InDesign|〈4〉テキストの流し込み
今回のお題は「文章を組んでみる」の4つめのポイント、「〈4〉テキストの流し込み」です。前回作った本文フォーマットにテキストを読み込む手順を見ていきます。
作例動画7分38秒くらいからの内容です。このシリーズも今回で一区切りになります。
ちなみに出版・印刷界隈では、原稿をフォーマットに落とし込むことを「流し込み(ながしこみ)」と呼びます。「テキストの流し込み」「本文を流し込む」みたいな感じでやりとりすることが多いです。なので本稿もそのように書いています。
今回は主に次のような手順を見ていきます。
テキストファイルを直接読み込む
テキストを別のファイルに移す時、コピー&ペースト(以下コピペ)を使う事が多いかもしれませんね。
もちろんコピペでも良いのですが、InDesignはテキストデータを直接読み込めます。せっかくなので、ここではテキストデータを読み込む手順を見ていきます。
書式の設定
テキストを流し込んだら、見出し等の書式を設定します。
「書式(しょしき)」と聞くと、帳票や履歴書のような、書類の形式のことが思い浮かぶかもしれませんね。
InDesignではフォントや文字の大きさ等、文字の体裁のことを「書式」「書式設定」と呼びます。
この作例では「文字パネル」「段落パネル」を使って設定していきます。
それでは順番に見ていきましょう。
* * *
【1】まず流し込むページを表示する
作例動画ではこのパートの最初に「ページパネル」でページを選択状態にしています。これは、うっかりマスターページにテキストを流してしまわないようにするためです。
私もたまにやってしまうんですけど、マスターページでフォーマットを作った勢いで、そのままマスターページにテキストを流してしまうことがあります。(私だけかな……)
作例動画では確認もかねて「ページパネル」を選択状態(正確にはダブルクリック)にして、確かにレイアウトページが表示されているかチェックしているというわけです。
……なので、必ずしもページを選択しなければいけないわけではありませんが、テキストを流し込む前に、画面表示を確認しておくと安心かもしれませんね。
【2】テキストデータを配置する
◉文字ツールでフレームにカーソルを表示
先頭ページを表示したら、「文字ツール」でページ上をクリックします。
このページには、以前作ったマスターページのフレームグリッドが反映されています。ページをクリックするとフレームがアクティブになり、文字カーソルが点滅するかと思います。
カーソルが点滅したら、テキストを読み込んでみましょう。
◉テキストファイルを「配置」する
フレームがアクティブになったらテキストデータを読み込みます。
まず「ファイルメニュー」から「配置」を選びましょう。ファイル選択画面が表示されるので、読み込むデータを選択します。作例ではプレーンテキストデータ「gusukobudorino_denki.txt」を選びます。
さらにここでは、画面内の「読み込みオプション」をONにして「開く」をクリックします。
◉読み込みオプションの設定
「読み込みオプション」をONにしたことで、オプション設定画面が表示されます。プレーンテキストデータの場合、上の図のような設定画面が表示されます。ここでは上図の状態で「OK」をクリックします。
【2023年9月30日追記】
モリサワ note編集部にテキストの文字化けについて詳しい記事がアップされていましたので紹介します。興味のある方は参考にしてみてください。
◉溢れたテキストのリフロー処理
オプション設定の「OK」をクリックすると、フレームにテキストが流し込まれます。作例のテキストは長文なので、到底見開きには収まりません。ところが動画を見ると、自動的にページが増えてテキスト全文が配置されるのが分かります。
通常、長い文章を配置するとフレームに入りきらず、文章が溢れてしまいます。このことをテキストオーバーフロー、文字溢れと呼びます(下図)。
ですが、作例のようにマスターページのフレームを使ってテキストを配置すると、文字が溢れた時、InDesignは自動的にページを増やし、テキスト全文を最後まで流し込んでくれます。このように、溢れたテキストが自動で処理されることを「リフロー処理」と呼びます。
InDesignの初期設定では、次の条件でリフロー処理が行われます。
マスターページの見開きに、連結されたテキストフレーム(フレームグリッドまたはプレーンテキストフレーム)がある時
マスターページのテキストフレームを、プライマリテキストフレームに設定してある時
作例のフォーマットは、この条件にあわせて準備していました。だからテキストを流した時に、リフロー処理が適用されたというわけです。このように、あらかじめマスターページでテンプレートを用意しておけば、小説やエッセイ等の長文を手早く、効率的に流し込めます。
