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民間軍事会社

「戦争サービス業」の変遷と現在地」


民間軍事会社

とても面白かった。
ロシアによるウクライナ侵攻でプリゴジン氏率いるワグネルが主導的役割を果たした上、反乱まで起こしたことで広く知られることになった「民間軍事会社」。私は傭兵組織だと思っていたがどうもそうとも言えないようだ。
実は民間軍事会社というものに明確な定義はないという。一応スイスのモントルーで2008年9月17日に採択された「モントルー文書」なるもので規定された定義がもっとも公的な性格を持つものとされ(但し法的拘束力無し。)そこでは「民間軍事警備会社とは軍事及び安全保障サービスを提供する民間の事業体であり、軍事及び安全保障サービスには、車列や建物やその他の施設の武装警備、人および物の防護、武器システムの保守・運用、囚人の警護、現地の軍隊や治安部隊に対する助言や訓練も含まれる。」
更に昨今は軍事及び安全保障サービスには情報収集・分析のインテリジェンス業務、サイバーセキュリティ、偽情報やフェイクニュースの拡散のような情報戦も含むとされている。著者はさらにこれに軍や諜報機関で培った専門的知識、技能を使って民間で軍事や安全保障を提供する会社」としている。
そんな民間軍事会社だが歴史は古く戦争の歴史と同程度にまで遡ることができるという。
昔から軍隊に付いて動いて必要な物資を調達したり運送を行ったり医療・食事など兵站支援業務を民間企業が請け負ってきた歴史がある。(私は兵站業務も軍隊がしていると思っていた。)
民間企業の請負業務の範囲が最初に拡大するのはベトナム戦争。これは現役兵に戦闘業務に専念させるため、国防総省の文官や民間企業に非戦闘業務を任せ、米軍基地の建設業務まで携わるようになるなど、米国は軍事の民営化を試行していたらしい。
次の契機は冷戦終結。これにより軍や情報機関の大幅な予算削減や人員削減が行われ、スパイ部門も多くのエージェント(スパイ)が削減され、民間人になったという。
次の契機は9・11同時多発テロ。これまでの他国との戦争からテロ組織との戦争という新しいタイプの戦争に移り変ったことにより、スパイ活動や工作活動が重視されるようになったが、スパイ部門の予算削減や人員削減のためにこれらの活動に有能な人材(経験豊富なスパイや工作員)が揃っていなかった。そこで必要な人材や能力を民間に求めるようになったそうである。
(悪く言えば情報機関のエージェントの再就職口。)
そして現代では軍の訓練業務や政情不安定な国での企業活動や政府機関の警護(当然、武装する。)、インテリジェント業務などその範囲は多岐にわたっており、場合によっては戦闘も。
ワグネルは特殊な例ではあるが非合法活動などロシア政府にはできない活動も行っており、それがプリゴジン氏を増長させたとも。
これからも時代の変化に応じてその活動も変わっていくのだろう。時代のあだ花か。

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