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【シカゴでバードウォッチング!】  Rough-legged Hawk   ケアシノスリ

先日、少し暖かい日があったので、いつもの公園に行ってみました。だいたい常連の鳥さんばかりでしたが、いつもNorthern Harrier (アメリカチュウヒ、前掲記事参照) がいるあたりから飛び立った鳥がいたのでNorthern Harrierが戻ってきたのだろうと思ってみていると何か違う。よ〜〜〜く見てみたら、繁殖期の夏の間、北極圏のツンドラ地帯にいる鳥でした。摂氏マイナス14度、稀にマイナス20度になるシカゴは、ツンドラ地帯の冬よりずっと暖かいところなので渡ってきているんです。

その鳥は、Rough-legged Hawk です。脚が足指の付け根まで羽毛に覆われていることから、英語ではRough-legged (毛むくじゃらの脚)、日本語では「毛脚ノスリ」と呼ばれています。日本では、数少ない冬鳥として、主に北日本や日本海側に飛来するそうです。ご覧になった方、いらっしゃるでしょうか。

毛むくじゃらの脚に注目。ツンドラ地帯で暮らすには暖かそう!
ML281976891 by Daniel Campeau, Macaulay Library

Rough-legged Hawkには、淡色個体と暗色個体の二種類があります。淡色個体は一般的に灰白色で、腹部の色が濃く、翼の下面の翼角("手首 "の部分)に黒斑があり、尾の先に黒い帯があります。暗色個体は、下の写真を見ていただければおわかりになるように、文字通り褐色の部分が多いです。どちらも初列風切りの先が濃褐色で、嘴は比較的小さく、体長は47-52 センチ、翼を広げると、120~153センチもあります。

Rough-legged Hawkの淡色個体

白い部分が多い淡色個体を下から見上げたところ。手首の部分の黒斑が目立ちます。      ©Dan Lory
淡色個体は、翼の上面も白い部分が多い。
ML624933284 by Woochan Kwon, Macaulay Library

Rough-legged Hawkの暗色個体

暗色個体は、胴体も翼の裏側の上部も濃褐色。そのため白い部分とのコントラストが目立ちます。      ©Dan Lory
暗色個体は、翼の上面も濃褐色。      ©Dan Lory

これだけ羽色が違うと、私のような初心者は、別の種の鳥だと見間違えてしまいます。

繁殖期の夏には、ノスリの仲間の中では一番北、つまり北極圏のツンドラ地帯に生息しています。海岸の断崖の岩棚やツンドラ地帯の地上、低木上に巣を作ります。普通は枝をたくさん使いますが、ツンドラ地帯らしくカリブーの骨を使うこともあるそうです。そして、5月頃に産卵し、抱卵中の雌に雄がせっせと餌を運びます。

Rough-legged Hawkの餌は、夏の間は主に齧歯類の小動物や鳥ですが、冬になるとネズミなどの小動物が見つけにくくなるため、魚や虫、時には道で轢かれてしまった動物なども食べるらしいです。

他の鷹と違い、ハヤブサ科のAmerican Kestrel (アメリカチョウゲンボウ) のように空中でホバリングをするのが大きい特徴です。

私が今まで書いた記事の中で、北極圏からシカゴに越冬に来る鳥は、このRough-legged Hawk以外は以下の四種類の鳥です。

Snow Bunting (ユキホオジロ、前掲記事参照)

夏のツンドラ地帯にいる時のSnow Buntingのオス
ML103563521 by Luke Seitz, Macaulay Library

Snowy Owl (シロフクロウ、前掲記事参照)

シカゴに来た時のSnow Owlのメス。夏と変わらない羽色。     ©Dan Lory     


Lapland Longspur (爪長頬白、前掲記事参照)

夏のツンドラ地帯にいる時のLapland Longspurのオス
ML31721801 by Ian Davies, Macaulay Library


Long-tailed Duck (コオリガモ、前掲記事参照)

夏のツンドラ地帯にいる時のLong-tailed Duckのオス
ML53763701 by Jay McGowan, Macaulay Library


先日たまたま図書館で椎名誠の『極北の狩人』が目に留まったので借りてきて読んでいると、夏のツンドラ地帯について書いてある文章がありました。

ツンドラというのは実に歩きにくいのだ。雪のないツンドラはゴツゴツと荒れ地坊主のようになった苔の生えた隆起の連続で、厚い苔がクッションになっていて不自然に足が潜り、歩くリズムが作りにくい。

椎名誠『極北の狩人』170ページ

ツンドラ地帯は、一年の大部分は凍っている永久凍土ですが、夏季、表面が溶けて蘚苔類、地衣類の生い茂る湿原となり、足を踏み入れるとズブっと「潜って」しまうらしいです。こんなところで繁殖し子育てをする鳥たち。私の全く見たことのない世界で大切な時期を過ごしてきた鳥たちが、シカゴに来て姿を見せてくれる。そして、その鳥たちを通して私が極北の地に思いを馳せることができるのも、バーディングの楽しみの一つです。


2024年はこの猛禽で幕を閉じます。新年の最初の記事は、かわいい小鳥にしようかと考えています。投稿した記事を皆さんが読んでくださるのは、私にとってとても嬉しいことで、毎回励まされて今年一年を過ごすことができました。心から御礼申し上げます。

2025年も皆さまにとって恵み多い年になりますように。良い年をお迎えください。

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