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しまかぜの扉

子供と暮らすようになるまで
電車に種類があることも知らなかった
形も 車両の数も違う
そんなことも知らなかった
バスが線路の上を走れば電車と呼ばれる、くらいに思っていた

子供と暮らすようになって
トミカを知りプラレールを知り
トレインビューという部屋を知り
しまかぜという青い特急を知り
自分ひとりでは生涯アクセスしなかったであろう、
近鉄のホームページで特急券を買う 私の口角は上がっている

子供と暮らすということは
こういうことだと感じている
知らずに終えるはずだった数多の扉を
指さす子供のために叩き
時に招かれ 時にこじ開け
知らなかった世界に こわごわ足を 踏み入れる
知ろうとしなかった
在ることも知らなかった
扉の奥に一歩 踏み出す 私の横には子供がいる

子供は 怯む私とは裏腹に
輝く瞳で 光源を見据え
助走をつけて 未知に飛び込む
知りたくもなかった
知ろうと思わなかった
海月の生態に 宇宙の発生に
恐竜の子孫に モーターの歴史に
音楽の理論に 青いしまかぜに
心を 揺さぶられる 体験を 子に もらっている

思いがけない 思いもよらない
電車とバスは違うと学ぶ
考えてみれば 電車とバスは 明らかに違うものなのに
一抹の興味も抱かず暮らしてきたわけで
そんな 私の 電車とバスが
ほかにもきっとたくさんあって
手当たり次第に扉を開けまくる生活の果て
振り返れば 楽しい誤解
腹を抱えて子供と笑える

私は子供としまかぜに乗る
青い 青い きれいな電車
電車に乗るためだけの旅
自分だけなら 有り得ない旅
しまかぜに乗り 次の扉の前に出るのだ
今度はどんな扉だろう
子供の指差すものを たいてい私は知らないから
私は楽しみで仕方ない

これが 子供と暮らすこと

事実、雑感、生きた証をこれからも書いて参ります。 応援いただけるととても喜びます。