財務省が共同通信に書かせた「国の借金1,000兆円」の記事について、西田昌司参議院議員の意見

将来税収で返済する必要がある国の借金「長期債務残高」が、3月末時点で初めて1千兆円の大台を超えそうだ。高齢化に伴う社会保障費の増加などの歳出(支出)拡大に歳入(収入)が追い付かず、慢性的な財源不足が続いているほか、新型コロナ対策の巨額支出も借金増に拍車を掛けた。債務残高はここ10年で1.5倍に急増。金利が上昇した場合の利払い費負担が財政運営の重荷となる懸念がある。
 国の長期債務残高は、国債や借入金などの借金全体から、貸し付けの回収金が返済に充てられる財投債などを除いた金額。2011年度末は694兆円だったが、今年3月末時点で1030兆円に達する見通しだ。

https://nordot.app/882197533362667520


(1)前提知識


2022年3月15日に西田さんと日銀、財務省との問答をまとめているので、まずはそれを見ておいてください。


信用創造とは、銀行は集めた預金を元手に貸出しを行っているのではなく、銀行が貸出しの際、借り手の預金口座に貸出金相当額を入金記帳することで、銀行保有のベースマネーといった原資を事前に必要とせずに、何もないところから新たに預金通貨を生み出すことである。
この預金通貨は借り手が返済すると消滅する。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BF%A1%E7%94%A8%E5%89%B5%E9%80%A0


信用創造のポイントは、原資は何かという点。
民間銀行から民間企業(民間人)が100万円借りた場合
民間企業(民間人)の預金通帳には100万円が記帳され
その100万円を自由に使えることになります。
では、民間銀行は、その100万円をどこから持ってきたのか?(原資は何か?)

一般には、他の民間から集めた預金が原資になっていると思われていますが、実際には、そのような仕組みになっていません。
入金記帳という手続きのみで(お金の移動なしに)
借主の銀行口座に100万円が発生しています。これが信用創造です。

とりあえず、民間から集めたお金を原資としていなければ
信用創造
と考えておいてよいと思います。

この知識を前提に国の財政出動を考えてみると
国が国債を発行し、民間銀行等が国債を買い取って
国は、そのお金で予算を執行しています。
例えば、公共事業を行う場合
その公共事業を請け負った土建会社や、その社員などの銀行口座に予算として使った分の預金が発生することになります。

では、この土建会社関係で発生した預金の原資は何か?
民間銀行が国債を買い取って、お金を出したので
民間銀行に、その原資は何ですか?と確認することになります。

民間銀行は、その原資は民間から集めたお金ではなく
潤沢にある日銀当座預金で購入していますと答えます。※

すると、民間から集めたお金を原資とせずに
土建会社関係で預金が発生
したことになります。

これは、銀行の借り入れと同じであって
国の財政出動も信用創造ではないかという話です。

一応、ここまでは、日銀担当者も
形式的に信用創造であると認めています。


現在、日銀は異次元緩和政策を行っており、長期国債金利を抑える目的で買いオペをしています。日銀が買いオペするたびに、民間銀行の日銀当座預金が増えるので、民間銀行は余裕で国債を購入できます。

信用創造が生じるパターン
①民間が銀行からお金を借りる(民間に預金が増える)
②政府が財政出動する(民間に預金が増える)

現在の日本は民間企業、民間人ともにお金を借りなくなってきている。
特に民間企業は、お金が余っている。
つまり、①による信用創造が増加していない。

そして、政府も緊縮財政を続けていて
②による信用創造も増加していない。

そりゃ、不景気になるよ、というのが前提の話になります。
①民間の借り入れが期待できないなら
②政府が財政出動して信用創造しろよという話です。


(2)国債の償還はどのように行っているのか?

