続・奥会津を想う
廃校の校舎のお宿は、各教室に10台ほどのベッドを置いた小ざっぱりした部屋で、入口に[1年2組]と当時のままの表札が掛かっているのが楽しい。
ある年、親しくお話するようになった4人の女性グループと、翌年もまた同室になった。
各地から来ておられるので、どういうお仲間かと問うと、かつて福島県浜通りの病院で同僚だった看護師さん達で、震災後各地に避難した後、年に1回、旧交を温めるために、このまつりで集まるのだと言う。
8度目の引越しで埼玉に落ち着いたという方が、元婦長さんらしい貫禄で、一行をおおらかにまとめておられたのが微笑ましかった。
快活で笑いの絶えない皆さんが、これまでどれだけの苦難を味わってこられたことか想像もできない。是非また再会したい人達である。
のんびり初夏の風景の中を帰るのも楽しい。
道すがら、蕨を分けて頂こうと立ち寄った南会津町の農家の庭先に、山野草の鉢が沢山並んでいた。その中にあった、薄いピンクの清楚な百合。 ああ、これが…
いつか群生地に見に行きたいと思っていたヒメサユリを初めて見た。ぷっくりした蕾がいくつか付いたひと鉢を求めてきた。
ヒメサユリは、会津地方や新潟県南部のごく限られた群生地でしか見られない、私にとっては憧れの、幻の百合だった。生育には特別の自然環境が必要で、東京からだと、群生地はどこも遠く、周到に計画しないと訪れるのは難しい。
数年前、群生地のひとつ、高清水自然公園への新宿発日帰りバスツアーを見つけ、即申し込む。片道4時間を超える行程で、散策は二時間足らずだったけれど、大満足だった。
農家で求めたヒメサユリは翌々年まで咲いてくれたが、やはり条件の揃った環境が必要のようだ。
イベントの時季は花期には少し早く、クラブツーリズムの企画もその年だけだったので、以後見る機会は無い。
再び、遠くに想いを馳せるだけの花になった。