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映画『ほつれる』公開記念舞台挨拶開催!

上映後、満席で埋まる客席からの拍手喝采に迎えられて登壇しイベントがスタートした。客席を見まわした門脇は「初日を迎えられて幸せを感じます。」と笑顔で答え、「内容は重たかったかもしれませんが、トークは軽妙に繰り広げていこうと思います!」と公開初日を迎えての気持ちを語った。劇中では門脇演じる綿子に詰め寄る夫・文則を演じた田村は「今日は誤解を解きたい!」と訴え会場の笑いを誘っていた。

どこか不完全なキャラクターが魅力的に演じられている本作の、キャスティングをするうえで重要視しているポイントを聞かれた加藤監督は「役によりけりではありますが、僕が書いている作品に限っては、どこか街の中にいるな、知り合いにこういう部分を持った人がいるな、など、良い意味で匿名性がある俳優をキャスティングさせていただきました。」と重要視しているポイントを明かした。

本作の主人公、綿子について門脇は、「台本を読んだとき、あまりにも面白すぎて夢中になったんですが、2週間のリハーサルに入った時、綿子のことが好きじゃないかもしれない…と気が付いてずっとぶつぶつ言ってました。」と共感が難しいキャラクターであると答えた。
田村は自身のキャラクターを「映画の中で切り取られているだけで、必ずしもそういう人ではないんです。例えば映画の中では綿子視点の綿子カメラで撮っていますが、これを文則カメラで見たときに全然違う印象になると思う。」と訴え、「大事なことですね。多面的な人間であるということが大事なところ。」と加藤監督もこれには同意した。
田村のキャラクターについて門脇は、「カットがかかった瞬間からは本当に仲良くお話させていただいて、とても良いお兄ちゃんって感じなのでご安心を。」と答え、現場での仲の良さが伺えた。

綿子役の門脇麦

本作でミステリアスに映る木村を演じた染谷は、「漂流しているイメージでした。風のような、一緒にいると居心地がよく、いざいなくなった後に“あの人何だったんだろう”と思われる人に見えるように演じました。」と自身の役柄についての解釈を語り、
文則を演じた田村は、「これまで加藤監督と舞台もご一緒していたのですが、リハーサルの2週間でも、文則のキャラクターをつかむのに苦労しました。その時監督から、映画はいろんな位置からカメラを置いて演出するので、と違いを教わって、演劇的なお芝居から映画的なお芝居にいくのに、実際にカメラを入れた別場所でのリハーサルが役立った。」と感想を語った。

綿子の夫:文則役の田村健太郎

綿子の演じ方で工夫した点を聞かれた門脇は、「ほとんどワンシーンワンカットで撮った作品なので、役者とカメラマンの動きを並走で合わせることは繰り返し行った。一人のシーンではその印象が強いです。」と綿子を演じる難しさを語った。

2週間行われたというリハーサルについて、染谷は「カメラが入っているリハーサルは初めてだったかもしれません。」と語り、加藤組で演じる楽しさを感じたシーンについては、「曖昧なことが一切なく、明確に演出してくれて、自分が楽器になった気分になる。書いてある台詞を、その演出の通りやっていくと出来上がっていく、ということを身で感じられる楽しさがありました。」と撮影を振り返った。

綿子の恋人:木村役の染谷将太

本作の、覗き見しているような構図について監督は「画(え)をつくるとき、綿子が向き合っていくストーリーなので、顔の向きや動きを意識して構図を考えました。」とし、そのほかの、話している人の顔が見えないなど、向き合いの演出については「しゃべっていないときの情報量というものを意識していたので、画の中でしっかり説明できればいいなと思って撮りました。綿子の衣装や人と対するときの向きに関しても、衣装を綿子の気分に合わせたり、例えば嘘をついているときは意識して向きを変えたりしていました」と説明し、その撮影技法で会場を驚かせていた。

加藤監督の台本の作りこみについて田村は「見たことのない斜線とかが引いてあって、重なるセリフもすべて指定されていた。」と答え、門脇もこれに同意し、「え、あ・・・とかも書いてあったので、誰もアドリブをいれてないと思います。」と台本のすごさを熱弁した。染谷も「なんて面白いんだろうとワクワクしました。用意されていたセリフに違和感がなく、口触りがよかった」と絶賛した。演出について監督は、「話していることと行動がバラバラであるということをどう組み立てながら、観ている人にどう伝わるかなというのを意識してリハーサルを行いました。」と語った。

遠出をしたロケのシーンに関して、門脇・染谷・加藤監督が「本当に気持ちいい場所だった!」と感想を述べている中、田村は「墓場の電話のシーンだけ遠出した記憶。一緒にいきたかった!」と会場を沸かしていた。
門脇が「田村さんと笑顔のシーンはあったかな・・・?」と振り返ると、加藤監督がすかさず「あるある!足のにおいを嗅ぐシーン!」と答え、会場中が笑いに包まれた。

監督の加藤拓也

舞台挨拶には参加できなかった黒木華に関して、門脇は「黒木さんとは前から友達だった感覚で演じられて感激しました。本当に素敵な方で共演できて良かったです。」と語った。

また、本作のタイトル『ほつれる』ということばについて、加藤監督は「いろんな解釈で見てもらっていい、映画を観る前がほつれていたのか、観終わった後にほつれたのか、観た人に委ねたい。」と述べた。
また、「ほつれる」ということばにちなんで、最近、「ほつれた」と思ったエピソードを語ってもらうと、門脇は「よく釣りに行くんですけど、魚を捌くときにビニール袋の中で魚のうろこを取ると、シンクにうろこが飛び散らないということを知って、最近とてもほつれました!」と元気に答え、
田村は「後からほつれていたことに気づくことが多い。関係がよくなかった友達に3年ぶりにあったら、仲良くできて、関係がほつれていた。だから、ほっといただけで物事がほつれることがあるので、僕にとってのほつれは“時間”、“放置”です。」と回答。
染谷は「肉を煮込んでいた時にコクを出したくてみりんを入れたが、煮込んでも煮込んでも清涼感があって、コクが出なくて。1本くらいみりんを入れ続けて気が付いたのが、それが赤酢だったんです。それに気づいたときに・・・ほつれました。」とまさかのエピソードを披露。
加藤監督は、「妹が結婚したことをしばらく聞かされていなくて…後から母親から聞かされた時にほつれました」と答え、田村が「それはまだほつれていないんじゃないですか!」と突っ込むシーンも。

最後に、「主人公の口数がこんなに少ないのに激しい映画、胸に刺さる映画を初めて観ました。会話のアクション映画だと思う。」(染谷)、
隅々まで行き渡った映画。五感で楽しんでください。」(田村)、
映画好きの方にとっては、今年外せない邦画の一本になったのではないかなと思います。加藤監督の珠玉のセリフの数々にたゆたいながら、綿子と一緒に旅をする映画になっています。劇場で楽しんでほしい。多くの方に届いてほしいです。」(門脇)と締めくくり、舞台挨拶は幕を閉じた。

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