形成外科医推奨のスキンケア③【ホームケア編】
私が推奨するスキンケアも第3弾となりました。今回は「ホームケア編」です。
「ホームケア」というと化粧水をつけたり保湿クリームをつけたりと最低限のことはされている方が大半と思います。今回取り上げるのはあくまで「メディカル(医療)」による「ホームケア」になります。
本来の理想としては、クリニックに行って、医師の管理下で治療を受けることです。なぜならば、それがもっとも効果が期待されますので。
しかし、毎日それを行う事は現実的ではありません。
そこで、クリニックや病院で処方してもらった薬を利用し、肌のお手入れやスキンケアを自宅で行うことができるのです。その上で、時々クリニックで治療を行えば、相乗効果でとても良い結果が得られるはずです。
今回は最近人気が急上昇してきた、自宅で行う医療用スキンケアシステム、ZO SKINHEALTH (ゼオスキンヘルス)のお話をしましょう
医療用ホームケアとは
ゼオスキンの話をする前に、お薬の豆知識として知っておいて頂きたい情報です。
日本での医薬品の販売に関しては薬事法でしっかり管理され、売り手は制限されています。薬品を管理しているお役所は「厚生労働省(厚労省)」になります。
お化粧品や石鹸、洗剤、あるいは食品に類するものは、その売り手はだれでも良く、また、販売場所も制限されていませんが、副作用が懸念される医薬品に関しては、一部を除き医師が処方箋で管理することになっています。
「効果がある、ということはその分副作用もある」というのが薬剤の考え方の大原則になります。
ドラッグストアーで売られている「風邪薬」や「整腸剤」などはだれでも購入できますが、それは売り手が薬剤師だからです。しかし、抗生剤やステロイド剤など、医師が患者の症状や病状に合わせ、説明をした上で処方するものは、医師との対面(診察)が必要です。これらのお薬は第1種処方薬といわれています。
ゼオスキンをはじめとする医療様スキンケアには、この第1種薬剤が含まれているため、医師の診察、診断、処方が必要になるのです。
ゼオスキンとは
みなさん、ドクターオバジという名前をどこかで聞いたことがありませんか?
彼はアメリカのハリウッドセレブ御用達のスキンケア専門医です。ZOスキンヘルスとは、このスーパードクターのお名前 Dr. Zein Obagi の頭文字をとって名付けられた医療用スキンケアです。
ゼオスキンはObagi医師の35年以上にわたる研究に基づき、開発されたスキンケアプログラムであり、販売は医療機関でしかできません。
医師の診断を最初に行い、患者様のお肌に合わせて化粧品の選定、使用法の指導など、最初だけ医療機関に来ていただく必要がありますが、それ以降は基本的に自宅でのケアができる、理想的なスキンケア方法です。
ゼオスキンと私の出会い
20年ほど前、私は、私の師匠の1人である当時皮膚科の大御所であった戸田医師にトレチノインとハイドロキノンによるシミ治療法を伝授してもらいました。この治療法は当時としても決して新しい治療法ではなく、1970年代に東京大学で行われていたレシピによるものでした。
この頃のレーザー機器はものすごく高価でとても一般のクリニックが保持できるものではなく、我々にとって効果のあるシミの治療はこのハイドキノン・トレチノイン療法以外ほぼ皆無でした。
こんな中で、トレチノイン・ハイドロキノン・ステロイド治療は驚くほどの効果を示したといわれています。
とはいえ、この治療法、場合によってはシミが取れるどころか、それが傷跡になるような大きな副作用が存在していので、かなり慎重に処方する必要があり、当時の私は恐れながら、これらのお薬を使っていたことを思い出します。
当時を振り返れば、冷凍されたトレチノインの試薬を乳鉢で砕き、微量天秤で重さを測りながら所定の基剤に混和させ0.1%の私製トレチノインを作成していました。ハイドロキノンも試薬を希釈し、5%と10%、20%のものを作成していました。当初は基剤が荒く、使い勝手がとても良いとはいえない代物でした。
