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日々のミラーボール
心臓に遠いところから慣らそうもらった銀のマニキュアを塗る
夜なか目を覚まして水を飲みにゆく光るカーテンなんて無視して
ストリートビューで互いのふるさとを歩こうとした2010年
ブラというかわいい布を選びつつ仲を深めていく日々だった
じいちゃんの帽子コレクションからひとつ永遠にいただいたニット帽
友だちになろうと言って友だちになるような遠回りがたのしい
放たれたことばが蝶になる夜にわたしの蝶は北を目指すよ
犬小屋はまだ残ってた どうやって犬もおばけになるのだろうか
台無しにする 夢だから比喩でなく星をむさぼっていたあなたと
やわらかい背中さすってやりながらおさかなならば飛び散るウロコ
小窓から延びる光が客席のみなさんからは映画に見える
映写機をあわてて止めた日のこともあたまでゆれるろうそくみたい
「あ」を補う赤字を入れる「たたかい」と「家庭」きらきら並ぶ紙面に
友だちの結婚式と結婚するような気持ちだねドレス選び
名付け親、そのあこがれに似たひびき キャンディのつつみで包む宝石
海行こうちょっとおかしい海でいい LEGOのお城を波で洗おう
笑うときはじけるように背を反らすやりかた君の本性は夏
宿敵として出会えたらヒマワリでなくどの花を贈っただろう
また同じ秋を迎えてあたしたち夏のお葬式にうたう歌
かわいくてしかも大きい傘を手にひとりと言わず愛するのだわ
指差して子どもは笑うおさかなの毛皮、と スパンコールの衿を
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2018年発行の「パオホン」10月号『秋』に載せてもらった連作です。