【旅エッセー】言葉の通じない異国を独り彷徨う少年
ニューヨークを一人彷徨っている。
地下鉄に乗ろうと駅のホームへ。電車はもうきていて、ドアが閉まるところ。
“ダメかぁ、次に乗ろう”
とおもった瞬間。
車内から腕が5本くらい、ぶばっと出てきて、ドア近くのみんなが、閉まるドアを抑えてくれるのでした。
電車駆け込み乗車について。
ニューヨークでは乗り遅れそうな人をみると、みんなでドアが閉まらないように押さえてくれる。
東京では駆け込み乗車すると、白い目でみられる。
どちらかといえば、ニューヨークが好き。
結果が同じなら、白い目で見られ、縮こまっているよりも、感謝する方が良いです。
演劇が好きで、劇団四季、キャラメルボックス、劇団☆新感線、野田秀樹さん作品、その他学生演劇、小劇場の芝居、などなどたくさん観に行きました。
大学生活、最後の思い出。ニューヨークブロードウェイのミュージカルを観に…あっバレてしまいました。タイトルの少年って…そう、このとき私は大学4年生。
日本人は海外では若く見られるとよく言われますが、大学生の私はニューヨークでは少年になってしまうのでした。
となりの席のステキな女性に話しかけられました。
「ぼく、パパやママは?」
なのか
「このあと、何か予定は?」
だったのか、表情からはわかりません。しどろもどろしていたら、会話が終わってしまいました。
私は熱っぽい夜を過ごすチャンスを逃したのかもしれません。
いや、迷子センター(なるものがニューヨークにあるのか知りませんが)に連れていかれるという恥ずかしい思いをする危機から逃れられただけかもしれません。
国連の本部を見学にいきました。
ツアーみたいに案内の方が説明をしてくれます。英語なので何いっているのかさっぱりわかりません。
気になったのは、笑顔です。
ものすごい、がんばって笑顔をつくっているようにみえました。そういえば、COACHのお店でもそうでした。がんばって、笑顔をつくっているように見えました。
はっきり言います。
“2006年 東京VSニューヨーク笑顔対決”
は東京の圧勝です。
ある建物の入口に近づきました。軍人らしき方が銃をもっています。映画でしかみたことはありませんが、大きさからいって、おそらく機関銃です。ダララララっと連発で出るやつ。
ここはグラウンド・ゼロ付近。9.11の痛ましい記憶もまだ残っているときでした。殺気立っているようにみえます。トリガーに指がかかっています。銃口をこちらに向けるかのごとくテンションです。
「ここはダメだ、消えろ」
もしくは
「危ないぞ、よるな」
などといわれたかは定かではありませんが、たぶん、こんなようなことを言われたのだと思います。
このときばかりは、少年に見られてよかったのかもしれません。命拾いしました。
黒人男性に話しかけられました。
「ガッシュウ」
これはわかります!!
“良い靴だね”
です。
ジェスチャーで
「靴を磨かせてほしい」
と、言っているようです。
すこし、強引に進めていきます。
ここはニューヨーク。言葉は通じない。私は少年。
大丈夫なのか!?ビビっています。
「足、踏ん張って、しっかり押さえて」
というようなジェスチャーをされます。
ビビってる私の足は、ふにゃふにゃなのした。
「ワンダラー」
これもわかります!!つまり、だいたい百円くらいです。
私の靴はピカピカになりました✨
私は1ドルをしはらいました。
黒人男性は、右手のひらを上に向け、左肩にあて、深々とお辞儀をしました。言葉のわからない私に
「ガッシュウ」
と、お礼を言って去っていきました。
こんな地元の方との交流が、一番の想い出になりました。
だって、この黒人男性の笑顔は、ニューヨークにきた私に向けられた、初めての自然な笑顔だったのですから。
店の店員さんは、言葉の通じない私とのやりとりは、面倒くさそうにしていましたから。あからさまに。うっとおしそうに。よくて真顔でした。
それでも、ニューヨークの笑顔もやっぱり最高なのでした。
“2006年 東京VSニューヨーク笑顔対決”
は引き分けです。
この日、ニューヨークは観測史上最大の大雪に見舞われたのでした。
ニューヨークの方々の凄さを目の当たりにすることに。瞬く間に、除雪作業が進められました。早朝、老若男女が道に溢れ、一気に除雪を終わらせたのです。あの真顔集団の姿とはおもえませんでした。
あれほどの団結力は東京にはないかもしれない…。
舞台はワシントンDCへ。
「ヘイボーイ!」
といわれたかは定かではありませんが、地図をみていると道行く方々が積極的に声をかけてくださるのです。親切です。
電車の駅の切符売り場では
「きみ、どこまで行くんだい」
といわれたかは定かではありませんが、声をかけてくださいます。駅員さんのところに連れていってくれます。駅員さんも親切です。
子どもが道に迷っていると、ワシントンDCでは積極的に声をかけてくれる。
東京では、心配しながら見守り、声をかけられるのを待っていてくれる。
私は東京が好きです。
声をかけて良いよって雰囲気で待っててくだされば、自分のタイミングで声をかけます。
でもワシントンDCの人たちも好きです。仕事で忙しそうにしているにも関わらず、あきらかに言葉の通じない(関わるとめんどくさい)私に、話しかけてくださるのですから。
たしかに悪い人はいっぱいいるのだとおもいます。でも、ほとんどの人は、弱い人に優しいのでは?と感じた旅となりました。
もしサポートしてくださるようなことがありましたら、近所の自販機にある大容量コーラを子どもに買ってあげたいとおもいます