施術した患者様からも、皮膚が真っ赤になる、皮膚がボロボロになる、かゆみや痛みがでる、といった、クレームばかりで、この薬を続ける方はわずかな方達だけでした。その、わずかな患者様の皮膚の変化は驚くものがあったため、かろうじて私はトレチノイン・ハイドロキノン・ステロイド療法を捨てずに入られました。
こんな、症例がありました。
当院でレーザー治療を行なっていた患者様があるときやけどをしてしまったのです。レーザーのパワーも照射の仕方も以前と同じだったのですが、おそらく、レーザーの機械自体の異常がでてしまたったためと考えられます。残念なことにその後、かなりの色素沈着をおこしてしまいました。
もしかすると、訴訟問題に発展するのではないかと、大きな危惧をいたきながら、ものは試しといっては何ですが、とにかく藁をも掴む思いで、トレチノイン・ハイドロキノン療法を試みたのです。もちろん、この患者様の努力もあって、数ヶ月後には色素沈着がかなり改善しました。私は胸をなでおろすとともにかなりの驚きを経験しました。
この患者様はその後もハイドロキノン単体療法、時間をかけてトレチノイン・ハイドロキノン療法と治療を続けたのです。すると、1年後には、20年前の皮膚(患者様がおしゃっていた表現です)に戻るほど、シミがなくなり、皮膚のハリツヤが戻ってきたのです。
さて、私はこの2年後にオバジニューダームに出会います。
オバジニューダームはオバジ医師をかかえる製薬会社がオバジ医師の名前を冠して、米国で発売されていたスキンケア薬品です。当時としては、決して派手ではなく、いかにも医師の調剤する医薬品感漂う中に、ちょっとしたオシャレ感のある容器が私たち日本の医師には新鮮に見えました。
これらは、セット販売で、洗顔料、化粧水、とともに2種類のハイドロキノンを含むクリーム製剤です。問題点はトレチノインが、推薦される他の製剤を使うか、または、自家調剤しなくてはならないことと、オバジニューダームセットがおもったより高額だったことです。
このシリーズではハイドロキノンも4%と低く、トレチノインを0.05%とすれば、かなり副作用がおさえられ、ステロイドも必要なくなったため安全性は高まりました。
価格が高価だったので、私はあえてセットでの販売を止め、1種類のハイドロキノン製剤(ミラミクス)、と私が調剤するナノトレチノイン0.05%だけで効果を試してみました。
これが、当時のオバジニューダームセットの価格の1/4の価格で、ほぼ同程度の効果を生んだのです。
その後、オバジ医師は自分の製薬会社を立ち上げます。
オバジ先生が前に所属していた製薬会社の商標登録があるため、オバジの名称は使用できず、彼の商品も「ZO」と名付けられました。
ZOシリーズになってからは、価格もかなり下げられ、また、薬品の使い勝手も格段と上がりました。
まとめ
コロナ禍でマスクをすることが当たり前になった昨今、ゼオスキンの問い合わせは一気に加速しました。
私は、基本的に、朝は私が調剤した活性化ビタミンCローションのみとし、夜就寝前に私の調剤したナノトレチノイン0.05%とZOのハイドロキノン(ミラキックス)の使用をさせています。
物足りないと感じた方には、朝、晩、別のタイプのハイドロキノン(ミラミン)を足して使用させています。
これらのハイドロキノンとトレチノインの塗布療法を「セラピューティック(医療治療)」フェーズとよんでいて、おおむね4ヶ月から5ヶ月、継続します。その後はレチノール(ビタミンA)と軽いハイドロキノンやピーリング剤でフォローします。これを「メインテナンス」フェーズと呼んでいて、6ヶ月から1年続けます。その後またセラピューティックフェーズを繰り返し行っていきます。
もちろん、このいかなる期間中でも、クリニックでレーザーや光治療、あるいはハイフやダーマペン治療も同時に可能です。
「適時なクリニックの施術」+「毎日のホームケア」
この2つをそれぞれのライフスタイルにあった形で組み合わ、ぜひ皆様の理想の美肌生活を実現させていただければと思います。
「身も心も美しい人生で」
引き続きよろしくお願いいたします。
酒井倫明(さかいみちあき)
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