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恋する女たち(BBCドラマ)

 恋の始まりは、いつだって視線からだ。
相手の視線と、自分の視線が、"其れ"を匂わせから、確信へと繋げる。理屈で抑えられる感情ではない。
何故なら、たぶん、
 
 「恋はするものではなくて、落ちるものだから」…とは、誰が言ったのだろう…

 恋の始まりは、一瞬で全てを甘美に輝かせる。此処から、ゆっくりと滑り落ちていくことすら予感せずに、喜びも哀しみも、それを苦悩と言葉にするには、あまりに軽すぎる。だからといって重いにシフトするのも危険。「好きだから」「愛しているから」様々に言葉あるからこその変幻と時を重ねて、其れは、絡み合い縺れ合い、吹き荒れながら心を揺さぶり、人を愛することの意味を経験と一緒に追憶させる。最終的に自分は何処までも自分であって、それ以上でも以下でもなく、ただ自分でしかない悲しみに打ちひしがれるのだ。無駄に止めようとも出来ない。次に活かすも殺すも自分次第。人間は無責任である。どのような人種であったとしても、本当の意味では、他人を救う事も、まして自分自身の言動にすら責任は取れない。愛という感情は無形なもの。明確に形があるなんて思うのは錯覚だ。脳の悪戯。いや、無責任という言葉を発した時点で、自分の気持ちが、ただ楽になる事を選択しただけ。だから、其れは無責任ではなくなる。
失望はさせるが…。

 『チャタレイ夫人の恋人』で著名なD・H・ローレンスの小説のドラマ化したもの。小説は以前に読んでいた。やはり文章の世界と映像の世界では、感想も変わる。

 美しい姉妹の愛と性の遍歴。
時代が急成長する中で、社会の仕組み、機械化で生活が便利になりつつも、人間の行動や価値観や生活様式は、そう変化するものではない。多数派から外れれば斬新というポジティブな言葉に包まれたように見えても、少数派は、ただ滑稽という姿を晒すだけ。いつだって斬新な目立つものは、芸術家と同じで社会的に確立され難く険しい道をステッキなしで歩くようなものだ。
こと女性となれば、
女性らしさ、家庭的な、良妻賢母の偶像に無理矢理型押しされるように従う従順さを求められる。この時代は特にそうだったのだろうというシーンがあった。
平穏な暮らしの為に、我慢して自分の感情に蓋をする人生に、本当の平穏は訪れるものなのだろうか?
この姉妹は、それぞれに自由な精神を愛している。成熟されたセックスも、なくて良いなど考えもしない。愛さえあれば身体の繋がりなど重視しない。生物としては、それは虚しい。当然の欲求ではないか。愛は伝えようとしなければ理解されないのだから。
傍目から見れば、"盛りのついた雌"と陰口を囁かれるのかも知れませんが…。長い道のりには向き合うことも避けられない。
「結婚は人生の墓場」とは、誰が言ったのだろうか?墓場と言ってしまうのは、その関係性による部分が大きいと思う。「結婚は人生の始まりに過ぎない」と個人的には思う。結婚し、子供が生まれて親になり、時が過ぎ、情熱も冷め、恋人感情は既にない、男と女でもない、なんて惰性な日々はあまりに苦しい。綺麗事ではない共に生きることの意味を、互いに探り、求めて、個々の軌道に修正しながら、たまに衝突し生きるのもいいものだ。同じ方向に向いていない時点で別れた方がまし。面倒だからと容易く逃げるのは簡単。無駄に自分が傷付くことすらない。本当に傷付かないのだろうか?無味無臭なドライフラワーのように形だけは美しいようで、日常に感動すらしない不感症のような暮らし。
と、此れは、
姉妹の円熟期の両親が、すれ違いに気付き、愛に踠き、夫婦の存在意義に踏み込んで失ってしまったものを求めて掴む作業でもある。
不惑は平等に訪れるもの。

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 この姉妹と関わる男性2人も、それぞれに苦悩を抱えている。人生を掴もうと不安に揺れながら牧師を務める男の愛への捉え方。男女の垣根を取り除くかのように、同性愛に目覚めるように、「この世を生きるにはあまりに苦し過ぎる」と絶望して号泣し、もう一人は、何不自由ない家柄と階級の子息でありながら、父親との親子関係に苦悩があり、異性にはモテるが、人間(他者)を心から愛したことのない自己愛の強い男。何よりどちらも対極であり、魅力的な人物ではありながら、本人達は、現状の自分に納得していない。分からないと逃避しながら、純粋で狡賢く自分を愛してくれる女性から、自分本位の愛を搾取しようとする。
物悲しい言い訳を放ちながら。

 だから、人間は"無責任"だと思う。
 どう捉えるかにもよるところだけど。

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 人間は、他人の死によってしか学べない事がある。同じ間違いを繰り返さない為に、時に命は、投げ出される場合がある。此れも"無責任"で、後悔しても遅い。
もし…あの時、素直に…
真実を伝える事が出来なかったばかりに、タイミングを逃したばかりに、あくまで自分に忠実に自由を選んだ性格のせいで、取り返しのつかない場所に独り佇む。

 でも、自分の選んだこと。新しいことを取り入れるには、やはり、犠牲が必要なのか。
何事も正解はひとつじゃない、皆が全て幸福であることが無いように、全てを完璧に包む時世が無いように、人間は、その時々で"偏る"もので、"強靭さ"も持ち合わせている。
強さは希望にもなる。

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【何が正しいのか?】
なんて考えるくらいならば、少し忘れて、
恋愛すればいい。
全てじゃないけど、
そう思う。

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