とっても便利なリフロー処理ですが、ちょっと気をつけたいこともあります。ポイントはInDesignの初期設定です。詳細は別の記事にまとめましたのでリンクしておきます。時間のあるときにご覧ください。
【3】テキストを編集する
テキストを配置できたら、内容を確認しながら編集しましょう。不要なテキストを削除したり、文字サイズ等の書式を調整していきます。
◉編集を始める前に…(画面表示について)
編集を始める前に、画面表示を調整してみましょう。
初期設定ではフレームグリッドとレイアウトグリッドのマス目が表示されていますよね。でも編集中に「グリッドのマス目で文字が見づらいし、作業をやりにくい!!」と思う時があるかもしれません(よく言われます)。そういう時は、いったんグリッドを非表示にしておきましょう。
「表示メニュー」の「グリッドとレイアウト」から、各グリッドの表示を切り替えます。
フレームグリッド(青いマス目)
「表示メニュー」の「グリッドとガイド」から「フレームグリッドを隠す」を選択すると、青いマス目を非表示にできます。
レイアウトグリッド(緑のマス目)
「表示メニュー」の「グリッドとガイド」から「レイアウトグリッドを隠す」を選択すると、緑のマス目を非表示にできます。
グリッドを再表示したい時は、各メニューを選択し直せばOKです。編集中は頻繁にグリッド表示を切り替えますので、ショートカットを覚えておくと良いかもしれません。
◉作成指示等の不要なテキストを削除する
この作例では、青空文庫さんのテキストを使っています。テキストの冒頭には、ルビ(読み仮名のこと)や見出しの表記について指定(レイアウトや組版の指示の事)が書かれています。実際の業務でも、編集者やクライアントからの指定が原稿に記入されていることがあります。
(註記:青空文庫が公開している元データには、この他に底本や編集協力等の奥付情報が記されていますが、作例用のテキストでは省略しています。本作の奥付情報は作例動画の最後に表示しています)
レイアウトを進めるためには、この指定が必要ですが、実際の誌面には掲載しない情報です。内容を確認したら削除しましょう。
ちなみに読み込んだテキストをInDesign上で編集しても、元のテキストデータには影響ありません。削除した後、もう一度指定を確認したい時は、元のデータを見れば大丈夫です。
◉本文の書式
テキストの整理ができたら、フォントや文字サイズ等の書式を整えます。
まず本文の書式を見ていきましょう。
この作例では、テンプレートのフレームグリッドを使ってテキストを配置したので、本文のフォントや文字サイズには、フレームグリッドの書式が適用されています(フレームグリッドの書式については前回参照)。
実際の業務では、さらに細かく設定を詰めていきますが、ここではひとまず流し込んだままの状態でOKとします。
◉見出しの書式を整える:「文字パネル」と「段落パネル」
次に見出しの書式を整えてみましょう。
まず、物語のタイトルと著者名を1行にまとめます。
次に、文字サイズや本文との間隔を調整します。ここでは「文字パネル」と「段落パネル」を使ってみましょう。
「文字パネル」はフォントや文字サイズ、行送り等、文字に関する書式を設定できるパネルです。
一方の「段落パネル」は段落間の間隔や字下げ(インデント)等、段落に関する書式を設定できます。
◉見出しの文字サイズを変更する
まず、文字サイズの調整です。
タイトル行を「文字ツール」で選択状態にしてから、「文字パネル」で大きさを変更します。見出しは本文よりひとまわり大きく「18Q」にしてみました。本文は13Qなので、だいたい1.4倍くらいの大きさでしょうか。気持ちしっかりめに大きくしています。
◉見出しの前後に間隔が空く理由:「グリッド揃え」
ところで作例動画を見ると、文字を大きくした時、なぜか本文との間隔が少し空きました。文字を大きくしただけで行間等は変えていないのに、なぜこのように間隔が空くのでしょう? この挙動は、フレームグリッドのマス目に文字を揃える「グリッド揃え」という機能によるものです。
フレームグリッドのマス目(文字枠)は文字の大きさを表しています。このマス目よりも文字が大きいと、当然マス目からはみ出しますよね。
この時、InDesignはグリッド揃えの設定にあわせて、自動的に行の位置を調整するんです。
この作例では、タイトル行が本文2行分の中央に調整されています。いわゆる「見出し2行取り」の状態です。(下図)
少し込み入った話になるので、本稿での解説はここまでにしておきますが、参考になりそうな記事をリンクしておきます。
引用元は「InDesignの勉強部屋」さんの記事です。当該バージョンはCS3ですが、この機能の特性は現行バージョンとほぼ変わらないため問題ないかと思います。ご興味のある方、すぐに確認したい方は下記よりご覧ください。
