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「うたかた」

風の手紙が君から届いた、懐かしい森の匂い、
溶けずに残った淡雪と、色づき始めた花の色、
絵の具の味や、お星さまたち笑ってるかな、
背伸びをしても追い越せない、木々がその実をつけ始めてるとすべらかなる手書きで知った、

色鮮やかなる季を迎える今日、
君は僕は四季の迷い子だと気づく、
振り返りて見る足跡の、右や左へ揺れる爪先、
手にはできない光を追った夏のこと、
あの日みたいにまた笑えるのかな、
払えば落ちる砂埃を、いつまで経っても消えないような気がした日々はかすんでしまった、

風につけた名前を教えてくれるかな、
私はいまも森で風に話しかけている、
川の飛沫に足を差し入れ、真上をゆく鳥とおしゃべり、
君の生きる海の近くに雪なんて降るのかな、
背伸びを続けて色のついた花のふりして、うまく抱き合うことができずに泣いた日のこと、

色鮮やかなる初夏を迎えた今日の日に、
金色の雨あがり、せせらぐ森の木漏れ日、
初夏の日は過ぎてゆく、

淋しくなんてないはずなのに、お尻についた砂を払うときに見つけた影は、
私がいつやら大人になったと教えてくれた、

君に問う、僕は問う、
その問い、いつか答えがあるのかなんて知らない、
四季に迷い、迷いにけれど、
進むうちに花は枯れて身は熟れる、
歩いた道は戻れはしない、ほら見て空を、
いまや雷雨が始まる季節だ、

君や僕の真向かいから来るこの風は、
答えを欲しがる私を、君を、笑うだろうか、
元気でいてくれたらさえ、それでいいよと、
君は、僕は、森と海から、遠くの人を思うんだ、
いつか僕らの一人称が変わるときが来るだろう、
その日まで、笑っていようと風を手紙に託すんだ、

photograph and words by billy.

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