【BI-TO #03】備前焼×BAR 文化を囲んで人が語らう移動式GALLERY BAR(賀儀山泰志さん)
時は夕暮れ。「酒場」の看板と共にどこからともなく現れる、軽トラを改装した数寄屋建築風の移動式GALLERY BAR「Kagiyama Gallery Bar」。 訪れた人同士、和の空間で備前焼のうつわで乾杯し、話に花を咲かせます。 その中心に姿の見える、店主・賀儀山泰志さんにお話を聞いてみました。(文:南裕子、写真:小川雄大/賀儀山泰志)
――移動式BARを始めたきっかけは?
僕は玉野市出身なのですが、田舎が嫌で一度は外に飛び出して、海外で長く過ごしていました。でもやっぱり日本のものは素晴らしいと感じるようになり「日本のもの、特に地元岡山のものを外の人に知ってほしい」「同時に、地元の人もその価値を認識し、守っていく社会になってほしい」と思い、「土着の良いモノを集めた、文化人が集う場を作ろう」と、この移動式BARを始めました。
――空間にも、お酒や器にもセンスを感じます。賀儀山さんのモノ選びのこだわりは?
瀬戸内の良い酒・良い肴・備前焼など「地元のいいもの」を扱うこと。この軽トラの数寄屋部分も、岡山の宮大工・杣耕社さんの施工によるものなんですよ。
あとは「自分自身がいいと思うもの」を選ぶこと。モノのデザインが洗練されてるのも重要だけど、そのモノが持つストーリーや意味合いも大事ですよね。あとは、やっぱり人。作り手と会って、話して、価値観や人間性に魅力を感じたモノを選んでいます。
――どんな場所で開店していますか?
玉野、倉敷、東京、京都、備前など、全国津々浦々です。備前では、伊部のBIZEN gallery Kaiやでの出店が多く、先日は夢幻庵でも出店させていただきました。若手の備前焼作家や、地元の方、観光客の方、時には海外の方にも来ていただいてます。
――みなさんどんな風にお過ごしですか?
お酒が入って盛り上がると、やっぱり備前焼の話に。作家さん本人がいることも多いので、作品について聞いたり、「今、ちょうど窯炊きしてるよ」と窯の案内に行くことも(笑)。
作家だけになるとちょっと話が深まって、備前焼のこれからとか仕事の話になりますね。窯の炊き方、海外展開の仕方、プロダクトっぽい製品の作り方……話題はいろいろです。それぞれに個性があるので、そのカラーががはじけてカラフルな雰囲気になることもあれば、いろんな色が重なりグッと濃い話になることもあります。
――賀儀山さんが備前焼や工芸を好きになったのは?
20代の頃です。料理やその器に関心があって、ヒッチハイクで日本各地の工芸の産地を旅してました。珠洲焼で有名な能登半島とか。珠洲といい備前といい、あの土っぽい質感が僕は好きなんでしょうね。
あとは「大地の芸術祭」にボランティア参加して「アートで世界と田舎が繋がれる」と衝撃を受けたことかな。
――アートで世界と田舎が繋がる?
新潟の十日町という小さな田舎町に、海外からいろんなアーティストやVIPが次々やってくるんですよ。その人たちと地元の人が、当たり前のようにその地域の文化について楽しく話をしてる。それが衝撃で。以来「アートや文化を媒体にして世界と地方が繋がる」が僕にとって一番しっくり来てるテーマです。
――文化を通じて繋がるって素敵です
となると、やっぱり”媒体”となるモノのクオリティって重要。いい媒体でないと、いい人と人が出会わないから。それと、まず同じテーブルを囲むって大事ですよね。1つのテーブルを囲って、お酒を飲んで、地域のセンスある人・やる気ある人たちがここに集まって、これからを語りあう場になってくれたらいいと思います。
――気になるこれからの展開は?
新たな挑戦として和船でのギャラリーバーや固定店舗での角打ちギャラリーバーを検討中です。移動式ギャラリーバーを含め協力者、また、角打ち用物件を探していますので気になる方・心当たりのある方はお気軽にご連絡ください!
「BI-TO」紙面でほかの記事もチェック!
この記事は、岡山県備前市の<人>と<文化>を見つめるローカルマガジン「BI-TO」に掲載されたものです。こちらから誌面もご覧いただけるのでぜひチェックください!
■目次
・ISSUE#03 備前焼から広がる世界
【AIR×備前焼】国際交流で広がる、備前焼の可能性
【産地交流×備前焼】珠洲焼の歩み、備前の地で前へ
【未来の社会×備前焼】陶器ごみから生まれた再生備前「RI-CO」
【GALLERY BAR×備前焼】文化を囲んで人が語らう移動式GALLERY BAR
・「大人のしゃべりBAR」開催レポート
・Do you know…?
・巻末コラム:肇さん、備前焼でお酒が美味しくなるって本当ですか?
2024年9月20日発行
企画・発行:BIZEN CREATIVE FARM
制作:南裕子、藤田恵、松﨑彩、吉形紗綾、加藤咲、池田涼香、藤村ノゾミ