川北 裕之

リタイア間近の高校生物教師。高校の中庭をビオトープしたことから、身近な自然の復元や生物多様性の向上に努めてきた。書籍や雑誌などに報告してきたが、今その機会も少なくなったので、この場を借りて、実践やビオトープ・生物教育や趣味の昆虫写真、クラシック音楽について気楽に書いていく。

川北 裕之

リタイア間近の高校生物教師。高校の中庭をビオトープしたことから、身近な自然の復元や生物多様性の向上に努めてきた。書籍や雑誌などに報告してきたが、今その機会も少なくなったので、この場を借りて、実践やビオトープ・生物教育や趣味の昆虫写真、クラシック音楽について気楽に書いていく。

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noteをはじめるきっかけ ~ 学校ビオトープの復活を

学校にビオトープをつくる  高校で生物を教えています。気がつけば40年くらいになっていました。教師として一通りの仕事は行ってきたつもりですが、その中で一番力を入れてきたのが、ビオトープに関することです。  自然は守るもの、保護するものと考えてきた私にとって、自然を復元する、創造するビオトープは、逆転の発想、全く新しい思いもつかなかったものでした。  異動した高校で中庭を改修する話が持ち上がり、先生方と協力して、中庭全面をビオトープにすることができました。池を掘り、地下水を組

    • ササキリ~数は多いが目立たないキリギリスの仲間

       10月下旬にもなると、草むらで見つかる昆虫も少なくなります。あれだけいたコバネイナゴも少なくなって、成虫で越冬するクビキリギスが目立つようになります。  そんな中、草むらに入ると、小型でよく跳ぶ昆虫がいます。小さいので子どもたちでは採るのがむずかしい昆虫です。ササキリの仲間であることが多いです。ササキリの仲間(Conocephalus属)は、ササキリ、ホシササキリ、オナガササキリ、ウスイロササキリなどがいます。「ササ」は笹、「キリ」はキリギリスの意味です。触角が長く、左右に

      • お城をめぐり、グルメを満喫~「青春18きっぷ」で行く 冬の東海道の旅 

         リーズナブルに自由な旅ができる「青春18きっぷ」にはずいぶんお世話になりました。「青春18きっぷ」がこの冬から大きく変わると報道がありました。今までのような旅がしづらくなるのではと心配になります。自分の記録の意味を含め楽しかった旅を紹介します。  「青春18きっぷ」は、全国でJR線の普通・快速列車が2410円で1日乗り放題。年齢に関係なしでグループで共有できました。  このところ、冬休みの期間を利用して青春18切符を使って旅行を楽しんでいます。今回紹介する旅は、年末の1泊2

        • 生物多様性シンポジウムの講師を務めました

           2024年10月13日(日)、千葉県流山市が行っている生物多様性シンポジウムの講師を務めました。  流山市で活動している「NPOさとやま」が市から委託を受け、そこから私に話がありました。昆虫を中心に生物多様性の大切さについて話してくれないかということです。  以前にも、親子向けに同じ会場(おおかたの森センター)でお話をしたことがあります。今回は親子連れは少なく、大人、特に男性が多いようでした。  この日のシンポジウムは、私の話が40~50分、「NPOさとやま」の斉藤さんが現

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          チュウゴクアミガサハゴロモ(中国編み笠羽衣) 松戸でみつかる

          アミガサハゴロモとの区別は  ハゴロモは、カメムシ目ハゴロモ科、アオバハゴロモ科に属する昆虫のグループです。アオバハゴロモ、ベッコウハゴロモ、スケバハゴロモ アミガサハゴロモなどがよく見られます。翅が大きく閉じた様子から、一見、ガの仲間のように見えますが、カメムシ目に属し、ストロー状の口で植物の汁を吸います。  チュウゴクアミガサハゴロモには、今年になって初めて出会いました。アミガサハゴロモと似てはいますが、感じがずいぶん違います。その違いを、千葉県生物多様性センターの「生

          チュウゴクアミガサハゴロモ(中国編み笠羽衣) 松戸でみつかる

          マメハンミョウという少し不思議な虫

          目立つ体色と形態   マメハンミョウという虫を知っていますか?写真のように、頭部が赤く、胸から上翅まで、縦に白い線が走っています。目立つ体色をしています。  夏のバッタ調査中に採集ました。参加した子供たちが見つけて、「この虫はいったい何?」ということになりました。  体の色が目立つ場合、クジャクのようにオスがメスに対してアピールする目的もあるでしょう。マメハンミョウでは、オスメスで体色の違いはないので、むしろ警告色でしょう。危険であるとアピールしているスズメバチ類と同じです

          マメハンミョウという少し不思議な虫

          全国学校・園庭ビオトープコンクール2023報告書から(後半)

           全国学校・園庭ビオトープコンクール2023の上位5賞のうち、文部科学大臣賞(福島大学附属中学校)と、環境大臣賞(堺ひかり会登美丘こども園)の紹介を前回しました。今回はその後半になります。各賞に優劣はなく、今回も、素晴らしい活動です。 国土交通大臣賞・・・千葉市立稲毛第二小学校  千葉市立稲毛第二小学校は、特に人と自然が共存するまちづくりとのつながりが秀でている点での受賞です。  学校は海を埋め立てた住宅街に位置し、校庭の一部にあたる1000㎡の面積が、池、小川、草地、森

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          全国学校・園庭ビオトープコンクール2023報告書から(前半)

