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【シカゴでバードウォッチング!】 Long-tailed Duck コオリガモ
先日いつもの公園で、カナダの北部のツンドラ地帯から渡ってきた鳥、Long-tailed Duck (コオリガモ、氷鴨)に魅せられてしまいました。
この鳥は海鳥ですが、繁殖期にはツンドラ地帯の湖に生息していて、冬になると米国の東海岸と西海岸に行く鳥と、五大湖に来る鳥があるそうです。日本では冬に主に北海道や青森県で見られるようです。
初めてこの鳥を見たのは、2018年でしたが、その時は遠かったのと雌か幼鳥だったために、「ふう〜〜ん。尻尾が長い鴨の一種ね。」としか思わず、ほとんど印象に残っていませんでした。
ところが、その日は全く違いました。今回の邂逅はあまりの衝撃でしばし言葉が出ず、ずっと見つめ続けました。かなり近くから、しかも高いところから水に浮いているこの鳥を見たので、鳥の背面をはっきりとよく見ることができたんです。まるでバレリーナが美しいコスチュームを纏って静かに佇んでいるようでした。
背面の黒っぽい羽の上に、星のような形をした真っ白な羽が、ケープを羽織っているかのように重なっていたんです!こんな鳥、今までに見たことがありませんでした。
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短い嘴は、先端と付け根は黒いですが、中程が綺麗なピンク色です。頭部はフワフワの真っ白な帽子を被ったようで、胸と腹部も真っ白。顔は薄いグレーか栗色で、頬に黒くて大きな円形斑があります。淡い灰/栗色の顔の中で白いアイリングがあるつぶらな目が目立ちます。そして、細長くて黒い尾羽が上へ向けてスッと伸びています。
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真っ直ぐに伸びた黒い尾羽 ©Dan Lory
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これは、Long-tailed Duckの11月から4月頃の雄の姿です。繁殖期の姿はシカゴでは見ることができませんが、繁殖期に生息しているカナダでは、下の写真のようにかなり黒ずんだ色になり、別人(別鳥?)です。
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ML53763701 by Jay McGowan, Macaulay Library
では、雌はどうでしょう。全く同じ種とは思えないほど地味です。頬にある薄黒い円形斑だけが同じと言ってもいいぐらいです。尾羽もLong-tailed Duckとは呼べないほど短いです。この一羽だけを見たら、私には何の鴨だか全く見当がつきません。
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Long-tailed Duckは、潜水力が突出していて、水深61メートルほどまで潜れるそうです。ちなみにスキューバダイビングをする人間は、40メートルが限界だとのことですから、どれほどすごいかわかりますね。
Long-tailed Duckという名前は新しくつけられたもので、以前はOldsquawと呼ばれていて、今でも年長のバーダーがこの古い名前を使うことがあるそうです。Oldsquawというのは、アメリカ先住民の老女を意味しているので、政治的に正しくないという判断で近年変更したということです。確かに、長くて優雅な尾羽を表したLong-tailed Duckの名前の方がずっとふさわしいと思います。
このLong-tailed Duckの日本語名は、冬の北海道で流氷のある水面によく姿を見せるのでコオリガモ (氷鴨) になったらしいです。また、鳴き声が「アオッ、アオナ」と聞こえるので、北海道ではアオナと呼ばれているとのことです。音声はここから聞いてみてください。
私にとってLong-tailed Duckは、生まれて初めて双眼鏡を通して見た Northern Flicker (ハシボソキツツキ、初めての投稿 参照)と同じぐらい衝撃的で忘れられない鳥になりました。
ただ、この一羽のLong-tailed Duckはここ数週間ずっと同じところに一羽だけでいるので、体力が落ちているのか、病気なのかと心配しています。問題ないことを祈るばかりです。