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ハイコンテクストが語れるまちは強い。

10月3日(木)〜5日(土)の3日間、山口県長門湯本温泉へ木下 斉さんの狂犬ツアー@長門湯本に行ってきました!

長門湯本温泉は、山口県でも門司港に近い日本海側にあたり、静岡県からだとなかなか行きにくい場所。
新幹線だと新山口駅まで行って、レンタカーで1時間半💨
飛行機だと宇部空港または北九州空港からもレンタカーで1時間半かかる💨💨
今回は、LDL(LocallyDrivenLabs)のメンバーであり、狂犬ツアー@上天草でご一緒させていただいた宮崎さんと申し込みしたので、北九州空港からレンタカーを借りて、宮崎さんを小倉駅でピックアップ。
門司港で昼食を食べて長門湯本温泉へ向かいました。

今回、狂犬ツアーの会場でもあり、宿泊先でもある「大谷山荘」さん。
西日本を代表する高級宿でもあり、全客室98室と宿泊施設の大きさにもびっくりしました!

大谷山荘と音信(おとずれ)川
夜の暗闇に、浮かび上がる「大谷山荘」


1.わずか10年で劇的再生を遂げた長門湯本温泉。

狂犬ツアー@長門湯本、グリーフィングタイム。約40名が参加。


長門湯本温泉は、600年前から温泉地として栄え、山口県を代表する温泉とされる「防長四湯」の1つに数えられる知る人ぞ知る温泉地♨️

そして、昔から地元の人達に愛されてきた『恩湯(おんとう)』。
歴史をさかのぼると、1427年(室町時代)、曹洞宗・大寧寺三世の定庵禅師が長門国一宮の住吉大明神からのお告げによって発見した“神授の湯“と伝えられている山口県最古の寺湯。(今も、恩湯の湯源の所領は「大寧寺」)
昭和20年頃までは『恩湯(おんとう)』に入りに周りに温泉を持たない宿が並んだ。
戦後、『恩湯』は市営になり、昭和40年代の高度成長期とともに人々の生活様式も変わり、旅館が温泉を引き込み、温泉を持ち、高度成長期とともに旅館が巨大化していき、昭和58年には年間/39万人が訪れた。
しかしながら、平成18年には年間/18万人に減少。2014年、150年の老舗旅館が廃業し、取り壊され、がれきの山ができた。

その光景を目の当たりにしたのが、当時、経済産業省から長門市経済観光部理事に着任した木村隼斗さん。

木村隼斗さん。長門湯本を変えたキーパーソン。

地元の後継者たちに「10万円持ってこなければ、何もやらない」と言った張本人。行政マンから地元の後継者に自ら出資をさせ「cafe&pottery音」を作った。
そして廃業・老朽化した「恩湯」や旅館の建て替え、回遊できるまちづくりを目指して「長門湯本温泉まち株式会社」が発足しました。

2014年に経営破綻した旅館跡には、星野リゾートを誘致。高級旅館「界」を建設が決まり、温泉郷全体の再生に取り組むという協定を結び、同じく2016年に長門市は、星野リゾートとの協力を含めて『長門湯本温泉観光まちづくり計画』を策定し、そこから民間、地域、行政が一体となった温泉街再生に向けた取組みがスタート。

また、市営となっていた『恩湯(おんとう)』は建物の老朽化・利用客の減少に伴いの「恩湯」も施設の老朽化や利用客の減少により、2017年5月に公設公営での営業を終了し、恩湯の民設民営化の機会にあたり、その存続を自らの責務として、地元の旅館若手、飲食店、デザイナーの4人のメンバーにより『長門湯守株式会社』が同年2017年に設立されました。

『恩湯(おんとう)』は民設民営によって2020年にリニューアル。
同年3月に「星野リゾート界 長門」もオープン。

観光まちづくりプロジェクトとして2020年度土木学会デザイン賞、グッドデザイン賞を受賞

長門湯守株式会社


2017年から2020年と約3年あまりで、行政と地元の民間事業者(若手旅館経営者や地元事業者)がタックを組み、『恩湯』の民営化と、公共インフラ整備を進めて完成させてしまうスピードの早さ。

