自らの領域を超えて、ユーザーへの提供価値を追求せよ──自然と生まれる“協力体制”
ビットキーの魅力を一人ひとりの語りから紡ぎ出していくシリーズ「What's your "KEY"」。
今回も引き続き、ハードウェアとファームウェアの両領域開発メンバーに登場してもらい、ビットキーの“ものづくりのリアル”をお伝えしていきます。
前回の記事『新たな技術・発想で、オートロック機能をアップデートせよ──HW/FW3人の開発者の軌跡』では、ジャイロセンサを用いた「オートロック機能」の開発プロジェクトにフォーカスしました。本記事では、3人が感じている「ビットキーのものづくりにおけるカルチャー」、そして「それぞれのキャリア観」に迫っていきます。
五十嵐 賢哉
川名 優
津島 雅俊
超高速でタスク実行。 その背景には絶妙なコンビネーションがあった
── 前記事で、3人で双方が連携しながら開発したと伺いました。 具体的にどのような協力があったのでしょうか?
川名:前提として、このプロジェクトは開発期間がタイトでした。そのため、一般的なメーカーであれば「ウォーターフォール型」で進めるようなタスクを「アジャイル型」で進めていました。
五十嵐:例えば、「この部品を検証してみたい」という要望に対して、津島さんは検証のためのテスト環境を即座に用意してくれました。このテスト環境のおかげで、ハードウェアとファームウェア開発チームで連携して仮説と検証のサイクルを素早くまわせましたし、「大丈夫そうだ」と実現性まで確認したうえで、ファームウェアチームにパスできました。
川名:そのため、パスされた側の僕らも「すでに検証されているし、きっとできるはず」という前向きな気持ちで取り組むことができたんです。
── テスト環境とはどういったものでしょうか?
五十嵐:ジャイロセンサは直接的に「開いた」「閉まった」の検知をするわけでも、直接角度を検出するものでもなく、回転する速度を積分することで間接的に角度を出しています。
そのため、実際にどのような開け方をすれば、どんなデータが取得でき、積分した結果が「開いた」「閉まった」の実態を表現できるのかという確認が必要でした。津島さんは、これがすぐに確認できるよう、センサを制御するファームウェアと出力されたデータを解析するためのツールをあっという間につくってくれました。
川名:前職では、電気設計者がデータシートを読み込んで制御仕様を考え、次にファームウェア担当がその制御仕様をもとに実装するという流れでした。今回は五十嵐さんがこの電気設計者のような立ち位置ですが、津島さんは五十嵐さんから制御仕様についての共有を待つのではなく、タイトなスケジュールを理解し、自らデータシートの読み込み部分の役割を買って出たんです。必要な知識を学びながら、高速でタスクを巻き取っていました。
津島:五十嵐さんには、もっと他のセンサ候補も探してほしかったんです。なので、僕がスピード重視で検証を進められる環境を用意すべきだと考えました。川名さんは、量産時の品質をふまえて考慮すべき項目を洗い出し、最終的な制御仕様をつくってくれた。個体のばらつき要素に何があるのかを考慮し、愚直にタスクを潰してくれました。
隣のチームの状況が分かる距離感。 “普通”の感覚で助け合うカルチャー
── なぜ、そのような、お互いにフォローし合った開発ができるのでしょうか?
川名:日々、同じ目標に向かって動くことができているからかなと。僕らハードウェア・ファームウェア開発チームに限らず、ビットキーはどのチームでも、ユーザへの提供価値を第一に考えているんです。
また、仕事が細かく分業されていないので、「自分のチームはここまで」という線引きがあまりないですね。提供したい最終的な価値を実現するためにどうすればよいのか、開発者一人ひとりが考えている印象があります。
津島:お客様との距離感も近いので、「もしこれが出来上がったら……あの法人様や、その先にいる数十万人のエンドユーザーにどれほど影響を与えられるだろう」とリアルに想像することができます。
それが、ユーザー価値を考え抜くカルチャーにつながっているのかもしれません。
五十嵐:この2つのチームでいえば、距離が近く、日常的に会話が多いんですよね。どちらかが技術的な議論をしていると、それを横で聞いているもう片方のチームが自然と議論に参加してたりも。雑談も多いですけど(笑)。距離が近いからこそ、一人ひとり何が得意なのか、なんとなくわかります。
川名:お互いの状況が見えると、業務がひっ迫しているときや、解決しきれない課題があるときに、ストレートに助けを求め合えるところがいいなと思います。
── どのように助けを求めるのでしょうか?
津島:僕は近しい業務を担当する人に、業務量を加味しながら「このタスクも混ぜて一緒にやってもらえないか」と相談する感じです。基本的に自分ができる範囲のことは全部やりたいという気持ちでいますが、それでも抱え込むくらいなら、周りの助けを借りる必要があると思っています。
── 距離感の近いコミュニケーションは、どのようなメリットにつながっていますか?
