雨蛙
ほぼ2ヶ月ぶりに、母の生存確認のために実家に行った。
母は若いときから腎臓に持病があり、定期的に病院で検査してもらっているのだが、最近、腎臓の数値が少しずつ悪化していて、お医者さんに、このままでは人工透析を受けないといけなくなる、と言われて気に病んでいたので様子を確かめたかった。
会って話しをすると元気そうだった。でも、時々体調が悪くなると半日くらい寝込んでいるそうだ。
以前なら、家の周りの草むしりは、こまめに自分でやっていたのだが、体調が思わしくないのと、この暑さもあってしばらくほったらかしだという。
せっかく来てくれたので草刈りをしてほしいと頼まれる。お墓もしばらくいっていないので、お盆にむけて墓掃除もしてほしいといわれる。
土曜日の夕方、日が陰って涼しくなった頃を見計らって、熊手と鎌とバケツを車に積んで二人で墓地へ行った。
父がなくなった後5年間くらいは、母は一日も欠かさず墓参りにいって、その都度掃除をしていた。さすがに最近は毎日通うこともできなくなったようだ。ここ2ヶ月ほどは体調が悪くて一度もいっていないという。お墓が雑草に覆われているに違いないと母は心配してどうしても墓掃除をしたかったそうだ。
ところが、墓地に着いてみると、墓地一面雑草に覆われていたが、うちのお墓のところだけ誰かが草刈りをしてくれていた。
母は「誰が掃除してくれたんだろう」としばらく考えている。多分、弟のお嫁さんがやってくれたんじゃないかという結論になる。母はありがたいと言いつつも、「ひとこと言ってくれればいいのに。」と感謝とも不平ともつかない言葉をつぶやく。
おおまかには草刈りをしてくれあったので、さらに念入りに草刈りをして、その周囲の草を抜いて、熊手で抜いた草を集めてから、墓石を雑巾で拭いた。8月に入ってから藻一度掃除すれば、気持ちよくお盆を迎えられそうだ。
墓石の上に、雨蛙がたたずんでいた。小指の先くらいの小さな雨蛙。お墓にくると雨蛙が墓石の上に居る。毎回必ずといっていいくらい雨蛙がいるので、母は「お父さんが雨蛙の姿になってもどってきたに違いない」と言う。
灰色の墓石の上で、派手な緑色の体をさらけ出している雨蛙の姿を見ると、もしかしたらそうなのかもと思う。