その間、100回を超える地域のイベントや住民説明会、社会実験などを地域の若手が積極的に役割を果たしていったことも大きな原動力となった。

2023年には、一般社団法人湯道文化振興会が主催する「湯道文化賞」で最高賞にあたる「湯道文化賞」を受賞。今では、海外メディアからも注目される旅行地にもなっています。



2.夜の町並みもいい雰囲気。

今回、狂犬ツアーのプログラムには、1日目には、夕食は大谷山荘さんの特別懐石料理を堪能後、まち歩きを予定してくれてありました。
二次会に行ける方(任意)は、大谷山荘さんから川沿いを歩いて5分ほどのところにあるオーセンティックバー「THE BAR NAGATO」さんへ。
なんと美しい空間。オリジナルカクテルをいただきながら、ちょうど、「THE BAR NAGATO」が入る長屋のリノベーションを手がけた木村大吾さんともお話しさせていただきました。
下関で一級建築士事務所を持つ「金剛住機株式会社」の敏腕支店長の木村大吾さんが2019年に築70年の長屋の二階建ての木造物件を購入し、リノベーションし、2021年に賃貸テナントとしてオープンする。1階は山口県のソールフード「瓦そば」を味わえるお店が入る。
ステキすぎるほど朽ち果て寸前の物件を、当時の面影を残しつつ、ここまで素敵な賃貸テナントに仕上げた木村さん。恐るべし。
こうして、手がけた方にお会いできるのも狂犬ツアーだからこそ?!

築70年の長屋を改装して誕生した「だいご長屋」。昼間は、「cafe and shop Tre」として別のオーナーが営業を行っている。
店内も素敵な雰囲気。
音信(おとずれ)川を間近に望むロケーションも素敵ですが、この長屋の夜の映え一目をおく。
店主はバーテンダー歴約30年の黒田さん。温泉街のイベントに参加したことがキッカケになって長門湯本に魅了され地元の人からも「温泉街にバーを」という声を受けて2021年に「THE BAR NAGATO」をオープン。
オーダーすれば希少なオールドボトルのウイスキーや山口県産の季節の果物を使ったフルーツカクテルもいただけるそう。


3.語りや体験がこれからは価値になる。

今回の狂犬ツアーの2日目は、夕方まではフリープランでいくつかのオプションプランが計画されていました。
そのうち、
「恩湯の歴史を深掘りするプレミアツアー」

「深川萩焼窯元ツアー」
にも参加させていただきました。

大谷山荘の大谷社長自ら「恩湯」の歴史について1時間にもわたる講義をしてくださいました。
かつて安倍晋三氏がロシア大統領を迎えて場所としても使われたお部屋だそう。
重厚感あるプレミアムルームで聴ける特別感。

恩湯プレミアツアーでは、大谷山荘の大谷社長自ら、『恩湯』を再生する際に、改めて【恩湯と大寧寺を取り巻く歴史】について紐解いたお話を聞かせていただき、
□なぜ『恩湯』が36~38度の「ぬる湯」なのか
□なぜ浴槽の広さは男女それぞれ8㎡という狭い湯坪なのか
□なぜ浴槽が深くなっているのか
□禊ぎの湯として、「汚れを洗い落とす場」洗い場と「清めの場」浴槽がなぜ離れているのか

についても話しを聞かせていただきました。

歴史を遡ること、室町時代、西の京と言われるほど山口に大内文化を育てた中世の名族・大内氏。
1410年大寧寺を開創したのが大内家の重臣・鷲頭氏でした。
なぜ、名族の大内家が大寧寺を開創したのか。
大内家とってのメリットとして、
①高僧は最高の地を習得した宗教者
②国境を越えた高僧間のネットワーク
③航海ルートが貿易ルートに。
④地域のコンサルタント

山口県は唐(朝鮮半島)にも近い立地でもあり、日本と諸外国との要所にもなっていた関門海峡から瀬戸内海を通り、遣唐使船にも祀られる国家的な航海守護の神様が祀られている大阪、住吉大社へと繋がる住吉ラインがあった。
(「三大住吉」として、山口県下関市の住吉神社、福岡県福岡市の住吉神社ともに大阪住吉大社がある)。
また大寧寺は曹洞宗であり、曹洞宗は日本海側に多く、神社仏閣のネットワークを巧みに生かし、山口県の大内文化をつくり、貿易で多額の富を生み出した。

