず、インターネットをメディアとして機能させる仕組みをつくることで、高効率の広告ビジネスを展開している。これを成り立たせるGoogleの強みとして世界最大のユーザーベースを持つ検索エンジンのほか、各種サービスを展開して利用者を増やし、彼らをオーディエンスにできるという点がある。
また、このようなサービスはユーザー体験を向上させ、Google関連サービスの利用価値を上げる。それによりGoogleは取得するデータの量と質を増やし、広告効果を高めることで広告主のさまざまなニーズに応えるという循環を生む。
そしてGoogleは、ユーザーに最適化された広告を出せる状況を作り、クリックなどのアクションという成果に対して報酬をとるという仕組みを生み出し、広告のビジネスを塗り替えた。
ホームコントロールのサービス展開を狙う
現在、GoogleはGPSによる位置情報などオンラインとオフラインにまたがる方向でのデータ取得を拡大させている。Googleは得意とする機械学習を使い、ユーザーからの問いかけや依頼に対応するサービスを提供しており、その機能の中核にはGoogle Assistantがある。これは、AIを用いた機械学習や自然言語解析、クラウド技術などを用いたサービスだ。
今回図解するビジネスモデルは、Google Assistantを搭載したスマートスピーカー、「Google Home」である。
Google Homeは2018年の第1四半期に、全世界での出荷台数がライバルであるAmazon Echoシリーズを上回る約320万台となるなど、堅調な売上を誇っている。Googleがスマートスピーカー事業を推進している理由については、以下のようなものが推測できる。
まず消費者の家庭内にデバイスを設置することで、プライベート空間における検索行動データのほか、リッチな音声データの取得、音声認識、会話的応答などの品質を上げられる。問いに対する答えや機器のコントロールの便利さによってGoogle Assistantの利用価値を経験させること、話すという簡易な入力方法で、高齢者や子どもなどへユーザーベースが拡大するメリットもある。
今後のGoogleの事業展開としてはディスプレイ端末なども含めた新たなメディアとして、音声も含めた情報サービスをBtoB中心で有料化できる可能性がある。またホームコントロールのサービス展開、Google Assistantによるエコシステム(スマホ、PC、タブレット、時計、ヘッドホンなど)の形成も考えられる。
Apple Watchに見るAppleのビジネスモデル
新たな可能性を広げたApple Watch
1974年にジョブズ、ウォズニアックの二人のスティーブらによって設立されたApple Computer Inc. は、パーソナル・コンピューターを主軸に据えたハードウェアの製造・販売を中心に行っていた。その後はiPodとiTunesで音楽のダウンロード販売への道を切り開き、ジョブズが「電話の再発明」であるというiPhoneを発売した2007年、社名をAppleに変更した。
iPhoneのヒットにより、同社は2018年に世界初の株式時価総額1兆ドル企業となった。2017年の売上比率では、iPhoneが61%を占めている。
同社は数多くの熱狂的なファンを抱え、面積当たりの売上が2011年に全米一となったApple Storeを持つなど卓越したブランディング、マーケティング力を誇りつつも、ビジネスの様態としては一貫してハードウェアメーカーであり、NPU(ニューラルネットワークを組み込んだ人工知能専用のプロセッサー)を含む自社開発のチップセット、OS、関連アプリケーションなどを備えた垂直統合ビジネスである。
iPhoneに続けて発表されたApple Watchはウェアラブルデバイスとして「時計を再発明」したものであり、スマートフォンとの連携によって真価を発揮する。その1つが、Appleが強調している通り、健康管理である。
iPhoneにはセンサーがあり、iOSによって睡眠や身体情報を記録、管理する機能を備えている。そして、Apple WatchにもGPS、気圧高度計、心拍センサー、加速度センサー、ジャイロスコープ、環境光センサーを備えていた。
Apple Watchを軸に健康・医療分野へ傾注
