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【シカゴでバードウォッチング!】 Surf Scoter
今年になってから、可愛い鳥、哺乳類、猛禽と書いてきましたので、今回は日本にいない水鳥 (もしくは迷鳥)、しかも冬にしか見られない鳥を選びました。
英語名をSurf Scoterといい、繁殖期にはカナダとアラスカの北部に生息しているカモ目カモ科クロガモ属の鳥で、越冬のためミシガン湖に渡ってきます。水鳥たちはたいてい陸から離れた水面にプカプカ浮いているので、双眼鏡では存在確認はできても詳細は分かりにくいです。そこで登場するのがフィールドスコープですが、私たちは持っていません。それで私は今までこの鳥をじっくり見たことがなかったんです。
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今回取り上げるにあたり調べてみて、あまりの特徴的な顔に衝撃を受けました。百聞は一見にしかずですので、下のSurf Scoterの写真をご覧ください。
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ML344423711 by Dorian Anderson, Macaulay Library
「なんだ、この顔は!?」ですよね?
嘴がまるで大きなプラスチックでできているみたいだし、それを無理やり顔にねじ込んでしまったの?
鼻の穴みたいなものがあるけど、いったい何? 他の水鳥に比べてずっと大きいんじゃない?
それに嘴の横にある黒くて四角いパッチは何? ただ単におしゃれな模様?
嘴の先が曲がっているけど、どうして?
おでこに「熱さまシート/冷却シート」を貼っているの?
うなじに白いパッチ? なんのため?
嘴の先はオレンジでその上が赤、そして嘴と顔が接するところにもオレンジと赤があり、その他は白と謎の四角くて黒いパッチという奇妙奇天烈な組み合わせは、何か意味があるの?
頭に比してかなり小さい、ボタンのような目。それで見えているの?
と、次々に浮かぶ疑問。 あまりにユニーク! 一度見たら忘れられない。私の頭の中には「ブサオ」という言葉しか浮かんでこない・・・。
皆さんはどう思われたでしょうか。ブサカワ? ぬいぐるみにして抱っこしたい?
和名はアラナミキンクロです。漢字で書くと、「荒波金黒」。ヤンキーの「夜露死苦」を連想してしまいました! いったい日本人の誰がこの荒波金黒という名前を思いついたのでしょうねえ。どんな鳥類学者さん?!
正面から見るとこんな感じです。
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それにしてもすごい嘴!白地に赤とオレンジのXの文字?
四角くて黒いパッチが顔の色と同化して見えないから、嘴が細く見える。 目が怖い。
ML308065741 by Robin Ohrt, Macaulay Library
全身はこんな感じです。クロガモ属だと分かりますね。カラスみたいに真っ黒。そして、なんと足まで赤いです!
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ML150793081 by Mathew Malwitz, Macaulay Library
うなじの白いパッチがどうなっているのか気になったので、写真を探してみました。四角い形なのかと思っていましたが、違いました。
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Jack Daynes, shadeTreeImaging.com
https://shadetreeimaging.com/gallery/surf-scoter/
もちろんこんな派手な姿は、雄です。本当に鳥の雄って、ド派手好きですよね。
雌の姿は下の写真をどうぞ。全体に褐色で、眼先と耳羽とうなじに白斑があり、嘴は灰褐色です。足は黒っぽいです。いつもながら、全く同じ種には見えませんよね。
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水鳥の多くはシーズンごとに新しい相手とつがいになりますが、Surf Scoterはペアの絆が非常に強く、同じペアが毎年繁殖地に戻ってくることが多いらしいです。もしかしたら、あの派手な嘴の色合いと模様で雌は相棒を見分けているのかもしれませんね。
また、他の鴨類とは異なり、Surf Scoterは無口な鳥と言われるほどあまり声を発しないため、鳴き声はあまり知られていないそうです。でも、このページでお聞きになれます。いかつい顔なので大きくがなりたてる声を想像していましたが、全く違いました。あ〜あ、また見た目で判断してしまった愚かな私・・・。
Surf Scoterは、深海潜水能力が優れているので、採餌の時に水深12メートルぐらいまで潜り、1分以上水中にとどまることができるらしいです。あの大きな鼻の穴みたいなのがあるけど、水中で水が入ってこないのかしら・・・。水中に入ると
、蓋みたいなのが出てくるとか。本当でしょうか。
主食は軟体動物、甲殻類、小魚、ムール貝などの小型二枚貝で、あの独特な嘴は、貝殻から効率よく餌を取り出すために完璧に適応した形になっているそうです。繁殖期には、淡水の営巣地に生息する昆虫や植物を食べます。
またSurf Scoterは、鴨の中では寿命が比較的長く、野生では二十年ほど生きることができるそうですが、捕食やその他の自然の脅威により、短命になってきているということです。
Surf Scoterの繁殖地はカナダとアラスカの北部という遠隔地であり、生息地域がほとんど海洋であるため、観察や研究が難しく、大きなサイズと特徴的な外見にもかかわらず、他の多くの鴨類ほど研究が進んでいないそうです。
謎の多いSurf Scoter。今度会えたら、ブサオの全身にもう少し敬意をはらって眺めてみたいと思いますが、そんなに岸に近いところには来てくれないでしょうねえ。謎は謎のままの方がいいかもしれませんね。
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向こうにいるのは、Common Goldeneye (ホオジロガモ) のメス。 ©Dan Lory