髪を切った
胸下まであった髪を30cm近く切った。
ロングからショートボブぐらいの長さになったので自分の目にも他人の目にも新鮮で、濡れた時の頭の小ささと、乾かす時の手ごたえと、癖毛をいじる指先が消えたことが楽しい。
私は毎回ロングまで伸ばして切ることを繰り返しているのでいつもこの短さのために伸ばしているような気すらする。どの長さの私も、私は気に入っているが、短いということが一番確立するような感覚はある。
他所で滅多にお目にかからないぐらい髪の厚みがあるので、多くの人が自分の髪の層に悩む時がやってきたときに刺してやろうかと思われるぐらいには疎まれる確信はしている。その時期までに付きまとうのはただただ膨らんでいくという悩みで、正直に言えばこの数か月、その悩みを解消する心意気をよそにやっていた。
おおよそ審美とは遠いことに立ち入る時期だと思っていたから、きりのいい今年の末に切ろうと思っていたけれど、結局美しさは自分に影響していて。美しいことを選びにくくなること、美しくなることに臆するとこまで来ていたので踏み切ることにした。
きっと全部がこうだ。自分の適する良さを選ばないと、良さを選ぶことが恐怖になるのだ。目の前の恐怖でいっぱいの存在は結局自分に返していくために存在するのだろう。あなたはこうした方がいいよなんて答えは他人の事情と習慣から、全ての人が受け入れがたいことだから、私は私の美しさを選ぶことにした。
髪を切ること以外にも、踏み切った方がいいと遠くに置いていたことに触れると決めた。必要なことだし、大好きなことだけれど、この世の惨状に加担することと魂を削られる気持ちがすること。その歯車を回す気にはなれなかった。それでも、動く時が来た。もう私の魂は削られない。