小鰯の塩茹で 二杯酢をかけて
仕事帰りに金沢駅の黒百合に寄った。
晩ご飯時にはめずらしく二人連れが一組待っているだけだったので、順番待ち発券機に登録して店前の椅子に腰掛けて待つ。3分もしないうちにお店に入れた。
お店に入って右側奥のカウンターに案内される。ここは入口から離れていて、後ろを通る人が少ないので落ち着いて飲めるいい席。とりあえず、一番搾りの中瓶をお願いしてメニューを眺める。
まずは、すぐに出てくる牛すじ煮ネギがけ。もう一品は季節のおすすめメニューから選ぶ。今日のぬたはシマアジ。刺身はイカがおすすめのようで、いかげそ、イカゲソとワサビ昆布の和え物がある。鰺フライもうまそう。
メニューに「小鰯の塩茹で二杯酢がけ」を見つける。その名の通り、小鰯をさっと塩茹でして二杯酢と生姜で食べる料理。塩茹でするだけなので鰯が新鮮じゃないと生臭くなる。青魚好きとしては外せない料理、迷うことなく注文。以前、白山茶屋が都ホテルの地下にあったころは、白山茶屋の定番メニューだったが、最近はどこの居酒屋でもあまり見かけなくなった。
ビールと牛すじ煮がほぼ同時に運ばれてビールを飲み始める。自分のペースでコップに注ぎながら飲める瓶ビールが、近頃気に入っている。牛すじ煮は一味をふってつまむ。
私の左隣は観光と思しき60歳前後のご夫婦。カウンターにおでんの皿を並べて、男性は黒ビールのジョッキ、女性はウーロン茶を飲んでいる。大根、玉子、シュウマイ、焼き豆腐、赤巻きなど次々追加で注文されている。そんなにおでん食べたらお腹いっぱいにならないんだろうか。黒百合はおでんもいいけれど一品料理もおいしいよ。と観光の皆さんにお伝えしたい。
右隣は、常連らしい70歳くらいの男性。しきりとカウンターの中で洗い物をしているアルバイトの大学生に話しかけている。大学生も慣れているらしく嫌な顔もせず親しげに話している。黒百合はほぼ毎日のように通う常連さんんが何人かいらっしゃる。昼下がりの空いている時間にきて、ひとりカウンターで酒飲んでいる。この男性もそんな常連さんのひとりなんだろう。私もあと10年もすれば、あんな感じになるのか。
ビールが空いたので、小松市の酒蔵加越が作る「加賀の月 三日月」を1合燗してもらう。お酒を待っている間に、鰯の塩茹でが運ばれてくる。親指くらいの鰯が10尾くらい二杯酢に浸っている。鰯の皮が破れて身が見えているのは、鰯が新鮮であることの証。新鮮だと煮汁に入れた瞬間に皮がはち切れるそうだ。小さくて骨もやわらかいので骨ごと食べる。臭みがなくて、お酢と生姜でさっぱりしていて、いくらでも食べられる。
酒を1合のお供にちょうど良いボリュームだった。いかゲソの刺身を頼もうっと思っていたが、お腹もいい具合にふくれたので、今晩はここでおしまい。お勘定は2830円。飲み物も含めて一品700円。数年前なら2000円以内で飲めたのだが、諸物価高騰のおり仕方ない。
日がだいぶん短くなった。心持ち涼しくなった夕暮れ。家まで歩いた。