「高鳴る胸は君のせい」
世界中の真夏をすべて集めたくらいに赤くて熱い土、君はそこで彼らと肩を抱き寄せ合って円になっている。
胸の前で手を組んで、バラバラに砕けてしまいそうな胸の内を繋ぎ止めていた。
空を眺める。
そして目を閉じる。首筋から背中へと熱を持った滴が伝わる、食いしばっているはずなのに奥のほうから震えが止まってくれない。
すぐそばに見る彼らはくだらないお喋りで笑い合っている「いつもの」少年じゃないみたいに見えた。
やがて少年たちは散り散りになる、広大なグラウンドでそれぞれがそれぞれに立つ。
中央の小高い丘には彼がいる。キャップを深くかぶり直し、痩せっぽちの気弱な王様のように、仲間たちに背中を見せる。
始まりを待つ彼らはどこか頼りなげな背中の1番を見つめていた。
広すぎるグラウンドの真ん中にいる君はまるで独りぼっちみたいに見える。
大きく深い呼吸を三度。
震えている、それが伝わる。南の真上には落ちてきそうなほどの太陽が私たちを睨んでいる、誰一人として分け隔てないように。
サイレンが鳴り試合の開始が告げられた。
君の相棒はグラブを叩き、一球目をサインする、君の遥か後ろの仲間たちはきっとその一瞬を待っている。
「……がんばれ」
ありきたりでしかない、あまりにも月並み過ぎることを思う。直視していられないのに目を離すこともできない。
何度かうなずいた君は息を吐き出し動作を始める。
夏はまだ始まったばかりなのに、ただそれだけで私は泣いてしまいそうだった。
photograph and words by billy.
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