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マスク美人を医学的に説明します〜顔面の黄金比について〜

こんにちは、東京都内で美容クリニックをやっております、酒井倫明(さかいみちあき)です。本日も形成外科医の視点から正しい美容医療普及に努めさせていただきます。

マスクが四季を問わず我々日常に組み込まれてから1年半以上が経過しました。マスクで口元が荒れてしまった人など、美肌ケアの相談も私のクリニックでは増えてきています。そんな中、患者様から「マスクをとった姿とのギャップを埋めたい」という相談が増えてきました。

世間では「マスク美人」という言葉が使われるようになったようです。マスクイケメンも当然あるのでしょうが、呼び方がしっくりこないので、ここでは男女問わず、マスク美人で統一しておきます。

マスクをつけるだけで美人になれるんならそれはそれでいいじゃないか、とも思ってしまいがちですが、なぜマスクをすると美人に見えてしまうのか?そしてその逆が起こってしまうのかを医学的見識からご紹介させていただきますね。

マスク美人の定義

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マスク美人とは昨今のパンデミックに付随して産まれた造語でありその定義は書物にもネットにも見当たりませんでした(2021年8月23日時点)。このため、まず私なりの見解で「マスク美人とは何か?」その定義を仮決めさせていただきます。

あらゆるネット記事をみてもマスク美人という言葉はポジティブには使われていない様子です。想像していた“マスクオフ”の素顔にマイナスの印象を持ったことからマスク美人という名称が生まれたようです。

このため、マスク美人とは「素顔よりもマスクをしている姿の方が美人に見える現象の固有名詞」とさせていただきましょう。


美の定義

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それでは次は美しさの定義とは何か?です。

感覚的な美や精神的な美、哲学面での美など様々な位相の美が存在しますが、ヒトの顔面の美には医学的にこう表現されることが多いです。

「顔の美しさは各パーツの黄金比から成る」

古今東西、この表現がブレることはありません。

黄金比というワードは誰もが聞いたことがあるでしょう。古くから知られている美のスケールです。
ある長さの直線を2つの部分に分割し、できた2つの長さをaとb とします。この時 a:b=b:(a+b)となるように分割されたものが最も美しい比率となされています。定量で表すと、1:1.618 です。この比率を黄金比、その数値である 1.618 を黄金数と呼びます。約5:8ということですね。

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黄金比を使った代表的な芸術品はミロのヴィーナス、ダ・ヴィンチのモナリザなどの芸術作品からピラミッド、パルテノン神殿、日本では唐招提寺金堂といった建造物にまで至ります。意図してかどうかはわかりませんが、古来より人間は最も美しいとされる数値でデザイン・構成をしていたようです。
身近なところでは企業のロゴマーク(AppleやTOYOTA)にも採用されていますね。

このように人体の構成にも黄金比が求められています。実際に権威ある学術誌「Journal of Craniofacial Surgery」では人間の頭蓋骨でも黄金比のような関係が見つかったと発表されています。

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そして人の顔面に関しても魅力的とされる比率が黄金比と関連していると指摘した研究があります。歯科領域でも研究が進んでいるテーマですね。

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引用
Jovana Milutinovic, "Evaluation of Facial Beauty Using Anthropometric Proportions"

私が得意とする人中短縮という形成外科術もこの黄金比を意識して行われる手法です。

他にもEラインと呼ばれるものもあります。

Eライン
1954年に歯科矯正医のロバート・リケッツが提唱した、横顔の美の基準。顔を横から見たときに、鼻の先端と顎を結んだ線を指し、そのラインより少し内側に唇があるのが理想のEラインであると定説になっている。

このように美の基準とは全体のバランスを指すわけです。大きい目や高い鼻だけで成り立つものではありません。


マスク美人の正体

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話をマスク美人に戻します。

そもそもマスクのサイズってどんなものなのでしょう。

山崎医療さんが発売しているマスクのふつうサイズは縦横16.5cm×9cm.だそうです。結構な大きさですね。
参考までに女性の顔の大きさ平均は21.5cm×15cmと掲載しているサイトがありました。これを基準に考えるとマスクが如何に顔面面積をカバーできるかがわかります。

マスクそのものの役割(感染症予防・飛沫防止)を考えるとごく当然必要な大きさです。このため、マスクをすることにより中顔面から下顔面までが覆われます。すると、パーツの位置関係、そして黄金比が不明瞭になるのです。そうです、マスクにより先ほど申し上げた美の定義があやふやになります。

このようにマスクがもつ本来の機能デザインが顔面の黄金比をぼやかし「美の判断基準」に影響を及ぼすことがマスク美人の正体というわけです。


本日のまとめ

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さて、ものすごく真面目にマスク美人について書いてしまいましたが如何だったでしょうか?

パッチリ二重にしたいなど、美容外科といえば目に焦点が行きがちですが、実は人間は全体のバランスで美しさを判断している、ということを皆様にお分かりいただけたら幸甚です。

メイクをする時や美容医療を受けようとする時は自身の顔面の全体図をアセスメントしなければなりません。いわゆる「木を見て森を見ず」ではいけないのです。逆をいえば、今まで自分にとっては好ましくなかったパーツも実は全体を通してみるとバランスを整えてくれる役割を果たしてくれてる場合もあるということです。

ぜひ多面的な見解で鏡を覗き込んでください。きっと新しいあなたが映ってると思いますよ。

感染症対策で必須のマスクですが、マスクかぶれ、マスク荒れにも気をつけてくださいね。1日も早くあの当たり前の日常が戻りますように😁

「身も心も美しい人生で」

本日もありがとうございました。


酒井倫明(さかいみちあき)
酒井形成外科 
https://www.sakai-keisei.gr.jp/


本日の参考資料






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