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全国学校・園庭ビオトープコンクール2023報告書から(前半)

 夏休みの最後の土日に、日本環境教育学会千葉大会で発表したと前回報告しました。大会で旧知の日本生態系協会の方から、全国学校・園庭ビオトープコンクール2023報告書をいただきました。今回は、その中から上位5賞を受賞した学校・園の活動を紹介します。それぞれビオトープを通して素晴らしい教育活動が展開されています。まとめたところ、活動内容が濃いこともあり、文章が長くなってしまいましたので、二つに分けました。今回は前半になります。

上位5賞は?

 2023年は、中学校1校、小学校2校、幼稚園2園が上位5賞を受賞しています。それぞれの賞の位置づけに優劣はありません。

文部科学大臣賞(特に体験活動や学習活動の内容・成果で秀でている)
・・・福島大学附属中学校

環境大臣賞(特に野生の生き物のすむ「ビオトープ」の質で秀でている)・・・社会福祉法人 堺ひかり会 登美丘西こども園(大阪府)

国土交通大臣賞(特に人と自然が共存するまちづくりにつながる点で秀でている)・・・千葉市立稲毛第二小学校

ドイツ大使館賞(特にユニークな学習・体験活動を行っている)・・・学校法人東京内野学園東京ゆりかご幼稚園(八王子)

日本生態系協会会長賞(特に地域とのパートナーシップの観点で秀でている)・・・大阪市立瓜破西小学校

文部科学大臣賞・・・福島大学附属中学校 


 福島大学附属中学校は、体験活動や学習活動の内容・成果で秀でている点での受賞です。
 中等学校では唯一で、生徒が主体的に動いていることが際立ちます。「学校ビオトープが各学年の理科や様々な教科の教材になり得る」と考えた1年生の生徒が、理科の授業で提案したことがきっかけになったそうです。小学校の頃、コロナの影響で行事も少なく学年間の交流も不足しているので、中庭にビオトープをつくれば、授業だけでなく学年間の交流も生まれるのではと考えました。
 全生徒から募集する校内コンテストを提案し、職員会議にプレゼンテーションして教職員の承認を得、コンテストが実施されました。100人を超える応募があり、その中から、池を福島県の形にするなど最優秀賞と優秀賞の内容を踏まえて、生徒自ら学校に中庭にビオトープを作りました。

 生徒有志がさらに動く

 さらに「ビオトープ管理委員会」という学校ビオトープをよくする組織づくりを生徒会に提案し、了承を得ました。専門家の協力が大切であるとわかると、教員を介して、福島大学の生物の研究者との連携体制をつくっていきます。
 活動は学校外にも及び、福島県内の小中学校を対象に「ふくしまビオトープ子どもサミット」をオンラインで開催していました。その結果、ほかの学校で中庭にビオトープをつくる「ビオトープ・プロジェクト」が立ちあがっています。

 ビオトープをつくり、活用していく動きには、生徒たちの声を受け入れ反映させる理科の先生をはじめとした教職員の支えがあるのでしょう。新しい学習活動にチャレンジしようとする国立大学の附属中学校の学校文化が影響しているではと感じました。


環境大臣賞・・・社会福祉法人堺ひかり会 登美丘西こども園(大阪府)

 登美丘西こども園は、特にビオトープの質で秀でている点での受賞です。 
 園児にはグランドよりビオトープが必要という考えで、2016年より園庭の半分をビオトープにしました。大阪府のベットタウンの地域にあり、周りにはまとまった自然が見られません。設置基準を満たす程度の広さの園庭しかないものの、ビオトープができたことで日常的に動植物に触れ、体験ができる環境になりました。 
 専門家の協力を得て、園児や保護者、地域の方々、のべ200人の力で池を掘り、ビオトープづくりを始めたそうです。園児たちが散歩に出かけ、地域の在来種を見つけ、その植物を植えたり、種子をまいたりしました。徐々に草が生え、バッタ、イトトンボが生息し始めました。さらに田んぼを作って稲作も体験しています。
 教育・保育課程に環境教育の欄を特別に追加し、年間計画を立てて実施するようにしています。保育者が研究会「グリーンラボ」を立ち上げ、全員がビオトープに関わる体制をつくり、環境教育や管理維持を行っています。
 この積極的な取り組みの背景には、2010年からの「子供と自然・命のつながりを知る」というテーマの環境教育の実践研究があります。園児が「ごみは放置されていると自然が壊れる」と自分の言葉で話すようになるなど、実践を通して、園児たちの姿が大きく変わったことに担任が気づきました。園児たちの変容が先生方の活動の原動力になっているようで、保護者が協力的なのもこのような成果があるからでしょう。
 目の前にある園庭にビオトープができたことで、バッタを捕まえるのがうまくなって、捕まえ方を年下の園児に教えたり、日々の生き生きとした活動が展開されています。

次回は、
国土交通大臣賞・・・千葉市立稲毛第二小学校
ドイツ大使館賞・・・ 学校法人東京内野学園東京ゆりかご幼稚園(八王子市)
日本生態系協会会長賞・・・大阪府立瓜破西小学校

の活動の紹介になります。









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