高校の中庭をビオトープにする その2 工事が始まる
「高校の中庭をビオトープにする」のつづきです。
ビオトープにする案をまとめ、県に提出したところまで前回に書きました。
ビオトープを具体化する
もともと創立30周年記念事業の一環で中庭を改修することは決まっていました。中庭のビオトープ化は県に認められるでしょうか。というのも1994年当時、「ビオトープ」は世間では知られていない言葉でした。案を提出する際、意義を丁寧に説明し、案では自然環境復元園(ビオトープ)という表現をしていました。
具体化した際のポイントは次の4点です
1 水源を井戸水にする
2 多様な水域環境にする
3 林、草地、畑などゾーニングして、多様な環境をつくる
4 通路を広めにとり、生徒たちの行き来にも配慮し、観察しやすくする
学校はもともと水田地帯にあり地下水位が高いので、井戸を掘り、井戸水を流すにようにしました。くみ上げた井戸水を、流れのある環境(川・水路)やあまりない環境(池)に流します。
池の形も丸や四角のような幾何学的な形ではなく、ひょうたん型とし、水際を曲線で長くしました。これは水際はエコトーンとして生物多様性が高いところなためです。水際のところどころに石積みをしたり、植生ロールを置くことにしました。植生ロールはヤシの皮でつくったもので、水生植物などが着生しやすくなります。
石積みとともに生物が生育しやすい多孔質空間の創出を狙ったものです。
池の傾斜も緩やかにしました。水際を踏みつけることがなく、生物を観察できるように池の中央部に橋を渡し、1m程度の木製のデッキを設置することにしました。
池には水が抜けるように排水栓を設けました。池の底には荒木田土を敷き、深さも危険がないように一番深いところでも40センチにしました。
陸の部分には、ミニ雑木林、草地、畑とゾーニング(区分け)をしました。それぞれに良質な畑土を盛り、小動物の隠れ家となる石積みをしました。
クヌギやコナラ、エゴノキ、ハンノキなどを植えることにしました。柑橘類などチョウ類の餌となる樹木やカキノキを植え、アベリア、ブットレアなどチョウなどの昆虫が蜜が吸える樹木も植えるようにしました。
ビオトープにするにしても、本来、中庭なので、人が通れるように以前より通路の部分を広くとりました。生物、地学、化学実験室が1階にあり中庭に面しているので、今後は上履きでも出られるようにしたいと考えました。
ビオトープに関することは主に山田純稔先生と私で考えましたが、中庭全体は、校内整備協議会のまとめ役でもあった地学の三谷豊先生がプロ並みの設計図に仕上げました。
1年たっていよいよ工事が始まる
計画設計の提出から1年、1995年ほぼ設計計画が認めれらました。ビオトープという今まで例の少ない斬新なアイデアがよく認められたと思いました。
工事は年明け、1996年1月から始まり、年度末に終わりました。まず井戸の工事、そして池を掘ります。ビオトープの工事の中心は池などの水域です。その後、畑の土などを入れ、通路の工事、樹木の植栽と続きます。
次は、1996年4月から1年間の変化です。生物の定着の様子になります。