地銀の仕組み金融戦略
仕組み金融の魅力
最近、地銀がストラクチャードファイナンス(仕組み金融)に注力しているというニュースを耳にしました。この記事では、仕組み金融の概要とその魅力、そして成功のためのポイントについて解説します。私自身、地銀の取り組みを見て感心し、他の企業でも再現可能な方法を考えてみました。
仕組み金融とは
まず、仕組み金融について簡単に説明します。仕組み金融は、融資先の事業の将来的な収益性を基に融資を行う手法です。通常の融資とは異なり、プロジェクトファイナンスやLBOローンなどが代表例です。この方法では、再生可能エネルギーや不動産などの資産が生み出すキャッシュフローを裏付けに融資を行います。
地銀の取り組み
群馬銀行や滋賀銀行などの地銀は、この仕組み金融に大きく注力しています。群馬銀行は2023年3月期には647億円だった残高が、この1年で倍増し、1307億円に達しました。滋賀銀行も、24年3月期の1200億円から、29年3月期には3000億円まで拡大する計画です。これらの地銀が仕組み金融に力を入れる背景には、高い利回りがあります。
高利回りの魅力
通常の貸出金利が1%前後であるのに対し、仕組み金融では2~3%、LBOローンでは3~5%の金利が取れるため、地銀にとって非常に魅力的です。大和総研の内野逸勢・主席研究員も、「効率的に自己資本利益率(ROE)を上げるために仕組み金融に注力する地銀が増えている」と述べています。
成功のポイント
仕組み金融で成功するためのポイントは以下の通りです。
リスク管理:高い利回りが魅力ですが、その分リスクも大きいです。適切なリスク管理体制を整えることが重要です。金融庁もこの点を重視し、モニタリングを強化しています。
スキームの精査:山陰合同銀行のように、案件ごとにスキームを精査し、厳選することが求められます。滋賀銀行も、融資対象や年限、外貨建てなどの分散を図っています。
規制への対応:2025年3月から本格導入される国際的な資本規制「バーゼル3」に対応するため、リスクウエートの引き上げに備える必要があります。
他社での再現
地銀以外の企業でも、仕組み金融の成功を再現するためには、上記のポイントを押さえることが重要です。特に、リスク管理と規制対応は欠かせません。また、融資先の事業収益をしっかりと評価し、安定したキャッシュフローが見込めるプロジェクトを選定することが成功の鍵です。
結論
仕組み金融は高い利回りを狙える一方で、リスクも大きいため、適切な管理が求められます。地銀の成功事例を参考にしながら、他の企業でも同様の手法を取り入れることで、効率的な資金運用が可能になるでしょう。
ストラクチャードファイナンス(仕組み金融)の代表的な失敗事例
1. サブプライム住宅ローン危機(2007-2008)
サブプライム住宅ローン危機は、ストラクチャードファイナンスの失敗が引き金となった最も有名な事例です。具体的には、サブプライムローン(信用力の低い借り手向けの住宅ローン)が担保として使用されたモーゲージ担保証券(MBS)やコラテラライズド・デット・オブリゲーション(CDO)といった複雑な金融商品が大量に発行されました。
問題点: サブプライムローンの借り手が返済不能となり、これらの証券の価値が急落しました。複雑な仕組みにより、リスクが広範囲に分散され、どの金融機関がどれだけのリスクを抱えているのかが不透明でした。
結果: 多数の金融機関が巨額の損失を被り、リーマン・ブラザーズの破綻や世界的な金融危機を引き起こしました。
2. エンロン事件(2001)
エンロンは、エネルギー企業としての業績を粉飾するために、ストラクチャードファイナンスの手法を悪用しました。
問題点: エンロンは、特別目的事業体(SPV)を設立して負債をオフバランス化し、実際の財務状況を隠しました。これにより、投資家や規制当局を欺き、株価を不当に高く保ちました。
結果: 企業の実態が明るみに出ると、エンロンは倒産し、多くの投資家や従業員が大きな損失を被りました。
3. アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)のCDS問題(2008)
AIGは、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)という金融商品を大量に引き受けていました。CDSは、債務不履行リスクを他の投資家に転嫁する保険のようなものです。
問題点: AIGは、リスク管理が不十分なまま膨大な額のCDSを引き受けていたため、サブプライムローン危機により大量の保険金支払い義務が発生しました。
結果: AIGは巨額の損失を被り、最終的には米政府からの大規模な救済措置を受けることとなりました。
これらの事例は、ストラクチャードファイナンスが持つ潜在的なリスクと、その管理の重要性を如実に示しています。複雑な金融商品は高いリターンを生む可能性がある一方で、そのリスクも同様に大きく、適切なリスク管理が求められます。
引用: 2024/06/05 日本経済新聞 朝刊 8ページ 1
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