https://www.youtube.com/watch?v=vnjDuA8IVJg


共同通信の記事には、
国の借金(国債の償還)は、将来の税金で返済すると書かれている。
しかし、これは大きな間違い。

2022年3月末時点で、国の借金が1000兆円あり
それを将来の税金で返済するということは
(前提で話した信用創造の仕組みを前提とすると)
民間の預金残高をゼロにするということ。
しかし、国債残高をゼロにしようとやってる国はどこにもない。
国債は、残高として残っている。

では、返済(国債の償還)はどうやっているのかというと
実際には、どこの国でも、日本でも
「借換債」の発行を行って対応している。

借換債 (かりかえさい)
国債や地方債、社債など既発債の償還額の一部を借り換えるために新規発行する債券のこと。
国債の借換債は、普通国債の一種で、国債整理基金特別会計において発行され、その発行収入は同特別会計の歳入の一部となります。国債の借換債の発行に当たっては、その発行限度額について国会の議決を経る必要はありませんが、これは、建設国債や特例国債(赤字国債)のような新規財源債と異なり、債務残高の増加をもたらさないという借換債の性格に基づくものです。

https://www.daiwa.jp/glossary/YST2309.html

仮に10兆円の国債の償還日が来たら、
国は、新たに10兆円借換債を発行すればよい。
そして、民間銀行が借換債を購入する場合には
民間から集めた預金を使って購入しているわけではなく
日銀当座預金を使っている。

結論
国の借金(国債の償還)は、借換債で対応している。
将来の税金で返済すると書いた共同通信の記事は間違いである。

もしも将来の税金で返済することが事実であれば
国の借金が減った分だけ
民間の預金が減るということ。
そんなことしたら、経済は潰れてしまう。

国債の発行(+予算執行)は、民間の預金残高を増やす。
逆に国債を税金で償還させれば
(税金は民間から吸い上げたものだから)
その分、民間の預金残高が減ることになる。

そんな馬鹿なことは実際にはやらずに
借換債で国債の負債を償還している。
繰り返しになりますが、
「国債の償還を将来の税金で返済する」は嘘。


(3)利払い費について

国債が1000兆円だとすると
利払い費は9兆円くらい払うことになると思う。

共同通信の意見
今は、金利が安いからこの程度で済んでいるけど
もしも金利が1%上がったらどうなるのか?
1000兆円だと10兆円支払いが増える。
そうなると、国債の発行が多いと利払い費が増えるので
やっぱり財政の健全化をするべきだ。

国債の償還は、借換債で対応できるが
新たな利払い費だけは、別途払わなければいけないだろと。
それはどうするのかという話になります。

西田先生の返答
現在、1000兆円の国債残高があるが
そのうちの半分にあたる500兆円は日銀がもっている。
つまり、利払い費の半分は日銀に払うことになる。

では、日銀に払った利払い費はどうなるのか?
日銀を運営していく上で様々な経費が生じるが
それを除いた金額は、全て国庫に入ることになっている。
だから仮に国債を500兆円分所有していて
5兆円の利払いを日銀が受けたとしても
経費等の支出を抜けば、現時点では、半分ほど国庫に入ることになる。
(詳しくは、別の動画で日銀が説明しています)

では、民間がもっている国債の利払い費はどうなるんだ?
例えば、民間銀行に利払い費用が入れば、民間銀行の所得が増える。
当然、その利払い費用には税金が生じて、
3割以上、地方税も入れたら4割くらいになることもある。
つまり、利払いを受けた一部は、税金として国庫や、地方に入っていくことになる。

従って、利払い費が増えるからと言って
それで政府が利払いを支払えなくなることもない。

(4)国債残高

現在、1000兆円の国債残高があったとしても
その半分の500兆円を日銀が持っている。
日銀に利払いした分の半分は戻ってくるのだから
それほどの負担とはいえない。
実際の国債残高は500兆円と考えることもできる。

アベノミクスで異次元の量的緩和をして
結果として、日銀が国債を多く持つようになっただけ。
実質的には国債残高は500兆円にすぎない。
国の財政的な負担は増えていない。


最後に
今回の共同通信記事について4月11日の
参議院決算委員会で財務省に問いただすとのことです。


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