ユーザーはApple Watchを身につけるだけで、いろいろなデータを自動的に得られ、自らの健康管理をよりスマートに行いやすくなる。ランニング中など、iPhoneよりもより幅広い状況でデータを収集することができる。Apple Watch Series4からは電気心拍センサーが加わって、心電図の計測が可能となり、FDA(アメリカ食品医療薬品局)の承認を得たことで、より医療用途での応用可能性が広がった。
健康関連アプリ開発のために、Appleは垂直統合展開の強みを活かし、一般ユーザー向けのCareKit、医療関係者向けのResearchKitという2つの開発キットをオープンソースのものとして提供している。医療用でも、すでにいくつかの研究機関が協力し、自閉症の診断、発作の予知、糖尿病などのアプリが開発されている。
アップルの秀でた点は、ユーザーを医療研究の共同参加者として位置づけ、データ提供に社会的な意義を与えていることである。アップルという企業と共に社会貢献しているというユーザーの自覚が、結果としてアップルのブランド価値を高める仕掛けになっている。
Appleの健康・医療への傾注が、販売台数の増加以外に将来どれだけの旨味のあるビジネスの展開となるかは今のところわからない。他のスマートウォッチでも同様な応用が広がる可能性もある。しかし、Apple Watchはその先駆けを作ったことで、健康でありたい、あるいは病気とうまく付き合いたいという人々や、医療・健康への貢献を果たしたい医療従事者・研究者にとって、象徴的な商品になることは疑いない。
Internet.orgに見るFacebookのビジネスモデル
インターネット後進地域でアクセス環境を提供
Facebookは「誰もが安心して情報を共有できる、オープンでつながりのある世界を実現したい」というミッションのもと、ユーザー数18億人を抱える世界最大のソーシャルネットワーキングサービス企業である。他の代表的なサービスには、Instagram、WhatsAppがあり、それぞれユーザー数は1億人を超える。
GAFAの中で、同社を特徴づけるのは、取得するデータが、ユーザー自身が入力した詳細な個人情報にひもづいていることだろう。それによりFacebookは効果的なターゲティング広告を展開するプラットフォームとして機能する。正確で質の高いターゲティング精度によって広告の出稿量や配信単価が上昇したことにより、今やFacebookの営業利益率は46%(2017年時点)と、GAFAの中でも最も高い水準となっている。
近年、同社は野心的な事業に取り組んでいる。それは、「Internet.org」だ。
「Internet.org」とは、インターネットのない生活を送っているアフリカやアジアの人々に向け、インターネット利用の普及を目標とした事業である。
Facebookは他の企業や地元の通信事業者などと協力し、2013年8月よりエクスプレスWiFiというFacebookが提供するインターネット接続サービスと「Free Basics」というウェブサイトを提供している。「Free Basics」内にはFacebookをはじめとしたさまざまなサービスが存在し、それを利用する限りは通信料金が発生しない。
Facebook社は、2018年3月で累計1億人に「Internet.org」の取り組みを通じてインターネットアクセスを支援したと発表している。Facebookには、この事業により、ユーザー数を増やすことで広告その他のビジネス拡大に繋げるという目論見があると思われる。
地球上の最奥地にまでインターネットアクセスを
しかし、独自のアクセス網に加え、「Free Basics」は利用できるサービスや閲覧できるサイトをFacebookの判断によって決定しており、ユーザーを囲い込むことができる。こうした囲い込みに対して、Internet.orgはインターネットの公平性、オープン性を妨げているという批判を受けており、2016年にはインドからの撤退を余儀なくされた。
この取り組みに欠かせないのが、Facebookへ協力する企業や通信事業者らの存在である。彼らにとって、地域に通信利用者が増え、将来の収益の源泉になることが「Internet.org」に参加する動機である。通信事業者は、ユーザーから本来得られるはずの通信料を負担しているほどだ。
2018年8月、同社は別々だった自社のインフラストラクチャとブロードバンド事業全てを「Facebook Connectivity」という新しい上部組織に集約した。
通信インフラ拡大の為、小型衛星群をつかいグローバルブロードバンド環境をつくる計画なども含まれ、新産業や雇用創出につながる可能性もある。Facebookはこうした活動を通じて、ウェブ・プラットフォーマーとして、利用者と開発者をつなぐ存在になりつつある。