           夏休みの最後の土日に、日本環境教育学会千葉大会で発表したと前回報告しました。大会で旧知の日本生態系協会の方から、全国学校・園庭ビオトープコンクール2023報告書をいただきました。今回は、その中から上位5賞を受賞した学校・園の活動を紹介します。それぞれビオトープを通して素晴らしい教育活動が展開されています。まとめたところ、活動内容が濃いこともあり、文章が長くなってしまいましたので、二つに分けました。今回は前半になります。 上位5賞は?  2023年は、中学校1校、小学校2

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          「流山おおたかの森」がオオタカの住む森として残ったのは、地域の市民の活動があったから

          日本環境教育学会で森を守った市民活動を発表したい  2024年8月31日(土)9日1日(日)、流山市にある江戸川大学で行われた日本環境教育学会千葉大会に参加しました。当学会には20年以上所属していて、今までに環境教育の実践やビオトープに関する発表などをしてきました。このところ、東京農工大学、東京学芸大学、立教大学、学習院大学などで1年おきに東京で開催されていましたが、今年は流山で開催。千葉県では初めてかもしれません。  会場の江戸川大学はつくばエクスプレス「流山おおたかの森

          「流山おおたかの森」がオオタカの住む森として残ったのは、地域の市民の活動があったから

          五箇公一著『クワガタムシが語る生物多様性』~虫の本と思って読んでみたら、むずかしい生物多様性をわかりやすく解説した本だった!

          『サイレント・アース~昆虫たちの「沈黙の春」』から『クワガタムシが語る生物多様性』に読み進む  先日、『サイレント・アース~昆虫たちの「沈黙の春」』から学んだこと、特に環境行動についてnoteにまとめました。本の最後の所で、五箇公一氏が「グルーソン博士との思い出」という題で解説を書いています。五箇氏は国立環境研究所(つくば市)の研究者です。サングラスに皮ジャンという独特の服装で、テレビ、雑誌などで、外来種や生物多様性の解説者として登場することも多いのでご存じの方も多いでしょ

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          みんなで行動する~『サイレント・アース 昆虫たちの「沈黙の春」』から

          『サイレント・アース 昆虫たちの「沈黙の春』については、「ナメクジは何のためにいるの?」で、引用しました。10月に子供たちの前で、生物の多様性についての話をすることもあって、もう一度読み直していました。時間はかかりましたが読み終えたところです。416ページという厚さだけでなく内容も厚い(濃い)本です。  この本では、世界的に昆虫が急激に減少していることをさまざまなデータで示し、原因に言及しています。そのうえで、昆虫が減少すると、「生命のつながり」が崩壊し、食料供給に大きな影

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          温暖化のリアル~2024年度日本生物教育会第78回東京大会報告

          今までで一番暑い夏 全国生物教師の大会で温暖化を考えた   8月6日、7日の2日間、日本生物教育会第78回東京大会に参加してきました。今までで一番暑い夏でしょうね。この暑い夏に、大会の中でぜひとも聞いてもらいたい講演があったので、その内容を報告します。  日本生物教育会は、生物の先生の全国規模の研究会です。中心は高校の教師です。今年は探究に関することが研究主題でした。会場は高田馬場にある東京富士大学です。大会は、研究発表、(中高生も含めた)ポスター発表、研究協議、シンポジウ

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          東京23区内にある2つの自然公園とオリンピック~炎天下一人歩いて考えた

           7月26日、午前中の用を済ませて、午後から東京北区の王子から「東京さくらトラム」を乗り継いで、2つの自然公園に行きました。いつか行きたいと思っていた所なのでやっと実現した感じです。この日の最高気温は35℃。こんな暑い日でなくてもと思いしましたが、チャンスを逃すと、いつになるかわからないので、昆虫が多い今の時期に行くことにしました。 東京さくらトラムに乗って尾久の原公園へ  「東京さくらトラム」より私には都電の言い方の方になじみがあります。都電は高校の頃通学で使っていまし

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          私の旅行記 北海道・白老・ウポポイでアイヌ民族の歴史と文化にふれる夏 

           昨年(2023年)8月上旬、白老町にあるウポポイに行ってきました。  ウポポイ(民族共生象徴空間)は、2020年にできたアイヌ民族の歴史と文化に触れることができる施設です。北海道に行くのならぜひ訪れたいと思っていました。ウポポイは、国立アイヌ民族博物館が中心ですが、その周辺に関連施設がいくつもあり、立地している場所の自然も含めて、全体がまさに民族共生象徴空間になっています。  ウポポイは、2007年国連「先住民族の権利に関する国連提言」を受けて、国が「アイヌ政策のあり方有識

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          ナメクジは何のためにいるの?

          今度はある本でナメクジを見つけた  以前、noteにナメクジについて書きました。特別にナメクジに興味があったわけではなく、写真を撮りに行った日に、目立った昆虫が見つからず、偶然、立派なナメクジがいたので、少し調べてみました。普段よく見るナメクジはだいたいナメクジという種で、多く種がいるカタツムリと多様性の面で対照的なことはわかりました。  今度はある本を読んでいたら、偶然ナメクジに関する記述を見つけました。ナメクジを通して、大きな学びがあったのでまとめてみました。 「生物

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          私の旅行記:暑くても動物が生き生き 夏の旭山動物園

           いよいよ夏休み。みなさんはどこに行きますか。まだ決まっていない人もいると思います。昨年、8月上旬に北海道にある旭川市旭山動物園に行きました。大変良かったので簡単に報告します。  旭山動物園では暑い夏でも動物が生き生きしています。遠くまで行く価値はありました。全国から多くの人が訪れるはずです。 札幌から旭川へは特急ライラックを使って90分  旭山動物園には。昨年8月上旬、札幌のホテルに宿泊して、札幌→旭川→札幌という1日の行程で行きました。旭川では旭山動物園のみにしてじっ

          私の旅行記:暑くても動物が生き生き 夏の旭山動物園