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「寓話」

冷たくなる風に似た、口笛吹いてる彼女の横顔、
くちびる尖らせ長いまつ毛が上下する、
星灯かりの下、青い夜に浮かんでいるのはしなやかなる影法師、
浅瀬に着いた小舟みたいに浮いている、下弦の月に口づけしているようにも見えた、

鯨も眠る深海で、廻るように下降してゆく海蛇は、
白い肌を濃い濃い青に染めさせて、いつか眺めた希望のときを思い浮かべた、
めぐりめぐる季節のことなら万年生きた蛇にしかわからないだろう、

蛇は思う、
夢見た金の草原で、夜空見上げる少女とその姿を愛おしそうに眺めてる、
赤毛を逆さの巻き髪にした痩せた牧童、

鳴らない指笛、仔羊たちが鈴を揺らして揺らしてた、

蛇は見ていた、
楽園さえ霞むほどの金の草原、垂れた穂まで黄金色に輝いて、
まるで流し読むかのように、風は四隅ほころぶ聖書をぱらぱら捲ってた、

振り返れば遠く遠くへ消えてゆく、
希望の草原、その夜の、
呼吸さえも惜しむくらい、じっと見つめた恋をしている人のこと、
ふたりの間にあるのは青い、夜の気配と近づく冬の棘のある風、

雪のように氷の粒が降る深海、さらなる深みへ旅を続ける海蛇は、
白い肌を淡い紅に染めてしまって、合わせるたびに逸らす目のこと、
ふたりの間に揺らめく小さな灯のこと、思い出してた、
それは泡沫、一度しかない光の記憶、

photograph and words by billy.

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ビリー
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