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【エッセー】 『仕事が人を鍛える』っていうけど…。
住宅街に神経ガスがまかれた。ある団体による痛ましい事件。
警察から犯人として疑われたのは、まったくの無関係の方。
報道もその人が犯人に間違いないとする声一色だった。
当時小学生だった私の周りの大人たちは
「絶対こいつが犯人だよ」
「早く認めりゃいいのに」
と口々に言っていた。
父だけは
「この人、犯人じゃないよ。悪いことする顔してないよ。よくみてごらん」
と私にいった。
「そんなわけない。こんなに証拠もあるんだし、犯人に決まってるよ」
「犯人の顔してるじゃん」
と周りの大人たちはさらに続けた。
それから数週間後か、数カ月後だったか、当時小学生だった私には時間的な感覚はないが、地下鉄に同じ神経ガスがまかれた。住宅街にまいた犯人も、ある団体によるものだと報道。
私は「なんで違う(あの人が犯人じゃない)ってわかったの?」と父に聞いた。
父は「だってほんとうに悔しそうで、哀しい表情してたからだよ」と答えた。
「(母と私に)お前たちはニュースとか、周りの意見にまどわされて、その人がどう思っているか、その人自身をみないからわからないんだよ。ちゃんと自分でみて、周りの意見じゃなくて自分で考えないと」と続けた。
父は(当時は多くの人がそうだったかもしれないが)、仕事ばかりしている人だった。家族経営の水道設備の会社。父は経営者で土日も働いていたが、自分の給料は安かったようだ。生活できればよくて、働いている従業員(といっても母や弟)の給料にまわしていた。あとお客様のためにも。
中学生になった私は、ある本で『仕事が人を鍛える』という言葉に出逢った。
『一生懸命に仕事をすることで、鍛えられ、人の気持ちの機微がわかるようになる』といったことが書かれていたと記憶している。
仕事の手伝いで父についていった日のこと。
工事も終わり「材料費とあわせて五千円です」とご高齢で一人暮らしのお客様に告げた。
車に乗ってから「普通なら二万円くらいとられちゃうんだけどね。まぁ簡単な工事だから」と付け加えた。
人のために仕事をして、『仕事に鍛えられた』から人の気持ちがわかるのかな…、当時あっさり「この人、犯人じゃないよ」と言ってのけたことをぼんやり思い出した。
数年後、私は大人になって就職をした。
そこから十数年、父のあとは継がなかったが、やはり土日もないくらいに働いた。
現在、私は、当時の父と同じ四十代。
仕事によって鍛えられたであろう私は人の気持ちの機微がわかる。
はずである。
なのに…。
上司は不機嫌になり、お客様を怒らせ、後輩からは愛想笑いを浮かべられる。子どもたちにも、グズられたり、うるさがられたり、無言で部屋にこもってしまったり…。などなど。
なるほど。まだまだ、修行が足りないみたいです。
というか、人の気持ちの機微など永遠にわからない…。
とおもう…。
いろいろ、ありますが、
家事や子育ても楽しくやってます。
遊ぶのはもちろん大好きです。
仕事するのもけっこう好きです。
そんな生活のまるごとを、
ニュースとか、周りの意見にまどわされないで、その人がどう思っているか、その人自身をちゃんと自分でみて、周りの意見じゃなくて自分で考えて、エッセーとして綴っていきたいです。
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