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ブロードウェイでの挑戦
人生、たった一回なんだから、何でもやっておいたほうがいい。そういう思いでニューヨークに行った。かれこれ何年前だろう。2001年のこと。
当時すでにニューヨークは治安も安定し、俗に言うアルファベットシティ(アベニューAとかBとか)やハーレムなども行っては行けない場所ではない時代になっていた。夜の11時にバイトを終えて、一時間以上散歩しながらハーレムまで歩くこともよくあった。
もともと、私がニューヨークに行った目的は、ジャズを歌うこと。ビザの問題があるので、ダンス学校に行きながらジャズクラブやナイトクラブに通う毎日。朝はパン屋さんで7時から働いて、昼間は学校にいって、クラブに夜10時に行き、朝の2時まで立ち見でオープンマイクを見て、その後2時間ぐらいかけて地下鉄でブルックリンの家まで帰る、という生活をしていたこともあった。今考えるとなんてタフ!でも楽しかった。とっても充実していた。
ニューヨークって本場本場って言うけど、本当に極めている人、才能のある人が普通に溢れている街だなあと思う。それがすごい、とかそういうことだけではなくて、そういう場所で自分を純粋に試している人たち、好きで好きでしょうがない人たちの気持ちが集まって、その街が、見る人から見たら本当に魅力のある街になっている。
人生一回なんだからやっておこう、と思って受けた一つのオーディション、それはブロードウェイの「Aladdin」のジャスミンの役(笑)ジャズ歌いに行って、それ!?と思われた方もいるであろう。
初めてのブロードウェイオーディション、何も知らずに行ったけど、実は誰が選ばれるかはほとんど決まっている、と言っても過言ではない。しかも、もともとミュージカルで経験がある人たちが入っているActor's Equity Association(加入するにも色々大変)のメンバーでない人にはほとんどチャンスはないのだ。
会場についてみると、みんなドレスを来て完璧メイク、発声練習を行っている。ジーンズにサンダルをはいている私は誰がどう見ても浮いている。まあ、もともと畑も違うから楽しもう、受付で名前を書いて、自分の番は?ときくとなんと6時間後!!
すごいなあ、ブロードウェイ、やはりスケールがちがう。どれほどの人数をオーディションしているのか。
もともと受かるはずのない私は本当にお気楽で、お買い物を済ませ、カフェで素敵なひとときをすごし、6時間後に至るのである。みなが発声練習をしている間に。
そして、ワクワク、自分の順番が!!
部屋に入るととてもフレンドリーな大人たちが誘導してくれた。ピアニストに楽譜を渡し、名前を言う。そしてスタート!曲はリトルマーメイドの'Part of Your World'
Flippin' your fins, you don't get too far
Legs are required for jumping, dancing
Strolling along down a - what's that word again? Street
Up where they walk, up where they run
Up where they stay all day in the sun
Wanderin' free - wish I could be
Part of that world (Part of Your World歌詞引用)
軽く16小説。そして最後に「Thank you」と審査員たちは微笑んだ。
「あれ、終わったのかな?」
と思う間もなく、雑談をするような時間もなく、部屋の外にぽいっと出されて、わたしの貴重なブロードウェイチャレンジは終了した。
オーディションに落ちたとかそんなことよりも、あの場の、本当に真剣に役を目指している人たちのエネルギーに触れることができて、とても刺激をもらった。やっぱり、やったほうがいい。やらないよりも。挑戦に無駄はないんだな、と学んだわたしの体験。