さらに、日本各地の温泉地には、その温泉地の起源を語る逸話があるように、長門湯本温泉にも同様で、住吉大明神様が登場する壮大な話が大寧寺由緒書(毛利家文書)に記録が残る。
そして、大寧寺の奥には、住吉大明神の神像が祀られています。

大寧寺の「開山堂」に、開祖の石屋真梁禅師をはじめとする禅師の像と並んで住吉大明神が鎮座している。(写真の一番右側)。神像は、なんと袈裟姿。髭を蓄えた老人の風貌。
江戸初期から中期の製作。
大寧寺の本堂で大谷山荘の大谷社長と記念写真。
地元の方に直接案内してもらう体験はスペシャルな時間でした。

さらに、午後からは深川萩焼の窯元ツアーへ。

萩焼と聞くと、萩市の萩焼きを想像していましたが、実は、「萩焼深川窯」は、1657年 萩藩の御用窯として長門湯本温泉の長門市三ノ瀬(そうのせ)地区にて開窯。
現在五つの窯元が、360年に渡る陶工集落の歴史と窯の火をつないでいる。
今回の窯元ツアーは、萩焼き体験と、窯元が集まる、三ノ瀬地区を巡るツアー。

集合は「cafe&pottery音」さん。
深川萩焼の作家さんの器でコーヒーがいただけます。
「cafe & pottery音」さんでは、深川萩焼の窯元作家さんの作品を購入できます。


お天気も良くて、移動は電動自転車で。まずは萩焼体験ができる「萩焼工房・盤石窯」さんへ。
ろくろで自分の好きな器を作製。
初めは怖々でしたが、師匠さんが上手くフォローしてくれるので、皆一回で作品ができました!
ろくろ体験をした後、三ノ瀬地区へ移動。今も残る窯元の1つ、「田原陶兵衛窯」さんの窯元にお邪魔しました。
深川萩焼の特徴でもあるのぼり窯。窯元の中も見させていただきました。

深川萩焼は、江戸時代までは、萩藩の御用窯として作られてきました。(三ノ瀬地区には合同で使われていた巨大なのぼり窯の跡が今も残っています)
明治時代に廃藩置県により、窯元も解雇され、個々の窯元で独自の萩焼を確立していった。
特に深川萩焼は、茶器としても、茶道の世界では、古くから茶人の抹茶茶碗の好みの産地として「一楽二萩三唐津(いちらく にはぎ さんからつ)」と言われてきました。
1位: 楽焼 (京都)
2位: 萩焼 (山口県萩市)
3位: 唐津焼 (佐賀県唐津市)
を意味し、萩焼は茶道の世界では、今でも評価が高い。
窯元作家のお家の立派さにびっくり。
聞けば、京都からおかかえの庭師さんがいるのだとか。しかも、窯元の次世代を背負う当主の学歴にもびっくりする。
作品を作る窯元なので、なかなか案内されなければ訪れられない場所。
窯元ツアーもとても充実した内容でした。

https://fukawahagi.jp/

600年前から温泉とともに地元の人が生活文化を創造してきた、その「歴史」に着目し、紐解いていくと「歴史」が付加価値となっていく。
まさに今の『観光』は【消費から共感へ】と大きな転換期を迎えています。


4.家族で移住し、クラフトビール工房をつくり、憩いの場に。


「365+1BEER(サンロクロクビール)」さんを運営している有賀さんは、元々、大阪にあるまちづくり会社のスタッフとして、長門湯本温泉のまちづくりに関わる。関わるうちに、長門湯本温泉に魅力を感じ、家族で長門湯本へ移住。
2020年にハートビートブリューイング株式会社を創業し、2021年に長門湯本温泉街でビール製造を行うクラフトビール醸造所「365+1BEER(サンロクロクビール)」をご夫婦でオープン。できたてのビールを味わうことができるタップルームは金・土曜を中心にオープンしている。

