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死にたくない

一億総終活時代の人生観


死にたくない

漫画家でありタレントである蛭子能収氏の死生観。
面白かった。この人らしい(テレビでのイメージだが。)なと思う反面、考えさせられることも。
著者は死んでしまったら「何もない」状態、自分が「無」になることが想像できないし怖い。だから「死にたくない」のだそうだ。
生きていても辛いことしかなく面倒なことばかりなので、そういう状態から離れたいと思っても「死にたい」と思ったことはないらしい。(私などは逆のタイプで長生きはしたくないタイプ。)また真面目にに生きている人間を立ち直れないほど叩きのめす卑劣な輩に対しても、絶対に許せないと思いながら、徹底抗戦する手段は「絶対に死なない」だそう。著者自身もこれまでの人生において苦労もしたし、いじめにもあった。それでも絶対に死にたくないという。
人生100年とか言われる時代にあってあと二十数年、食べていくだけの貯えがあるのかどうか不安だから、体が動く限り働いてお金を稼ぎたいというあたりテレビでの飄々としたイメージと異なり、しっかりとした考えを持っている人だと思った。
大企業のエリートだった人が高齢者になって悲惨な老後を過ごすことがあれば、苦労を重ねてきた人が幸福な晩年を過ごすこともある。皆、幸福な晩年を送りたいと思っているが、なかなかうまくいかない人もいる。でも著者は「幸せのランク」を下げれば良いという。極端に言うと毎日フルコースを食べないと満足できないとしたら、マクドのハンバーガーを食べれたらそれだけで満足というようにランクを下げれば毎日が幸せに感じられるそうだ。(決してマクドが劣るというのではなくあくまでも例えとして。)
「幸せのランクを下げる。」いい言葉だと思った。「足るを知る(知足)」に通じると思うが、欲張らず今を幸せと感じられるように過ごしたいというのはこの人らしい。
もう一つ印象に残ったのは「プライドを持たない。」言葉だけ聞けばこの人らしいと思うが、よく高齢者で「昔の自分は…」などと言う人がいるが(かく言う私もたまに会社で若い人に言ったりするが…)若い頃の自分のイメージにいつまでもこだわり過ぎて、取り返しのつかないことになるという。著者は若い頃は車の運転が好きで長距離ドライブをしたり結構スピードも出していたらしい。(あまりイメージできないが。)所が最近、自分でも少しブレーキを踏むタイミングが遅くなってきたかな?と思い始めた頃に、運転を終えて帰った時に「あ~疲れた」と口にした瞬間「もう、運転はしない方がいい。」と考え、免許を自主返納したそう。
「プライドを捨てる」とか「プライドを持たない。」とか言うが、私を含め人間どこかに大なり小なりプライドを抱えていると思う。それをあっさり捨てることができるこの人は、案外しっかりした人なのかも。運転しなくなってからは奥さんと一緒に散歩することが増えて、楽しく過ごせているという。

著者は現在、軽度のアルツハイマー病に罹ってはいるものの、仕事はセーブしながらも続けているし、お元気そうである。
まだまだ活躍してほしい。

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