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雨の日のアイテムは傘より犬がいい
玄関を出たとたん、パラパラと小さな雨粒が落ちてきた。空には厚みのある雲が広がっている。「洗濯物を外に干さなくてよかった」ベランダを見上げながら短い脚を必死に回転させる愛犬を追うようにいつもの公園へと向かった。
愛犬がうちに来てから「雨」が生活に浸透している。雨の日は口では「嫌だねー」と言いながら、いつものように玄関を飛び出す愛犬と傘も持たずに散歩に出掛ける。嵐のような雨の時のみ、服を着るのが苦手な愛犬に「いい子いい子」とおやつで釣りながらマジックテープで止めるだけのレインコートを着せ、私は安いレインコートを着て出かける。帰宅すると、レインコートを脱がせてもらった愛犬は嬉しそうに全身を高速回転させしぶきを飛ばす。それに比べレインコートを脱いでもずぶ濡れの私は、その場で服をはぎ取り、水がしたたり落ちないようにクルクル丸めて洗濯機へ直行する。
なんだかんだ言ってはいるが、実はこれが楽しい。まさか大人になってずぶ濡れ体験ができるなんて思っていなかった。童心に返って雨ではしゃげるのは愛犬のおかげである。
とはいえ、愛犬との散歩でなければ、やはり雨の日の外出は億劫だ。いつも着るものに悩む。スリム系のズボンは肌に密着して気持ち悪いし、末広がりのスカートだと雨にあたる面積が増えてしまう。何より、靴の中で水がちゃぽちゃぽする感覚が苦手だ。傘からしずくが垂れて肩を濡らすのも嫌だし、濡れた傘を畳んで持ち歩くのもストレス。愛犬と一緒でなければ、雨の日の外出はちっとも楽しくないものになる。
『オーイ!とんぼ』というゴルフのアニメがある。鹿児島の島出身の女の子(とんぼ)が自然に抗わず自由奔放にのびのびとゴルフをする話なのだが、そのとんぼを育てた漁師のおじいさんがこう言っていた。
「雨が降ったら濡れたらええ。
日が照ったら焼ければええ。
濡れまい焼けまいとするより諦めてしまうんじゃ。
そうすれば心は濡れんし焼けん。」
都会育ちでゴルフの英才教育を受けた子にとっては失敗しそうで怖い強風も、とんぼにとってはどんなことができるかワクワクさせてくれるものとなる。
そうか。雨の日の犬の散歩は、体は濡れているけど心は濡れていないということなのだ。「逃げよう避けよう」より「どんとこい」と構えれば自然と心が弾む。問題は帰宅後の洗濯物の山。願わくは私も柴ドリルができるようになりたい。さすれば本当の子どものように心から雨を楽むのにな。
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