五十嵐:開発スピードに影響していると感じます。協業している企業からも「ビットキーさんの開発スピードは早すぎてついていけない」と言われることがあるので(笑)。
ビットキーでは、よくある開発プロセスに対して盲目的に従うのではなく、「それをやる意味は?」「その基準でいいんだっけ?」と、都度考えながら議論しています。その結果、本質的にやらなくてもいいことが明確になり、開発のスピード感に寄与しているんです。
川名:僕がビットキーに対して「いいな」と思うのは、これまで話題にあがるような「協力」を、みんな当然のようにしているところです。
「フォローし合っている」とか「助け合っている」みたいな大げさなものだと感じていないんですよね。「まあ、これくらい普通だよね」という感覚なんです(笑)。
「何者かになりたい」。 その思いを叶えられる場所
── これからの目標や今後のキャリアで目指したいことを教えてください。
五十嵐:僕は新卒で入社して以来、色々と失敗も重ねましたが、ずっと新しいことに挑戦させてもらってるんですよね。自分で言うのもなんですが、3年目とは思えないほどかなと。なので、平均的になんでもできるようになったと思います。一方で、まだ「尖り」は足りていないんですよね。その「尖り」のひとつとして、電気設計技術を深めていけたらと思っています。
そもそも僕がビットキーに入社したのは、ソフトウェア開発力や営業力が高いからです。ハードウェア×ソフトウェアの組み合わせで、これまでに世の中になかった新しく優れた価値を生むことができ、多くの人に使ってもらえる。そこにさらなる貢献ができるよう頑張りたいです。
── 新卒入社して、本当に色々な経験をされてきたのですね。川名さんはいかがですか?
川名:複数の分野を経験できたので、ハードウェアからソフトウェアまで横断したプロダクトマネジメントをしてみたいな、と思っています。
最終的にはビジネス的なところまで見れるような、幅広い活躍ができる人になりたい。短期でいえば、ファームウェアの上流設計のみならず、コードに落とし込んで綺麗に動かせるようにしたいです。
僕はもともとハードウェア開発出身者なので、部品の特性を把握したり、制御仕様をつくったりすることが得意。ハードウェアとファームウェアのちょうど間にある業務で、自分の強みを活かしたいです。
あとは、自分がつくったものが世の中に出ることで、自分の子どもが当たり前に使っていて、さらに「これ、実はパパがつくってるんだよ」といえる世界が来ると嬉しいなと。
子どもに限らず、街を歩いていて自分が開発したものを使っている人がいたら、「それ俺がつくったんだぜ」って内心にやにやしてそうですけどね(笑)。
── 川名さんの場合、ハードウェアからファームウェアに領域が変わっていますが、そこに不安はなかったのですか?
川名:私は専門領域を尖らせるというより、できることを増やして掛け算で価値を出したい人間なんです。ビットキーではファームウェア開発という領域に身を置きながらも、ハードウェアの量産開発時に頼りにしてもらったり。自分の役割を自在に変幻させられることに、自分の価値の発揮しやすさを感じていますね。
前職は細かく分業された組織だったので、どんな体験を提供できたか、最終的な成果やアウトプットに自分がどの程度貢献できているのか、見えづらい部分がありました。そのため自らの意志や気持ちを込めにくかったんです。ビットキーでは、自分の仕事の成果が見えやすいところがいいな、と。アウトプットへの責任が大きいのは大変ですが、ユーザーにとっての価値を第一に考えた開発ができている点はとても充実しています。
── なるほど、ご自身で選択してキャリアを切り拓かれたのですね。津島さんはいかがでしょうか?
津島:僕は昔から、他の人が自分と同じことをやっていると、自分でなくてもいい気がしてくるタイプでした。
上を見れば勉強も運動ももっとできる人がいたし、「自分には何ができるのだろう?」「他人よりも強みにできるのはなんだろう?」と常に考えていました。そこで見つけたのが『コードを書くこと』だったんです。小学生の頃から独学でHTMLやCSSを勉強していましたね。故郷の田舎町に、当時コンピューターで何かをつくっている子どもなんていなかったですよ(笑)。
ビットキー入社後も自分にしかできないであろう仕事を選んできました。僕は入社後にソフトウェアからファームウェア開発に転向したんです。これは当時、外部委託していたスマートロックのファームウェア開発の実態を認識し、社内でやるなら自分しかいないと思ったからなんです。内製化を目的としたファームウェア開発チームの立ち上げに手を挙げました。
そして今、ファームウェア開発チーム内で、ファームウェアを直接書くのではなく、新しい「検査アプリ」をつくっています。
ビットキーのファームウェアはアプリからの指示を起点に動く機能が多いんです。しかし、スマートロックのモーターを回したいだけだとしても、ユーザーが利用するアプリを用いると、ユーザー登録やログイン作業など、検査上には不要なステップが発生してしまいます。
そこで、それらをすべて省略して、「モーターを回転させる」という動きだけを再現させるアプリをつくりました。これは、ファームウェアを書くだけの人にはできない、自分にしかできない仕事だと感じています。
そうやって、ずっと周りを見渡して自分が一番になれるような仕事を見つけてきました。僕はこうやって「何者か」になりたいんだろうな。
だから今、ビットキーにいるんだと思います。
「What's your "KEY"」 とは
構成・編集 / 写真 / 図 ビットキーnote編集部
取材・執筆 早坂みさと