進撃の巨人
進撃の巨人を読むと、見ると、心が満たされる。
“話が長いから”“グロテスクだから”
“巨人と戦うだけだから”
という表面的な理由で触れないのは、心の底から損だと思う。
キャラクター一人一人の人格がはっきりと浮き出ていて、互いに影響しあう、絶対に誰が欠けても成り立たないストーリー。
進撃の巨人に出てくる誰からも、人としての在り方、人間らしさが伝わる。
どんな信念を持っているのか、どんな心の葛藤を持っているのかを感じ取れる。
進撃の巨人が私の心を震わせたり、悲しませたり、奮い立たせたりと栄養をくれる理由は、
素晴らしい作品だから、だけではない。
数年にも渡る伏線が大量に張られている構成も、
絶対に崩れない一貫した流れも、
シリアスなタッチの絵、凄まじく細かな描写も、
巨人が出てくる以外は限りなく現実的な内容であることも、
全てが私を魅了させる要因に違いない。
どのキャラクターの視点で見ても、客観的に見ても、
何度繰り返し見ても、心に色々な形で影響を与える。
それでも私が進撃の巨人に惹かれる何よりもの理由は、とても単純。
とんでもない程に残酷な世界を作りつつ、ささやかだけど美しい宝石のような道徳が散りばめられているように感じるということ。
例え殺し合う世界ですら、底からの悪なんてない。
どんなに自分を憎んでも、その自分は誰かの希望。
どんなに相手を憎んでも、その相手だって誰かの希望。
選択を間違えたって、運命を恨んだって、何も後悔する必要はない。
どの人物も素晴らしくて愛しくてたまらないけど、
良い人の定義を、何かを変えるためには何かを捨てなければならないことを教えてくれたアルミンの言葉は、未熟で最低な私を小さくするためにも
一生胸に留めておきたいと思う。
ちなみに言うと宗教問題や様々な愛の形、実際の戦争の本質など沢山の社会問題を捉えていているところや、キャラクターの言葉選び、見当もつかなかったような展開、BGMのクオリティと導入タイミングまで、もう全てにおいて完璧な作品だと思う。
きっと大切な何かをもっと知るために、これからも何度でも見返す気がする。