このグリッド揃え、InDesignを使い慣れない段階では、ちょっと分かりにくい機能かもしれません。このブログでも別の機会を設けたいと思います。
◉見出しと本文の間隔を空ける
次に、見出しと本文との間隔を「段落パネル」で調整してみます。
タイトル行を選択状態にしたまま、「段落パネル」の「段落後のアキ」に本文の2文字分の大きさ「26Q」を半角英数字で入力してみましょう。すると、タイトル行と本文の間が広がります。
いわゆる「見出し2行取りセンター、見出し後1行アキ」という状態です。
「段落後のアキ」は選択している段落と、次の段落の間隔を調整する項目です。初期設定の単位は「ミリメートル」ですが、作例のように文字の大きさで値を入力することもできます。「2文字分空けたい」「2行分空けたい」という時、「13Qの2文字分って何ミリだっけ??」と換算しなくても済むので便利です。
◉著者名の書式を整える
最後にタイトル行の著者名を調整します。作例では次の2つの調整を行いました。ここまでで、この作例の手順は完了です。
全角スペースを挿入して、タイトルとの間隔を2文字分空ける(全角スペースの文字サイズはタイトルと同じ18Q)
タイトルと差別化するため、著者名の文字サイズを少し小さくする(本文と同じ13Qに変更)
終わりに
というわけで今回は、マスターページのテンプレートを使ってテキストを流し込み、書式を整えていきました。
本編で紹介したように、テンプレートを利用することで、リフロー処理が働き、長文のテキスト全文を一気に読み込めます。
さらにテンプレートのおかげで、テキストを流した段階である程度、基本の体裁が整います。その後は見出し等、必要な箇所の書式を調整すれば良いので、流し込んだ後の編集も効率的に進められるでしょう。
また、書式の編集に「文字パネル」や「段落パネル」といった専用パネルを使いました。
デフォルトで表示されている「プロパティパネル」や「コントロールパネル」は手軽で便利なんですが、どちらも簡易編集向きの機能です。より詳細な設定を行う場合には、機能に特化した専用パネルを使うと便利です。
頻繁に使う機能があるようなら、その機能のパネルを常に表示しておくとよいでしょう。
というわけで作例動画の手順はここまで。ひとまずは完成です。
本当に基本的なことばかりですが、ここで紹介した機能だけでも、ある程度の形を作れるようになると思います。
実際の書籍では読みやすい文章にするため、さらに手を入れていきます。
内容にあわせて書体を選び直したり、禁則処理や約物(やくもの:括弧や句読点のこと)を整える日本語組版の設定を行います。より一層読みやすく、効率良く作るための機能をいくつか紹介しておきますね。
◉読みやすい文章に整える「日本語組版機能」
InDesignには日本語の文章を読みやすくするための機能があります。それが「日本語組版機能」です。禁則処理や文字組空き量設定といった項目をカスタマイズして、文章を整えていきます。
日本語組版機能のことは別の機会に紹介したいと考えていますが、興味のある方は、以下のAdobe公式ブログをご覧ください。すごく分かりやすいので参考になると思います。
◉書式を登録するスタイル機能
見出しのように繰り返し使う書式を、その都度「文字パネル」等で設定するのは大変です。また、本文の細かな書式も一括で管理できると便利ですね。
こうした書式を登録し、一元管理できるのがスタイル機能です。InDesignには「段落スタイル」「文字スタイル」という2つのスタイル機能があります。とっても便利なので、ぜひ活用してほしい機能です。
スタイル機能についてもAdobe公式ブログの記事があるのでリンクしておきます。
◉本編以外のページ
最終的に書籍にする時、表紙、扉、目次、奥付等も必要になるでしょう。
中でも目次は、本編の見出しを抽出する「目次機能」を使うと便利です。見出しを抜き出すと同時に、見出しのページ番号も抽出できます。
ただし、目次機能を使うためには、抜き出す見出しに「段落スタイル」を適用しておかないといけません。先述したスタイル機能は、単に体裁を整えるだけでなく、こうした編集機能にも応用できます。なので「スタイル機能は書籍編集には必須」といってもよいかもしれません。
目次機能の詳細は、ひとまずAdobe公式マニュアルをご覧ください。
さて、長々と書き連ねてきた一連のシリーズも、今回で一区切りです。
まずはここまでご覧いただきありがとうございました。
この後は、ここまで作ったレイアウトをベースにしながら、スタイル機能や日本語組版機能についても紹介していきたいなと考えています。
今後とも、何かしらのお役に立てれば幸いです。
追訂履歴
2023年9月30日
「【2】テキストデータを配置する」内「読み込みオプションの設定」に、モリサワnote記事への引用リンクを追加