白昼。
川沿いを歩いて、この場所まで来た。ここら辺ドラマの撮影にもよく使われるのよね。なんて独り言を呟いたら、急に右側の木がザワって揺れて、あの匂いを纏った風が全身を力強く、かつ優しくフワリと抜けた。
背後に気配を感じて振り向いたら、彼がいた…。
『あ、昼間でも登場出来るものなんだ?』
「アハハ…まあね、第一声がそれ?」
『何時も夢の中でじゃない?それにメール中とはね…』
「僕が去った後、キミさ、柄にもなく占い師のとこなんか行っちゃって…完全に狂ったと思った」
『え、みてたの?その後、荒れたの知ってたんだ…メールアドレスに"blue"を入れたのだって、その胡散臭い占い師に言われたからだよ。よく使うツールに、精神を冷静にする青を意識的に入れなさいって言われてね』
満更、インチキ100%でも無かった。藁でも掴めればそれだけで良かったんだから。
人間って悪いだけの人もいないね…そういう意味では。
「キミ、外側からは分からないけど、自暴自棄になってたからね…」
『誰のせいだと思ってるの?!』
「まあ…悪いとは思った。闇から次に意識が戻った時に、終わって始まった事に気づいたんだ。でも、キミとはずっと繋がっていて、縁が切れないことも知ってた」
重い雲がグレーなまま、流れてゆく。
『あれ…ね?よく姿がみえる…』
「手紙、燃やしたでしょう?もっと早くに燃やしてくれたら、僕も、もっと…」
『もっと?って…』
「キミが泣いてばかりいるから、本当に悪いと思ってたんだ…彼方との約束で、頻繁に会いに行くことは出来ないのだけど…抜け道があって、キミは辛いのに、何度も再現することを選んでまで、会うことをやめなかったね…」
『だって、本当に会いたかった』
『やっぱり、好きだった』
『好きだったけど…』
「こんな思いさせやがって、地獄へ堕ちろ!って思ったでしょ??」とあの懐かしい声で笑う。
『一度だけだよ。許して』と一緒に笑う。
あー今日は、片思いだった気持ちにケリをつける為だから、「スキだ」を連発するわ!と断言して、彼の顔を、表情を、ハッキリだけどたまに不鮮明になる姿を、曖昧なままでみた。
雨が、ぽつぽつと目黒川に落ちている。
水は流れて、同じ場所には戻らない。
巡る、廻る、戻らない?
ならば、ココとソコを繋いで、循環させればいい。
隣りの彼にも、降り注ぐ雨。
リネンのシャツが透けてゆく。
シャツの中身は実体なんてないはずなのに、あの時と同じく乳首が透けてる。なんで見える?見えないものが急に見えるから、戸惑っている。でも、こんなに穏やかで優しい雨を知れてよかった。
ずっと掴みたかった手を繋ぐ。
会えてよかった。
#エッセイ #目黒川 #再会 #リネンシャツ #巡る #廻る #循環 #時空の歪み #記憶 #年月経過 #告白 #好きは好き #mementomori
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?