365+1BEER / サンロクロクビール /さん。元々薬局だった場所をリノベーションして、2021年にクラフトビールを製造・タップルームを開業。
サンロクビールさんの斜向かいの空き店舗には、この日初出店となるビーフン屋さんが。
現在、老舗旅館を開発・リニューアル工事中の宿泊施設を伴う複合施設「SOIL Nagatoyumoto」のスタッフさんが地域活性化に一石を投じた店舗。
こうして、宿泊施設のデペロッパーがまちづくりに積極的に参加する風土が確立しつつある。
サンロクビールとビーフン。
サンロクビールでは11月まで「うつわの秋」として、深川萩焼の作家さんのビアグラスでビールがいただけます。萩焼でいただくビールは一足変わります。
サンロクロクビールさんから大谷山荘へ戻る夕方の音信川にライトアップされて、美しい。
2025年1月31日からは長門湯本温泉があかりに包まれる「うたあかり2025」も開催予定。ぜひ冬の長門湯本も訪れたい。

5.2日目のスペシャルゲスト

2日目、長門湯本を存分に楽しみ大谷山荘での夕食・懇親会。
なんとスペシャルゲストに、「おにぎり神谷」のにぎりびと・神谷禎恵さんが目の前で、おにぎりを握ってくれるサプライズ!
しかも、入手困難な「ゆずこしょう」の実演と作りたてをおにぎりに乗せていただくという、なんとも贅沢な時間✨
神谷さんは、普段は佐賀県嬉野市にある株式会社和多屋別荘で、茶師・永尾裕也 の「うれしの茶」と、にぎりびと・神谷よしえ「おにぎり」とをペアリングし、シンプルなおにぎりとお茶でお腹も⼼も満たし、訪れる人々の心を掴んでいるすごい人。改めて、エンターテイメントの重要性を感じた夕食でした。

目の前で土鍋から炊きたてのご飯を握ってくれます。
手から手にわたったおにぎりは、ほろほろしていて頬張るとホワッと温かさとお米の甘みが広がります。
まさか、ここで神谷さんの「ゆずこしょう」をいただけて幸せ♡
今回は長門特産の「ゆずきち」と百姓庵さんの「天日塩」めちゃくちゃ美味しい♡
ゆずこしょうを実演。子どももスリスリ。ゆずの香りが広がります


6.さいごに

今回、長門湯本の狂犬ツアーに参加させていただき、感じたことは、
地元の若手の経営者の団結と、主体的にスピード感を持って、まちづくりを進める【覚悟】を決めることだと思いました。

今回、長門湯本に来て長門湯本まちづくり会社の木村さんや大谷山荘の大谷さん他皆さんとても仲良しなのが伝わってきて、羨ましいなぁと、思ったのと同時に、みなさん40代前後の同世代で、自らも出資し、「恩湯(おんとう)」を民設民営している話を聞いて、私も何かやらなくてはという思いが強くなりました。

大谷山荘の大谷さん達も、「何かやらなくては」と思った時に一番初めにやったのが、「cafe&pottery音」を皆で出資して作ったことでした。

そこから温泉地で、人が歩いて回遊できるかを実証するために、川床を作りイベントをやったり、道幅を狭めて片側通行にしたり、何度も何度もトライアンドエラーを行ない修正をしていき、河川活用の許可を認めてもらったり、道に椅子や植木を置くことに許可してもらうことに同意を得て行く地道な取り組みを土台にして、民間と行政が同じベクトルで長門湯本のエリアマネージメントが成り立ち、まちの全体が評価されていることがわかった。

きっとどの地域にも、そうして動けるプレイヤーはいるはず。
私もその1人になりたいと思いました。

最後に、今回2日目の夕食にスペシャルディナーで、「おにぎり神谷」の神谷 禎恵さんが来てくれて、おにぎりを握ってくれました。しかも、山口県特産の「ゆずきち」や地元のお塩を使ったおにぎりは、本当に絶品でした。

こうして、エンターテイメント性を持った食事を演出することの重要性を改めて今回学ぶことができました!

そして、また神谷さんに会えて嬉しかった☺️

今回も素敵な出会いがたくさんあった長門湯本の狂犬ツアーでした!
出会いに感謝します🙏


そして、最終日は仙崎湾の道の駅「センザキッチン」へ足を運んでみました。「センザキッチン」には土曜日ということもあり、多くの家族連れが来ていました。また、「長門おもちゃ美術館」もあったので、次は子ども達を連れて来たくなりました♪

道の駅センザキッチンからの日本海
道の駅内に併設する長門おもちゃミュージアム



今回、2泊3日でも回りきれなかった〜
ぜひ、長門湯本は最低2泊以上の連泊がおすすめです!ぜひ、長門湯本はオススメです!また来たい!

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