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【シカゴでバードウォッチング!】 Cuckoos
日本から帰って来たら、二週間のうちに庭が見事に新緑に覆われていて、みずみずしさが溢れていました。本当に生命の躍動が感じられる美しい季節です。
日本人は初夏というと、「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」という山口素堂の句が口からついて出てくるのではないでしょうか。日本でも新緑が美しく、鰹のたたきも味わうことができました。でも、東京や旅行先で、ほととぎすを目にしたり鳴き声を聞いたりする機会は、残念ながらありませんでした。
友人が勝海舟の一句を教えてくれました。「時鳥不如帰遂に蜀魂」です。「ほととぎす ほととぎす つひにほととぎす」と読むそうですが、私は今まで「不如帰」は知っていましたが、お恥ずかしながら、「時鳥」「蜀魂」という漢字がほととぎすの意味だとは知りませんでした。
調べてみると、ほととぎすにはなんと二十を超す異名が存在するそうです。「不如帰」「時鳥」「蜀魂」「子規」「無常鳥」「杜宇」「しでの田長」「早苗鳥」「田鵑」「勧農鳥」「夕影鳥」「黄昏鳥」「菖蒲鳥」「橘鳥」「卯月鳥」「妹背鳥」「うなゐ鳥」「魂迎鳥」「沓手鳥」「霍公鳥」「杜鵑」等。
そして、『万葉集』には「ほととぎす」が153首も詠まれているそうです。ですから、日本人にとってほととぎすは、姿を見たことはなくても非常に身近な鳥なんですね。
その「ほととぎす」の英語名を調べてみると、Lesser Cuckooと出てきました。Cuckooの英語の発音は「クックウ」。鳥の「カッコウ (郭公)」の英語名は、Common Cuckoo。ということは、「ほととぎす」と「カッコウ」は同じカッコウ目カッコウ科の鳥!?
熟練のバーダーさんに「そんなことも知らなかったの?!」と言われてしまいそうですが、バーディング初心者の私の頭の中では、「カッコウ」と「ほととぎす」は別の種類の鳥でした。(前出記事にもCaspian Ternとコアジサシは違う種の鳥だと思っていたと書きました。どうもそういう思い込みを私はするようです。)ほととぎすもカッコウもまだ見たことがないので、ただ名前によって別々の分類がなされてしまっていたんです。お恥ずかしい・・・。
外見を見てみると、ほととぎすとカッコウは見た目が本当によく似ています。黄色いアイリング(眼瞼輪)と嘴から目の下までの黄色い線、縞模様の胸。
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上の二枚の写真を見たら、あまりに似ていて区別がつかないのがわかりますよね。でも、鳴き声が違うので区別できるそうです。
ほととぎす (Lesser Cuckoo)の鳴き声は、こちら。
カッコウ(Common Cuckoo) の鳴き声は、こちら (緑色の「聞く」をクリック)。正真正銘、「カッコウ、カッコウ」と鳴いています。
Cuckooと名がつく鳥は、シカゴに二種類います。Yellow-billed Cuckoo (キバシカッコウ: 嘴が黄色い) と、Black-billed Cuckoo (ハシグロカッコウ: 嘴が黒い) 。この二種も、ほととぎすとカッコウと同種ということです。
鳴き声は、「カッコウ、カッコウ」ではありません。
Yellow-billed Cuckooの鳴き声は、こちら。
Black-billed Cuckooの鳴き声は、こちら。
シカゴの二種のCuckooの外見は、どちらも胸に縞模様がなく真っ白で、全体的に茶系です。Yellow-billed Cuckoo (キバシカッコウ) は黄色いアイリング(眼瞼輪)で、尻尾の内側には白い縞模様があります。Black-billed Cuckoo (ハシグロカッコウ) は赤いアイリング(眼瞼輪)があり、尻尾には白い縞模様はありません。
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Yellow-billed Cuckoo (キバシカッコウ)もBlack-billed Cuckoo (ハシグロカッコウ)も、雨が降る前によく鳴くので昔話の中でよく"rain crow" (雨のカラス) と呼ばれたそうです。
上記のカッコウ目カッコウ科の鳥に共通していることは、スズメ目の前三本・後ろ一本の三前趾足と違い、足指は前後二本ずつの対趾足であり、また自分で子育てをせず托卵 (自分の卵と誕生した雛への世話を他の鳥に托すこと)をするということです。雛は、本能的に他の卵を巣外へ落とす習性があるそうで、自然の厳しさを感じますね。
いつか自分の目でほととぎすとカッコウを見てみたいと思います。