Facebookは、今後もこの取り組みを拡大させるだろう。将来的にFacebookは自社で開発しているソーラーパワードローンAquilaや衛星を始め、先進テクノロジーを使って地球上の最奥地にまでインターネットアクセスを提供し、理念とビジネスの両立に挑戦している。
Amazon Goに見るAmazonのビジネスモデル
顧客データがサービスの購買につながっている
Amazonは1995年にオンライン書店として、インターネットのEコマース(EC)のビジネスにいち早く参入し、その後は精力的に多角化を推進してきた。その方向性は、EC小売りから実店舗へ、モノの販売からコンテンツ販売および決済サービス、そして物流、広告、クラウドサービスを通じたBtoBビジネス、さらには関連会社による宇宙事業への広がりである。
これらのビジネスの背後に、さまざまな形でテクノロジーが絡んでおり、今や世界有数のテクノロジー企業の側面も持つ。
これらの事業拡大の推進力となっているのは、市場からの資金調達と、利益率の高いクラウドコンピューティングサービス(AWS)が中心である。それに世界で1億人を突破したと言われるプライム会員からの年会費(アメリカでは119ドル)、Google、Facebookに続く3位ながら現在伸びている広告収入などが加わる。
Amazonは「顧客第一主義」を標榜し、購買の利便性・快適性(顧客体験)を最大化するようにテクノロジーを取り入れてきた。とりわけ、新規購買に大きく影響するレコメンデーションシステムを進化させるべく、ユーザーレビューの他、顧客IDに紐付けて、可能な限り顧客の行動データを取得しようとしている。データはオンラインサイト上での行動データ加え、自社のガジェットやアプリを通じて取り込まれる。最近では、 Amazon Echoによる一種のエンターテインメント性を提供しつつ、音声による取得を行っている。
ライバルたちと比べ、Amazonの保有するデータは全て商品・サービスの購買につながっている点が強みだ。そのことが、自社の売上げ増大のみならず、Amazon利用者をオーディエンスとした広告ビジネスの拡大に直結する。
陸海空の輸送網を整備
巨大な輸送業者への道
2018年1月、シアトルにレジ無しコンビニAmazon Goが開店した。同年10月現在6店舗あり、2021年までに3000店舗を開業すると見られる。
今回、Amazon Goに着目した理由は、デジタルシフトと呼ばれる、オンラインを起点にしたオフラインへの進出、オムニチャネル化という流れの典型であること、それが既存の小売販売業に今後与えるインパクトが極めて大きいことによる。
Amazon Goの入店にはAmazonの顧客IDとアプリのダウンロードが必要だ。レジで並ばなくてもいいという利用者への利便性と引き換えに、店内に数多くのカメラやセンサーを用意して行動データを徹底的に取り、顧客IDに紐付けてオンライン・オフライン両面での顧客体験向上と購買確率を上げようとする。
生鮮食料品チェーンのホールフーズを買収して440店舗を手にした今、Amazonはリアル店舗においても、競争力を発揮していくものと思われる。
利便性・快適性につながるもう一つの要因は買った品物が届くまでの時間の短縮化だ。大規模な物流拠点を用意し、ロボティクスを駆使して自動化するほか、拠点に配置する専用ロッカー、そして最近ではスマートキーを使い、留守中でも家の中にスタッフが入っても問題なく配達できる仕組み(Amazon Key)を作っている。
今後は商品の配送を自前の航空機・ドローン、トラックや自動運転のクルマ、船舶による陸海空の輸送網を整備して行い、大規模な輸送業者になる可能性がある。
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「徹底研究!!GAFA」に寄稿した内容は以上です。今回の無料公開を読んで、ビジネスモデル図解に興味を持っていただけたら嬉しいです。
GAFA図解プロジェクトクレジット
プロジェクトリーダー:さっしー
図解・原稿
Amazon:さっしー
Google:ロンドン
Facebook:ebi
Apple:はかせ
全体制作&レビュー
図解:きょん
原稿:bun
図解資料制作: ばっかす、Andy
全体監修: チャーリー
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