サンドバッグ
中学三年生。秋の黄昏時。
独り、サンドバッグを担ぎ抱える。ヘン青少年。地元の商店街を歩いている。
なぜ、サンドバッグなのか?
何も考えていなかったからでしょう。
なぜ、家にサンドバッグがあったのか?
親が先手を打ったのです。思春期のヘンが家の壁に穴を開けないように。
「壁を殴らないで、サンドバッグを殴りなさい」
と…。
ではなぜ、サンドバッグを担ぎ抱えているのか?商店街を歩くことになってしまったのか?汗だくになりながら…。
時を遡ります。
昼休みの教室
向かい合う男子二人
「ハァッ、ハァっ、もう一回!」
「おぅ、何回だっていいぜ」
ガっと手を握り合う
ゴンッと肘をつく
うぉあぁあぁぁ〜
ぐぉおぉあぁ〜
バキッ!!
私は腕相撲に自信がありました。
中学生の頃です。負けた記憶はありません。調子に乗っています。元体育教師である校長先生と勝負しました。で、あっさり負けました。すみません。負けた記憶はありました。
PTA会議で校長先生は
「中学生で強いったって、全然たいしたことないんですね〜ハッハッハッ😎」
と語りました。
めっちゃ悔しい〜っ😖
いや、そんなことはどうでもいぃんです。
私は友達の腕を折ってしまったのです。
腕相撲でのことです。
事故といえば事故です。
本人も
「いや別に。オレも強すぎてさ。骨が耐えられなかっただけだし…(ちょっと強がってる友だち)」
友だちの親御さんも
「わざとではないですし…」
先生も
「どっちが悪いとかではないし」
友だちのお兄様も
「気にしなくていいんじゃないですか。喧嘩したとかではないですし…」
ヘンを責める人はいません。
それでも、やっぱ、申し訳ない気持ちになりました。
そこでです。K-1(ケーワン:格闘技)が好きな、その友だち。プレゼントを渡すことにしたのです。
サンドバッグを。
いる?ってききました。
いるって答えました。
だから運んだのです。歩いて。汗だくになりながら。
でも、腕の骨折れてるし。三ヶ月間、安静だし。叩けないんじゃ…
はい、その通りです。
だから言ったじゃないっすか🙎♂️
何も考えていなかったって…。
そして友だちも。何も考えていなかったのでしょう。
とりあえずということで
“プロレスごっこ及びスパーリング並びに腕相撲の禁止”
が言い渡されました。
※プロレスやボクシング。当時、男子の間で流行っていたのです。
エピローグ
社会人になりました。私はアームレスリング大会にエントリー。手始めに一番下のビギナークラス。
自信のある私。意気揚々と会場入り。
素人ばかりの参加者…であるはずなのに。あきらかに、どこかしらのアームレスリングジムに所属している方ばかり。どいつもこいつも、腕の太さは私の倍あるように見えます。もっと上のクラスは腕の太さ三倍。さらに上のクラスは四倍。
三倍や四倍の太さって。物理的にはあり得ないのかもしれません。ても、それくらいあるように見えるのです。どなたの腕も。マジで芸術作品級。
心の底から感動し圧倒されました。
アームレスリング大会は二回負けたら終了です。初戦、瞬殺されました。二戦目、秒殺されました。
そう二戦目は、一秒だけ堪えました✌