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和倉温泉

仕事の用事があって日曜の午前11時に車で七尾市に向かう。用事を済ませると12時30分。このまますぐに金沢に戻ろうか、それともお昼食べてか帰ろうか10秒ほど考える。正月の地震以来、初めて七尾に来たのでもう少し今の状況を見ておきたいという気持ちもあって、昼ご飯を食べてから帰ることにした。

昼ご飯食べるにしても、どこに行こうか。6年前に息子と能登島でのシーカヤックツアーの後に立ち寄った、市役所近くの中華料理「香華園」の細かく切った蒲鉾がはいってるチャーハンもいい。昨年の11月に行った「ひのともり」はフレンチから気軽なお店に路線変更したらしいので様子をみてくるのもいい。

30秒ほど考えてみたが、車が停めやすくて、ひとりでも入りやいということで「山藤家食堂」に行って、ついでに隣の食祭市場の様子もみてくることにした。山藤家食堂は子供達がまだ小さいころに、能登島の水族館にいったときに昼飯を食べにはいって、そのとき食べたチャーシュー麺がおいしくて、七尾でお昼を食べるときは候補にしている店だ。

うどんや丼ものから、ラーメン、カレー、定食まである、昔ながらの大衆食堂。午後1時近かったこともあったのか、お店は6割くらいの入り。今日は、チャーシュー麺と豆ご飯にした。チャーシュー麺のスープは透明なあっさり味。チャーシューも適度に脂とこくがあって年寄りにちょうどいい。豆ご飯は枝豆が入っている。小ぶりで麺のお供にするにはちょうどいい。

食後に食祭市場を見学する。入り口の軒下に浜焼きコーナーしつらえてあって、何人かお客さんが七輪で牡蠣やイカを焼きながら食べている。中は一部の店舗だけが営業している。海産物売り場の部分はシャッターがしまっていて、建物中央の通路の部分に冷蔵ケースをならべて干物など売っていた。建物が相当傷んでいるのかもしれない。

建物の外の舗装ブロックを敷いた部分は、ところどころ陥没してボコボコで立ち入り禁止になっていた。駐車場の7割くらいは車が停まっていた。バイクのツーリングの人や家族連れなどお客さんはそこそこ来ている。

帰り道、せっかくここまできたのだから和倉温泉にも行ってみようと思い立つ。バイパスを途中で降りて、ひとまず総湯に向かう。総湯というのは温泉街の中心にある共同浴場。和倉温泉の総湯は復旧して通常営業していると聞いていたので、ひとっ風呂浴びることにした。

土曜の午後。地震前なら宿泊客が続々と旅館に到着して温泉街が賑わう時間だ。今はほとんどの旅館が休業中なので、街全体がひっそりとしている。海岸沿いに連なっている旅館のビルはそれぞれがいろんな方向に微妙に傾いていているのか、平衡感覚が狂いそうになる。増築部分が裂けて壁にぱっくりと隙間ができている建物もある。建物の解体、修繕、立て替えはこれから。通常営業に戻れるのはいつになるのか心配になる。

総湯は入り口の広場が地震でべこべこになっていたけれど、内部は以前のとおりだった。ここは浴室の天井が高くて、湯船も広くて気持ちがいい。昨年の11月の土曜の午後に訪れたときは、洗い場の順番待ちするくらい賑わっていたが、今日は10人くらいが静かにお風呂に入れた。

総湯ちかくに能登でとれる牛乳をつかうジェラート屋さん「能登ミルク」があるので、風呂上がりに行ってみた。ここも昨年来たときは店からお客さんがお店の外にあふれるくらい賑わっていたが、今日は順番待ちすることもなくジェラートを買うことができた。

温泉街が、このまま2年も、3年もこのままの状態が続くと、地元経済への影響は甚大だ。しかも以前と同じように復旧すればいいというもんでもないところが難しい。和倉温泉は、昭和から平成の初めバブルの頃までに、団体客を呼び込むために建設した巨大な建物の維持することに苦しんできた。単に同じような巨大ビルを復旧すればいいわけじゃない。

経営方針の変更と復旧、これを同時に成し遂げるのは大変だと思う。

ひっそりと静かな温泉街をひと回り歩いてから金沢に戻った。

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